ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その10です。
過去回はこちら。
わたしはテストステロン投与(男性ホルモン治療)を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。
今回は、FIVEISM×THREE(ファイブイズムバイスリー)のマニキュアをレビューしていきます。
- 1.FIVEISM×THREEとは
- 2.鎧、防具、盾
- 3.レディースコスメにもある鎧や盾
- 4.レビュー FIVEISM×THREEのネイルアーマー 09 AH AR1、21 FRRG09
- 5.ネイルは自由でいい
- 6.メンズコスメレビュー100本ノックのスポンサーを募集します
1.FIVEISM×THREEとは
FIVEISM×THREEは2018年にローンチした日本初のメンズメイクアップブランドである。メンズコスメレビュー100本ノック その2ではフェイスパウダーをレビューしているほか、それ以外の記事でも何度も登場しています。前回のメンズコスメレビュー100本ノック その9で挙げたメンズコスメの4つの特徴にもがっつり当てはまる、名実ともに日本を代表するメンズコスメブランドでしょう。
4つの特徴をおさらいしておきます。
①従来的な男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを引用している
②女性の肌やメイクと比較して男性の肌やメイクを差別化している
③ジェンダーレス、エイジレスなどターゲットを幅広く設定している、倫理的配慮を強調している
④寒色・無機質・シンプル・直線的なデザインである
2.鎧、防具、盾
さて、これまた過去記事で述べてきたことの繰り返しとなるが、多くのメンズコスメの商品名は男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを引用している。今回レビューするFIVEISM×THREEのマニキュアはネイルアーマーと名づけられているが、似たようなメンズネイルはほかにもある。オルビスのメンズラインであるORBIS Mr.(オルビスミスター)のマニキュアはネイルケアプロテクター、コーセー系列のMagnifique(マニフィーク)のマニキュアはネイルシールドという。防具に盾と、「戦い」の男性的なイメージが利用されている。
3.レディースコスメにもある鎧や盾
しかし、すでにお気づきのコスメ好きの方もいるかもしれないが、商品名に鎧や盾がつく商品はレディースコスメにもあります。
有名なのはkiss(キス)のリップアーマーだろう。
リップアーマーがバズった2022年4月の背景を説明しておくと、まず2020年春ごろから本格化したCOVID-19禍により、メイクはマスクを前提とするようになった。とりわけリップはマスクに擦れて落ちやすく、従来のリップよりも落ちにくいリップが求められる中で2021年5月に発売されたのがKATE(ケイト)のリップモンスターである。唇にジェル膜を形成する特殊技術によってマスクに擦れても落ちにくいと発売直後から大きな話題を呼び、まさにモンスター級のバスを叩き出したのだ。間違いなく2021年で最もバズったコスメであろう。店頭からはたちまち姿を消し、増産に入るも供給がまったく追いつかない状況が続いた。手に入れることができないユーザーの期待の高まりもあって、早々に伝説のリップと化したのである。このあたりの開発秘話は花王のサイトで読むことができる。
2023年9月現在はおおむね普通に入手できるが、2022年はまだまだ品薄が続いていたのだ。そんな中2022年4月に発売されたリップアーマーは、KATEと似たようなジェル膜を形成するタイプの落ちにくいリップであり、いわば第2のリップモンスターとして、本家には及ばないまでも話題を呼んだのである。
そしてもう一つ、セザンヌからはリップカラーシールドなるリップが出ている。
こちらは2023年3月発売で、やはりジェル膜を形成するタイプのリップである。2023年はリップモンスターの供給が安定し、リップアーマーという第2の選択肢もあるからか、わたしの体感ではリップカラーシールドはさほど大きくバズってはいない。しかし、リップモンスターが1540円、リップアーマーが1430円である中、660円という破格の値づけはさすがプチプラ*2の王者セザンヌの面目躍如といったところか。落ちにくいリップをとにかく安く手に入れたい人にはうってつけの選択肢であろう。
リップアーマーは鎧、リップシールドは盾。しかし、ここで用いられているのは先に挙げたメンズネイルと同じく「戦い」のイメージなのだろうか? 体感の話にはなってしまうが、個人的には否である。リップモンスターの流れを踏まえた商品であることからして、ここでの鎧や盾は「堅牢さ」「防御力の高さ」、つまりリップの落ちにくさの比喩であり、戦いのイメージはさほど関係がないのではないだろうか。
レディースメイクは戦いのイメージと必ずしも無縁なわけではない。メンズコスメレビュー100本ノック その4で触れた劇団雌猫の書籍に見られるように、社会を生き抜くための武装としてメイクを行っている女性ジェンダーの人は多い。しかし、リップアーマーとリップシールドの鎧と盾に関しては、マスクに擦れても落ちないことの比喩として要請されていると、個人的には感じている。
ちなみに、kissからは2023年9月にリップアローというリップも発売されている。
アローとは矢である。これは、商品説明を見るに本体が超極細で細かい部分まで塗りやすいことを売りにしているので、リップアーマーとの統一感を出しつつ、細いものの比喩として矢が選ばれたのではないだろうか。これも、戦いのイメージとは直接的な関係はなさそうだ。
4.レビュー FIVEISM×THREEのネイルアーマー 09 AH AR1、21 FRRG09
価格:2420円 容量:7ミリリットル
さて、ネイルアーマーである。わたしの手元にある2色を見ていきます。09番はすでに廃盤になっているが、21番は現在も販売されている。
ネイルアーマーの色はクラシックカーからインスピレーションを受けているそうだ。色番のアルファベットもクラシックカー関係の意味があるのかもしれないが、わたしが車に明るくないためわからず(わかる方いらっしゃったらリプライで教えてください)。
ヴィーガンネイルではありませんが、動物実験を行っていないのでクルエルティフリーであるとは言えます。
09 AH AR1はパール質感のネイビー。たしかに高級車でありそうな色味ですね。着画は2度塗り。
FRRG09はグレイッシュなターコイズブルー。着画は2度塗り。
なぜか正確な色が写りにくかったのですが、手をグーにしてるときの着画が一番実物に近いです。
ネイルボトルでは微細なイエローパールが見えるのだが、爪に塗ってみるとまったくわからない。
パッケージはこちら。
ネイルボトルはプラスチックキャップつきの二重蓋。二重蓋を採用しているブランドにはほかにもCHANELやネイルズインクなどがあり、空気に触れにくくすることでネイル液の劣化が遅くなるとのこと。
ボトルを振るとカチカチ音がするので、撹拌ボールが入っていると思われる。撹拌ボールはネイル液が劣化して分離したときによく振って混ざりやすくするためのもので、入れてくれているブランドは親切である。
ハケは平筆で、塗りやすくはない。個人的には先が丸いラウンドカットのハケが一番塗りやすいと思う。同価格帯でもラウンドカットのハケを採用しているブランドはあるので、頑張ってほしい。
FIVEISM×THREEのショッパー(ブランドの紙袋)はグレーでロゴも小さく、メイク用品感がないように作られています。男性の抵抗感を軽減する工夫なのでしょう。
以上、ネイルとしてのレビューでした。
5.ネイルは自由でいい
過去記事でも述べてきたように、ネイルは死に覚えゲーである。最初から綺麗にできる人はいない。「ネイル 初心者」とか「ネイル 失敗」とかでググってみたらわかるが、最初は皆ガッタガタである。
そんな中、ネイルのハードルをもっと下げてくれるスタイリングを見つけたので共有しておきます。
韓国の名優イ・ジョンジェの2023年9月のファッションフォトである。イ・ジョンジェは日本では韓国ノワール映画『新しき世界』で広く知られるようになった俳優・モデルで、近年はGUCCIの豪華絢爛な広告も記憶に新しい。
今回のファッションフォトの、手元に注目。
ネイルが、均一に塗るんじゃなくてあえてまだらに塗ってあるんですよね。
そう、ネイルは均一に塗らなきゃいけないなんて誰も言っていない。
やりたいように自由にやればいいのである。
以上、FIVEISM×THREEのネイルアーマー 09 AH AR1、21 FRRG09についてでした。
以下、お知らせです。
6.メンズコスメレビュー100本ノックのスポンサーを募集します
さて、見切り発車で始めたこの100本ノックシリーズも、めでたく第10回を迎えることができました。100分の10で、まだまだ道半ばにも遠いですが、一つの節目ではあるんじゃないでしょうか。それもこれも読んでくださっている皆さんのおかげです。いつもありがとうございます。
しかし、100個レビューするとなると、仮に1個1000円だとしても10万円かかります。しかも、メンズコスメはプチプラがあまり充実していないので絶対1000円じゃ済みません。助けてくれ。
そこで、第10回の節目にかこつけまして、スポンサーを募集しようと思います。わたしの興味を引くメンズコスメをAmazon欲しいものリストに入れておいたので、このシリーズを応援してやってもいいかなと思われる方は、ぜひ送っていただければと思います。
こんな感じでコメントつきで公開しています。
いただいたメンズコスメは順次レビューしていきます。記事冒頭で、送ってくださった方のX(旧Twitter)やマストドンなどご希望のアカウントやはてなidを貼ってお礼を申し上げます。ブログをやっている方ならリンクとかも貼ろうと思います(嫌韓ブログとかだったら貼らないので保証はいたしかねます)。もちろん匿名希望の方はおっしゃっていただければ匿名で掲載します。
記事内容によっては掲載が数カ月後になるかもしれませんが、いただいたものは必ずレビューします。
リストは100本ノック企画を始める前から使っているものなので、メンズコスメ以外に普通に欲しいものも登録してあります。9月はわたしの誕生日月なので、シンプルに誕生日プレゼントを送ってやってもいいよという方はそちらも見てみてください。
よろしくお願いいたします!