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メンズコスメレビュー100本ノック その32:メンズコスメブランドの父の日キャンペーンまとめ2024

 

 

 

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。

 

当ブログでは、「ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック」と題して、男性ホルモン治療を選択しつつ女性の境遇で暮らすジェンダークィアの美容好きの目線から、さまざまなメンズコスメをレビューしてきた。

前回と第1回はこちら。続き物ではないので1から読む必要はありません(読んでくれたら嬉しいけど!)。以前の内容を踏まえるときはリンクを貼ります。

 

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第32回となる今回は番外編として、2024年度の父の日に向けてメンズコスメブランド各社が行ったプロモーションを観察しました。近年急速に拡大しているメンズコスメ市場の、2024年時点での記録として、まとめていきます。

 

 

 

 

メンズコスメとプレゼント需要

 

大前提としてメンズコスメは男性向けの商品であるはずだが、メンズコスメブランドの公式サイトやインスタグラムを見ていくと、そこには高確率で女性向けの謳い文句がある。「彼氏や旦那さんにおすすめ」「大切な方への贈り物にも」「バレンタインのプレゼントにぴったりのギフトセットをご用意」などがそれで、男性へのプレゼントを探している女性へもアピールしようとしているのだ。ギフトにちょうどいいセット商品があることや、ラッピングやメッセージカードをつけるサービスがあることをアピールするブランドも非常に多い。

もちろん、従来的なレディースコスメ(レトロニムである)ブランドにも、女性向けのプレゼントの定番として名前が挙がるような有名商品は多数存在する。例えばDiorのリップマキシマイザー、ウカのネイルオイル、CHANELのハンドクリームなどだ。ググって出てきたキュレーションサイトに言われるがままに、女性へのプレゼントとしてそれらを買い求める男性も一定数いるはずだが、商品ページにわざわざ彼らに向けた惹句が記載されることはまずない。「プレゼントにもおすすめです」のような簡潔な一節はあっても、贈る者や贈られる者のジェンダーに具体的に言及されることは通常ない。しかしメンズコスメブランドの商品の場合、「彼氏や旦那さんにおすすめ」など、明確に(シスジェンダー・ヘテロセクシュアルの)女性を想定した惹句がつくことも珍しくないのだ。メンズコスメレビュー100本ノックその22で取り上げたメンズコスメのホリデーコフレのプロモーションでも、本来は男性向け商品のはずなのに商品説明が女性のほうを向いている現象がみられた。

 

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このような事態が発生する理由はいくつか考えられるが、根本的には、メンズ美容市場がレディース美容市場と比べるとまだまだ小さく、女性の財布もあてにせざるを得ない苦しい台所事情が影響しているのではないか。老舗美容雑誌VOCE(ヴォーチェ)が選出する美容流行語大賞にて、「メンズ美容」が1位に輝いたのは2019年のことである。以来5年、日本のメンズ美容市場は右肩上がりに成長を続けているが、女性ジェンダーへの社会的抑圧とも結託して数十年数百年レベルの歴史があるレディース美容市場の規模感とは比べ物にならないはずだ。女性の消費に助けられているブランドは多いと思われ、よって男性向けを標榜するブランドの男性向け商品に女性向けの商品説明がつく事態が多発するのではないだろうか。

なお、メンズコスメのプレゼントは男性から男性への贈り物としてもあり得る。しかし多くの場合女性の贈り主が強く想定されているのは、現状美容に詳しい人が多いのは女性ジェンダーのほうであり、「得意分野」からプレゼントをみつくろうとなるとやはり女性から男性に贈られるケースが多いと想定されているからだろう。

 

男性が美容に関心を払うようになるきっかけとして、(女性)パートナーを含む周囲の人の指摘やアドバイスがあることはデータにも表れている。

リクルートの2023年の調査によると、男性が美容を行うきっかけのトップ3は「身近にやっている人が増えたから」「友達・恋人・パートナーに勧められて」「親や家族に勧められて」である。

 

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こちらも2023年の調査で、恋愛や結婚がきっかけとなる男性が多いことが示唆されている。

 

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恋愛に興味が出てきたから美容(容姿)を気にしはじめるのはジェンダー問わずありがちな現象だろうが、男性の場合、恋愛・結婚が成就したあとになって美容を気にしはじめるルートが生じるのが面白いところではある。男性本人が望んでいるかは置いておいて、求められてあるいは勝手にアドバイスを寄越す女性パートナーの存在は大きいようだ。

 

ちなみに女性ジェンダーの場合、「恋愛・結婚をしたあとに綺麗になった」といった事態で想定されがちなのは、「女性は恋をすると綺麗になる(?)」「女性ホルモンが出てお肌がツヤツヤになる(!?)」といった根拠薄弱なステレオタイプの物語であり、パートナーから具体的な美容アドバイスが降ってきたとは想定されない。また、恋愛・結婚をしたあとも美容にリソースを割いている(と判断される)と、「多情である」「浮ついている」「(子どもを設けた場合)まだ『女』であろうとしている」などと逆に非難されることもあり得るだろう。

 

 

 

メンズコスメブランドの父の日向け広告2024

それでは、2024年度の父の日(6月16日)に向けたメンズコスメブランド各社の動きをまとめていく。インスタグラムとX(Twitter)をソースとしてできるだけ集めたが、抜け漏れはあることと思う。

 

1.カーキ

既存のギフトセットを父の日向けとしてフィード投稿でプロモーションしている。ギフトセットはなんと10種類もある。

 

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▶カーキとは

カーキ(KHAKI)は日本発の30~40代男性向けスキンケアブランドである。公式によると「アウトドア派のスキンケア」で、アウトドアスポーツにおける日焼けをケアする成分を配合した高機能なスキンケアコスメを売りにしている。アウトドアスポーツの写真を募集するキャンペーンやスポーツウェアブランドとのコラボなど、徹底してスポーツマン向けをアピールし、スポーツの「男らしい」イメージでもって美容の女性向けのイメージをカバーする戦略を取っていると思われる。

ブランドについて詳しくはメンズコスメレビュー100本ノックその15を参照。

 

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2.ロジック

フィード広告とストーリー広告でスキンケアギフトをプロモーションしている。

 

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中でも、「父をアップデートする」というユニークな惹句が興味深い。父親ってソフトウェアだったんですね。であれば「父2.0」「お使いの父は最新です」「お使いの父はサポートが終了しています」などの事態も考えられるのかもしれない。

ロジックは、2023年6月にはソーシャルギフトサービスGIFTFULにも参入しており、ギフト需要は強く意識されているようだ。

 

▶ロジックとは

ロジック(LOGIC)は2020年日本発のメンズスキンケアブランド。公式には「”ワークツール”としてのスキンケア」「忙しく働くひとのために、ミニマルなケアを通じて仕事のパフォーマンスアップを提供するスキンケアブランド」「忙しく働く人のパフォーマンス向上に繋がる『体験』や『習慣』を提供」などとあり、明確にホワイトカラーのオフィスワーカーをターゲットとし、スキンケアによる仕事上の現世利益を強調している。レディース美容の世界ではスキンケアはリラックスのためのオフタイムとされることが多いが、メンズ美容の世界では、ビジネスに奉仕するオンタイムとして急き立てるかのごとく推奨される例は多い。なお、従来のレディース美容がなぜリラックスを女性に許すかというと、リラックスして健康そうにツヤツヤして容姿を高めてからの性行為・妊娠・出産を期待している側面もあると思われ、美容は女性ジェンダーに対してなら優しいかというと決してそうではない。男も女も地獄である。

前項のカーキと同じく、メンズコスメブランド各社は、美容の女性向けのイメージを払拭する工夫をさまざま凝らすものである。ロジックに関しては、ブランド名および「アップデートする」といった言葉使いをみるに、「理系」のイメージを引用することで男性向けらしさを演出する戦略のようだ。同じ戦略を取っているブランドとしてはデバッグ(Debug)が挙げられる。肌荒れをITの「バグ」に喩えていると思われる。

 

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3.ヌル

フィード投稿にて、3種類のギフトボックスをプロモーションしている。

 

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▶ヌルとは

ヌル(NULL)は日本発のメンズコスメブランド。ブランド名は主にプログラミング用語として使用され、「空白」「なにもない」という意味である。ただのゼロではなくプログラミング用語のゼロなのは、前項のロジックと同じく理系イメージの引用であろう。現状のメンズ美容は、レディース美容のアイシャドウやリップのようにプラスアルファ色味を足す方向性は浸透しておらず、逆に肌から肌荒れやひげなどの夾雑物を除去してより高純度なゼロを突き詰める傾向にある。そのような空気感をよく表したブランド名であると言えるだろう。

ちなみにゼロをブランド名に冠したメンズコスメブランドもちゃんと存在する。オーガニック系メンズスキンケアブランドのゼロエディション(ZERO EDITION)がそれであったが、2024年2月にブランド終了してしまった。

 

高純度なゼロを突き詰めるメンズ美容の傾向については、メンズコスメレビュー100本ノックその29にも書いたので興味がある方はご覧ください。

 

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ひげも体臭も脂ぎった肌も、意志とは関係なく当たり前に発生するものだ。当たり前に生えてくるひげを毎朝毎朝几帳面になくし(あるいは大金かけて毛根をレーザーで焼き)、鼻毛をなくし、メンソールシャンプーで頭皮の皮脂をなくし、制汗剤で体臭をなくす。男性の肉体には喪失が義務づけられている。唯一「まとう」ことが許されているのは筋肉だけであろう。あとは、高級な腕時計ぐらいか。これも、ボー・ブランメルが装飾品を排し懐中時計の鎖しか許さなかったエピソードと重なる。

 

 

 

4.アオノ

Happy Father’s Dayと題したリールで、スキンケア商品一揃いをプロモーションしている。

 

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▶アオノとは

アオノ(aono)は日本発のオーガニックコスメブランド。公式によると「肌や心の変化と向き合う男性のためのオーガニックコスメ」である。一般的にオーガニック製品を好むのは女性が多いと思われがちだ。ハーブティーやドライフラワーや草木染めの衣服といった、「丁寧な暮らし」的ライフスタイルから連想される典型的なイメージは女性であろうが、男性向けかつオーガニックを標榜するコスメブランドは意外に多い。すべてのメンズコスメブランドはレディースコスメとの差別化に知恵を絞るものだが、一般的なレディースコスメにはない付加価値としてオーガニック・ボタニカル・ナチュラル・ヴィーガン・自然成分●%配合などを謳うメンズコスメブランドは一定数いる印象だ。

 

5.クワトロボタニコ

父の日にオススメギフトセットと題したフィード投稿で、シャンプーとボディソープのギフトセットと、洗顔料とオールインワン化粧水のギフトセットをプロモーションしている。

 

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▶クワトロボタニコとは

クワトロボタニコ(QUATTRO BOTANICO)は日本発のメンズスキンケアブランド。バラエティショップから百貨店まで幅広く出店している。「男性用ボタニカルスキンケア」を標榜し、前項のアオノと同じオーガニック志向のメンズコスメブランドである。キャッチコピーは「枯れない男の肌メンテ」。青々と茂る植物のイメージと肌の潤いのイメージが重ねられている。男性のエネルギッシュさの尺度としての、性的な意味での「枯れない」も暗示されているかもしれない。

実は前項のアオノもキャッチコピーは「内なる渇きを、自然の恵みで満たしてゆく。」であり、ここでも肌の「渇き」と植物のオアシス的イメージが重ねられている。単純な水分不足を表す「乾き」ではなく、精神的な飢えや渇望から男性的なエネルギーを連想させる「渇き」の文字をあてているのもミソであろう。キャッチコピーに「渇き」を用いているメンズコスメブランドにはほかに、先に紹介したデバッグの「渇きに抗え、男肌」がある。

 

6.ヒース

フィード投稿にて、ギフトラッピングが可能であることをアピールするほか、ストーリーにて、6月開催のポップアップを父の日と関連づけてプロモーションしている。

 

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▶ヒースとは

ヒース(HEATH)はイギリス発のメンズコスメブランド。90%以上天然由来成分使用のナチュラルコスメを標榜している。前項のアオノやクワトロボタニコと同じくオーガニック志向のブランドである。

 

7.ヴァロン

西武池袋本店でポップアップストアを展開し、限定のギフトセットを販売している。

 

 

▶ヴァロンとは

ヴァロン(VARON)は飲料メーカーのサントリーが運営する中高年男性向けスキンケアブランド。商品においてはウイスキー樽成分配合を強調し、酒の「男らしい」イメージを引用している。

ブランドについて詳しくはメンズコスメレビュー100本ノックその13を参照。

 

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8.アスレティア

フィード投稿3つに渡って、父親との思い出を想起させるようなポエティックな商品紹介を展開している。

 

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▶アスレティアとは

アスレティア(athletia)は2020年日本発のライフスタイル&スキンケアブランド。明確に男性向けとは謳っていないが、百貨店などではメンズコスメの棚に置かれていることが多い。旗艦店である表参道店にはヨガやピラティスのスタジオも併設されており、先述のカーキと同じく、スポーツのアクティブなイメージを強調してジェンダーレスにアピールしているようだ。日本初のクリーンビューティーブランドを自称し、自然由来成分使用やリサイクルガラス容器使用などサスティナビリティを押し出している。レディースコスメと差別化するための付加価値としてサスティナビリティ・エイジレス・ジェンダーレスなどの倫理的配慮を強調するのも、メンズコスメブランドによくみられる戦略である。

 

9.ニベアメン

父の日キャンペーンとしてXでフォロー&リポストキャンペーンを実施している。

 

 

▶ニベアメンとは

ニベアメン(NIVEA MEN)はニベアのメンズライン。ニベアは、日本ではスキンケアクリームが「青缶」の愛称で親しまれている。どこのご家庭にも一個ある的な定番スキンケアなので見覚えがある人も多いだろう。元はドイツのブランドで、日本未発売ながらLGBTQプライドコレクションも展開されているようだ。

 

 

ニベアメンのスキンケアはかつては瓶容器だったが、2020年10月にプラスチック容器にリニューアルされた。プラスチック容器だとわざわざリサイクルゴミに出す必要がないので消費者の利便性は高まるが、環境負荷という点では瓶容器に劣る。前項で述べたような、レディースコスメにはない付加価値としてサスティナビリティを強調する戦略は取れない。手軽さと環境負荷抑制は多くの場合両立しないのだ。メンズコスメブランドは、美容行動に慣れない男性向けに手軽さを重視することも多い。サスティナビリティとどちらを取るかはブランド次第である。

 

 

10.クラランスメン

クラランス公式Xからメンズラインに案内している。

 

 

▶クラランスメンとは

クラランスメン(CLARINS MEN)は、女性向けのデパコス*1として人気のクラランスのメンズライン。同じデパコスメンズラインのクリニークフォーメン(CLINIQUE FOR MEN)と混同しやすいが、クリニークは美容部員が白衣を着ているのが目印である。

 

11.ジゲン

フィード投稿にて、全商品がギフトボックス・メッセージカード・ショッパーつきであるとプロモーションしている。

 

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▶ジゲンとは

ジゲン(ZIGEN)は日本発のメンズコスメブランドで、公式によると「男性の肌と行動の本質をついた、メンズコスメブランド」「『本物』を追及するオトコのために」。「本質」や「本物」、関連して「自然」「個性」はメンズコスメの頻出語句であり、従来の女性主導の美容文化を暗に「虚飾」として劣位に置いて、男性が着飾ることを正当化するためにしばしば用いられる。レディースコスメと差別化するにあたってのミソジニックな本質主義は、どのメンズコスメブランドにも大なり小なり認められる。

 

12.マニフィーク

フィード投稿でオールインワンジェルをプロモーションしている。

 

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▶マニフィークとは

マニフィーク(Magnifique)はコーセー系列のメンズコスメブランドである。価格も高すぎず、ドラッグストアやバラエティショップに広く流通しているので、最もメジャーなメンズコスメブランドの一つであろう。

キャッチコピーの「いい顔は、自然でつくる。」は、前項で触れたようなメンズコスメ特有の本質主義を表していると言える。

メンズコスメレビュー100本ノックその10では、マニフィークのネイルシールド、ファイブイズムバイスリーのネイルアーマー、オルビスミスターのネイルケアプロテクターを、ネイルに戦いの男性的なイメージを引用している例として言及した。

 

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13.オルビスミスター

フィード投稿で、父の日ギフト7選と題してギフト向け商品を紹介している。

 

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父親のアイコンとしてひげが用いられているのが興味深い。こんな絵に描いたようなエルキュール・ポアロ風口ひげを生やしている父親は少数派だろうが、中年男性のアイコンとしては今も有効なのだ。ひげは化粧水やBBクリームなどを塗る際に邪魔になることが多く、現実の美容との相性はあまりよくないと思われるが、ひげを生やした男性表象モデルを用いているメンズコスメブランドは非常に多い。これも美容の「女々しさ」を払拭し「男らしさ」を強調する手段の一つであると思われる。

 

▶オルビスミスターとは

オルビスミスター(ORBIS Mr.)は女性向け国産コスメブランドオルビスのメンズライン。詳しくはメンズコスメレビュー100本ノックその3を参照。

 

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14.アールオム

送料無料とオリジナルギフトラッピングのキャンペーンを行っている。

 

 

▶アールオムとは

アールオム(R_homme)はマナラ化粧品が運営するメンズスキンケアブランド。通販メインで展開しているようだ。

 

15.アンリクス

ストーリーにて、「お父様への感謝を込めてスキンケア品の贈り物はいかがでしょうか!?」としてスキンケア一式をプロモーションしている。

 

 

▶アンリクスとは

アンリクス(UNLICS)は花王系列のZ世代向けブランドで、「なぜ男子は堂々と化粧直しができないのか」をテーマとしている。メンズメイクへの抵抗はすでに通り越して、化粧直しへの抵抗に着目しているのだ。平均的な父親層よりも若い世代向けで、デパートやセレクトショップではなくドラッグストアを中心に展開していることからも、父親向けのプレゼントとしての需要は少ないと思われる。だからか、今回の父の日向けのプロモーションはやや唐突で、やっつけ感が漂っている。ストーリーのみで、フィードへの投稿もない。

ブランドについて詳しくはメンズコスメレビュー100本ノックその26を参照。

 

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16.コムニコス

フィード投稿にて、アイブロウマスカラ・スティックコンシーラー・ボディクリームをプロモーションしている。

 

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「毎日頑張るお父さんに『整える』をテーマに、父の日ギフトをご用意」だそうで、アイブロウマスカラは眉やひげやもみあげを「整える」、スティックコンシーラーは肌を「整える」、ボディクリームはCBD入りでメンタルヘルスまでも「整える」とのこと。「整う」という言葉には、昨今男性向けの趣味として人気のサウナも意識されていることだろう。CBD配合のクリームもCHILLブームに目配せしつつ、女性向けっぽくはない物珍しさが男性の興味を引くと判断されたのかもしれない。

ちなみにサウナといえば、そのものずばりサウナ用スキンケアを標榜したネルジャス(NELJAS)というブランドがある。ジェンダー問わずプロモーションしつつ、男性ユーザーも多いようだ。

 

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▶コムニコスとは

日本発のコスメブランドで、男性用を押し出しつつジェンダーレスにアピールしている。日本のメンズコスメブランドではわたしが知る限り初めて、明確な同性カップル表象を公式サイトに用いているブランドでもある。

詳しくはメンズコスメレビュー100本ノックその30を参照。

 

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17.ボッチャン

フィード投稿にて、オリジナルギフトラッピングがあることをアピールしている。

 

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▶ボッチャンとは

ボッチャン(Botchan)は夏目漱石をモチーフにした2018年日本発のメンズコスメブランドで、コンセプトは「『男らしく』を、脱け出そう。」。本記事で見てきたように多くのブランドが既存の男性ジェンダーをなんらかの形で踏襲する中、脱・男らしさを標榜するブランドは珍しい。パッケージデザインも、メンズコスメには珍しくカラフル/ポップ路線である。

ボッチャンは、3月8日の国際女性デー、10月11日の国際カミングアウトデーなどフェミニズム分野の記念日に毎年言及している。とりわけ、5月17日のLGBT嫌悪に反対する国際デー(International Day Against Homophobia, Transphobia and Biphobia)に言及しているメンズコスメブランドはわたしが知る限りほかにはない。

 

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LGBTQインフルエンサーや見た目問題解決NPO法人MFMSとのコラボイベントなども実施しており、現代的なダイバーシティへの目配せが行き届いている印象を受ける。これらが時代の空気を読んだ目配せで終わるのか、実態を伴った新しい試みであるのか、いずれレビューしたいブランドである。

 

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18.アベンヌ

看板商品のアベンヌウォーターを男性向けにプロモーションしている。

 

 

▶アベンヌとは

アベンヌ(AVENE)は元々はメンズコスメブランドではなく、アベンヌウォーターは敏感肌でも使えるスプレー化粧水としてレディース美容の世界で有名であった。しかし近年(おそらく2023年ごろから)、男性表象モデルを起用してアフターシェーブローションとしても使えることをパッケージに記載するなど、メンズスキンケアとしてもプロモーションされているので取り上げてみた。パッケージが元からシンプルで(ファッション用語としての)ジェンダーレスな印象なので、たしかにメンズコスメとしても通用しそうだ。

 

 

 

 


以上、2024年のメンズコスメブランド各社の父の日のプロモーションまとめでした。

 

メンズコスメレビュー100本ノックの過去回一覧はこちらからどうぞ。

 

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*1:デパートコスメの略。髙島屋や大丸などの百貨店で取り扱いがあるコスメのこと。おおむね3000円以上で、1万円を超える商品も珍しくない。