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ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック その26:アンリクスのカラーレスコントゥアパウダー

 

 

 

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。

 

ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その26です。

 

過去回はこちら。続き物ではないので1から読む必要はありません(読んでくれたら嬉しいけど!)。以前の内容を踏まえるときはリンクを貼ります。

 

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わたしはテストステロン投与(男性ホルモン治療)を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。

 

今回は、アンリクス(UNLICS)のカラーレスコントゥアパウダーをレビューしていきます。

 

 

 

 

 

1.アンリクスとは

アンリクスとは2022年12月デビューのメンズコスメブランドである。運営元は日用品メーカー王手の花王株式会社。台所用品や洗濯洗剤、トイレ用品などでお世話になったことがない人はいないだろう。コスメにおいては、プチプラ*2ではKATE(ケイト)・キュレル・アリー、デパコス*3ではSUQQU(スック)・RMK(アールエムケー)・ルナソルなどを展開しているほか、カネボウ・コフレドール・プリマヴィスタ・ソフィーナなど、ドラッグストアの中価格帯ブランドの層が厚い。日用消耗品ブランドとしてドラッグストアで天下を取ってきたノウハウに強みがあるのかもしれない。

アンリクスの公式サイトはこちら。

 

unlics.jp

 

公式インスタグラムはこちら。

 

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アンリクスのコンセプトは、上記のインスタ投稿に凝縮されている。

 

UNLIMITED(無限の)+ CURIOSITY(好奇心)⠀

美への好奇心を、無限にかきたてる。⠀

"UNLICS"⠀

「なぜ男子は、堂々と化粧直しができないのか。」⠀

男性社員の想いから始まったプロジェクト。⠀

 

トイレで化粧を直していると、⠀

鏡越しに視線を感じることがある。⠀

 

でも、メイクで美しくてきれいな肌をつくるのは、⠀

服を選んだり、髪型を変えるのと、同じではないか。⠀

男子にも自然と湧き出る"美的好奇心"を刺激し、⠀

さらなる美へと高めてくれるものをつくりたくて、⠀

UNLICSはスタートしました。⠀

 

「なぜ男子は、堂々と化粧直しができないのか。」という文言は、公式サイトにもインスタグラムのbioにも掲載されている。ポイントは、「なぜ堂々と化粧ができないのか」ではなく、「なぜ堂々と化粧直しができないのか」であることだ。男性が化粧をすることはもはや前提なのである。メイクは日本の従来的な男性のジェンダー規範にない行動なので、メイクアップコスメを扱うメンズコスメブランドの多くはいかに男性の心理的抵抗を払拭してメイクをしてもらうかに心血注いでいる。中には、メイクの前段階のスキンケアすら抵抗がある男性は多いと考えて、スキンケアにも同様の工夫を凝らすブランドもある。パッケージに直線的なデザインや寒色を多用する、スポーツや飲酒やゲームなど「男らしい」事物のイメージを引用するなど、メンズコスメブランド各社の取り組みは過去記事で繰り返し述べてきた通りだ。メンズコスメレビュー100本ノックその23で紹介した、スキンケア用品をなんとウィスキーのスキットル容器に入れたFigo(フィーゴ)のデザインは、そのような企業努力の一つの極みであろう。

 

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しかしアンクリスは、美容に抵抗を感じる段階にいる男性のメンタルケアは引き受けていないようだ。ターゲットは、メイクをすることはすでに達成していて、今はメイク直しに関心を寄せる男性なのである。若い世代の男性ほどメイクに抵抗がないことがデータにも表れている通り、花王のプレスリリースでは、アンクリスのターゲットはZ世代向けと明記されている。

 

www.kao.com

 

「UNLICS」は、UNLIMITED(無限の)とCURIOSITY(好奇心)からなる造語です。美への好奇心を無限にかきたてるという想いを込めて、美しさへの欲望が強い“Z世代男子”の想いを集結させました。また、美容意識が極めて高いインフルエンサー3名をブランドパートナーに迎え、商品開発からコミュニケーションまでを共創してまいりました。

“Z世代男子”の「純粋に美しくなりたい」というニーズに応える化粧品ブランドの発売を通じて、誰もが自由に「美」を求め、語り合える社会の実現をめざしていきます。

 

「UNLICS」では、美容意識が高い“Z世代男子”が望む、キメが細かく明るく透明感が漂うクールな印象の肌を「繊冷肌」と名付け、「繊冷肌」に導く商品設計にこだわりました。

 

2024年1月現在、アンリクスの製品ラインナップは洗顔・クレンジング・化粧水・美容液と、下地・ファンデ・パウダー、そしてフェイスタオルとスポンジ。アンリクスだけでベースメイクまでは一通りが揃う寸法だ。価格帯はおおむね3000円台。メンズコスメレビュー100本ノックその1で取り上げた、同じくZ世代向けをはっきり謳うZUQUUN BOYS(ズキューンボーイズ)のBBクリームが980円だったことを考えるとやや高い印象だ。メイク直しに気が回るほど美意識の高い男性向けということで、初心者向けブランドよりは攻めた価格設定になっていると思われる。2024年1月現在は公式オンライン・Amazon・楽天のみでの販売だが、今後実店舗販売するとしたらやはりドラッグストアで、花王が得意とする中価格帯ブランドのメンズ版として展開していくのだろう。

公式サイトにもプレスリリースにも、メンズコスメブランドによくあるような「男女の枠組みを超えた」「性別に囚われない」「ジェンダーレス」といった言葉は登場しない。多用されているのは「美的好奇心」「繊冷肌」「浄・柔・潤・満・魅」といったエクスクルーシブな独自用語で、社会的な文脈を離れた「純粋な美」を追求する姿勢が強調されている。そんなアンクリスでも、トイレで化粧直しをするときの視線には一筆触れざるを得ないのが、この国の現状であろう。

 

 

 

2.商品ラインナップを見てみよう

そんなアンクリスは、レディースコスメと差別化して目を引くためか、あるいは「純粋な美」を追求する姿勢の産物か、従来のレディースコスメにおいても珍しいようなマニアックな商品をいくつか展開しているので見てみましょう。

 

■フォトジェニックウェア

 

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首用のトーンアップパウダーである。顔に白色顔料を配合したクリームやパウダーを塗って肌を明るく見せるのは男女ともに定番の手法であるが、首をはじめとするボディ用のパウダーはレディースコスメでも珍しい。個人的には、普及しない理由は、服に付着して煩わしいからだと思っている。白いクリームや粉を手や首に塗るとたしかに色白に見せることができるが、袖や襟は当然汚れるので、よほど美意識の高い人か、コスプレイヤーなどの撮影用でしか使われない印象だ(舞台用やコスプレ用のコスメブランドでは昔からボディ用のクリームやパウダーが展開されている)。アンリクスは日常使用を想定したブランドだが、フォトジェニックウェアという商品名からして、撮影用途は意識されていると思われる。いずれにせよ、服の汚れに気を遣ってでもボディまで望む姿でいたい男性がいるというのは時代の変化を感じるところである。

 

ちなみに、同じ花王からはKATEがフェイス&ネックホワイターという首用トーンアップクリームを2019年8月に発売しているが、すでに廃盤となっている。2017年ごろのレディース美容界隈は空前の「美白」「白肌」ブームであり、韓国コスメのウユクリームという白色顔料配合クリームを首にも塗る手法が一瞬もてはやされたが、定着するには至らなかった印象だ。2017年から2018年ごろの、一昔前の美容の流行については過去記事に書いているので興味のある方はご覧ください。「ハトムギジェルにメラノCCを混ぜてニベアで蓋して透明感爆発」「炎天下ではサンバリア差して金のアネッサと理想のトマト」などに懐かしさを覚える人は必見です。

 

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■ホグフォグマスク

 

顔を温める用のタオルである。円形で、鼻を出すための穴が開いている。顔を温かい濡れタオルで覆って温暖湿潤な状態を作り、肌を柔らかくし毛穴を開かせるのも、定番の美容法である。スキンケアが浸透しやすくなるとされている(実は諸説あり、毛穴は温度によって開いたり閉じたりすることはないという説もあります)。美容意識が高い人は、スチーマーという小型の加湿器のような器具を用いて蒸気を浴びて同様の効果を求めたりもする。

 

 

温かい濡れタオル(蒸しタオルと呼ばれる。電子レンジでも作ることができる)は、多くの人が通常のフェイスタオルを用いている。蒸しタオル専用のタオルはレディースコスメでも多くはない。皆無なわけではないが、コスメブランドがスポンジなどと並べて展開するのは珍しい。しかもアンリクスのこちらは顔に合わせて丸い形になっており、ハンドタオルとして兼用することもできない。相当に美容意識が高い人でないと買わないだろう。

 

 

 

3.カラーレスコントゥアパウダーについて

さて、カラーレスコントゥアパウダー である。

 

カラーレスコントゥアパウダーunlics.jp

価格:3960円 容量:7.5グラム×2

 

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ベースメイクの最後に塗る無色のフェイスパウダーで、マット(ツヤなし)質感とグロウ(ツヤあり)質感の2種類のプレストパウダーがパフと鏡つき容器に収納されている。

 

わたしはAmazonで購入した。容器のデザインと同じく、段ボールも白色と赤色で統一されていてかっこいい。公式サイトによると白色は「何にも媚びず自分の欲望に向かっていく純粋な好奇心」を、赤色は「内に秘めた美への欲求そのもの」を表現しているそう。

 

 

かのミケランジェロの言葉「美とは、余計なものの浄化である(Beauty is the purgation of superfluities.)」が引用されている。「浄化」と言えば、同じ花王系列のルナソルが長らくコンセプトとしていた「浄化メイク」が連想される。ルナソルは2019年秋にリブランディングしてそれまでのコンサバティブな作風からカラフルで大胆な作風にがらりと変わり、浄化コンセプトはどっか行っちゃったように見えていたが、こんなところに残っていたとは。

 

本体容器は薄型の四角形で、持ち運びにもぎりぎり耐える大きさだが、一般的な丸型のコンパクト容器よりはかさばる印象。

 

 

左がマットパウダー、右がグロウパウダー。

 

 

パフはタオルのような薄いパイル生地。小さいので全顔に使うには使いやすくはない。

 

 

製品情報はこちら。

 

 

外箱裏の使用方法に書いてある通り、顔の全体やテカりやすい部分にはツヤなしの粉を塗り、顔の高い部分(光を集める部分)にはツヤありの粉を塗って、顔にメリハリを出すことができる代物である。東アジア人においては、端的に言うと、平たい顔を立体的にする手法である。平たく言うと。平たい顔だけに。多様性の概念がある程度普及した今もなお、普遍的とされる美の基準は西洋人である。近年相対化され見直されつつあるとはいえ。

商品名のコントゥアとは英語のcontour、直訳すると「輪郭」で、メイクにおいては顔を立体的に見せるメイクの手法を指す。鼻筋や顎先を光らせて高さを強調し、逆にその他の部分は輝きを抑えて低く沈ませ、彫りを深く見せるのである。メイクの技法は総じて、光と影を利用し目の錯覚を駆使するトリックアートなのだが、それを最も直接的に表すのがコントゥアであると言える。

 

一般的なレディースメイクにおいては、コントゥアはハイライトとシェーディングという2種類のコスメを用いて行われる。ハイライトは、アンリクスのカラーレスコントゥアパウダーと同じくツヤありの粉で、シェーディングはブラウンの粉である。レディースコスメにおいては、低く沈ませたい部分に影を模した暗い色を塗るのである。どこにハイライトを塗ってどこにシェーディングを塗るのかは、ググれば図解がたくさん出てくる。

 

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ハイライトもシェーディングも、たくさんのブランドが数えきれないほど発売している。プチプラで有名なのはセザンヌのパールグロウハイライトとキャンメイクのシェーディングパウダーだろうか。

 

 

 

メンズコスメであるカラーレスコントゥアパウダーにおいては、シェーディングは、色ではなく質感を加えるのみで、よりさりげない仕上がりが志向されている。

マットパウダーを手に出してみたのがこちら。右側に塗っている。粉本体の見た目は白いが、色はほとんどつかない。

 

 

マットパウダー

 

肌になじむ白色のパウダーで、素肌感と透明感を演出します。

酸化亜鉛を配合することで、光の屈折率を抑え、皮脂を固化するので、テカリを抑え自然な質感に仕上がります。

 

グロウパウダーを手に出してみたのがこちら。右側に塗っている。

 

 

わかりにくいが、ほんの少し光っているのが見えるだろうか。

 

 

グロウパウダー

 

シルバー、ゴールド、レッドのパール配合で、光を反射しツヤ感を演出します。

パールの総量を抑え、輝度感の強いシルバーパールの配合比率を調整することで、自然で柔らかなツヤに仕上がります。

 

ちなみに、レディースコスメであるセザンヌのパールグロウハイライトとキャンメイクのシェーディングパウダー手に出してみるとこのようになる(左側にハイライト、右側にシェーディング)。光による隆起効果と影による沈下効果がよりダイレクトにわかるだろう。

 

 

カラーレスコントゥアパウダーのコントゥア効果は、レディースコスメのそれに比べるとほんの僅かである。商品ページのビフォーアフターにおける変化も、レディースコスメだったらあり得ないくらいにささやかだ。見比べても違いがわからない人すらいるのではないでしょうか。

 

https://unlics.jp/cdn/shop/files/1_before_after_1600x.jpg?v=1677486354

 

濃くならないことで、メイクに慣れていない人でも失敗しにくいのはメリットだが、効果がほんの少しなので頑張るモチベーションに繋がりにくいと感じる人もいるかもしれない。

個人的には、マットパウダーとグロウパウダーが同量なのが不便と感じた。マットパウダーは顔全体に塗ってグロウパウダーは一部に塗るのだから、普通に使い続けていくとマットパウダーのほうが先になくなりそうだ。

 

 

 

4.「美白」とコントゥアのこれから

アンリクスのカラーレスコントゥアパウダーによるコントゥア効果は決して派手ではない。公式インスタグラムによると、自撮りに過度な加工をしないZ世代のトレンドにも対応しているそうだ。

 

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また、男女や世代を問わず、一般的なハイライトやシェーディングに飽きたメイク上級者にも響くのではないだろうか。

2017年から2018年前後に、日本語圏インターネットのローカルな美容コミュニティにおいて「美白」が大流行したことは先に述べた。とりわけX(当時Twitter)では、従来は美容を楽しんでいるイメージの薄かった「オタク」の女性が美容語りに参入しはじめたのがこのころであり、「オタク」風の大仰な語彙を自由闊達に用いてユニークなコスメをレビューするアカウントがたくさんいた。2018年初頭に生まれたハッシュタグ「#限界コスメ」は息の長い流行となり、雑誌にまで取り上げられている。

 

bunshun.jp

 

まだ薬機法や景品表示法に対するネットユーザーの理解も浅く、厳密に調べると法律違反や優良誤認にあたるような怪しげな比較画像や大仰な口調でもインパクトがあればもてはやされた時代である。インフルエンサーによるステルスマーケティングはすでに存在していたが、現在ほどは体系化されておらず、今思えば牧歌的な時代であった。「美白」ブームはおそらく、ネットのバズったもん勝ちの風潮に後押しされているのだが、それは「美白」が言葉で表現しやすい美しさであったことも関係しているのではないだろうか。美しいとされる肌を表現するにあたっては、「ハリがある」「キメが細かい」「ツヤがある」「シミがない」などの形容が考えられるが、ハリやキメは厳密な計測が難しくて曖昧であり、大仰さ命の「バズ構文」とは相性が悪い。それに比べて、「シミがない」「色が白い」はわかりやすく、言葉でも写真でも表現しやすい。当時、メラノCCや白潤やアクアレーベル等で色白になったと称する根拠の薄い比較画像を見た記憶がある人も多いだろう。比較画像の多くが、アプリでの加工や光の加減による差を利用したフェイクであったことは言うまでもない。「お肌の漂白剤」「キッチンハイター飲んだ? ってくらい白い」など、色が白いことを形容する言葉はインフレ化していた。また、「学年で一番白い」「体調不良を心配されるほど白い」「クラスの男子に儚くて消えちゃいそうって言われた」など、若年女子の承認欲求を過分に含んだ微笑ましいレビューも溢れていた。なお、大仰な口調が陳腐化した2019年以降になると、あまりに大げさすぎることを言うアカウントは虚言だステマだと叩かれ、5ちゃんねるでオチされ、活動を休止・縮小するか、当時はまだ目新しかったLIPS(コスメのレビューアプリ。2017年サービス開始)に活動の場を移している。イーロン・マスクが来る前からTwitterは野蛮な世界だったことがよくわかりますね。

 

 

 

個人的には、2017年から2018年ごろは、肌が美しいことが「美白」の一語に雑に集約されていた最後の時代だったのではないかと感じている。先述したように、肌が美しいことと色が白いことは本来イコールではない。しかしSNS映えする美点としては「白い」が一強状態であった。それが転じて、「白い」が肌が美しいこと全般をも表現していたのではないか(今も?)。なにもかも一緒くたになっている万能の褒め言葉「白い」があるところから、近い意味を持つがややニュアンスが違う言葉として「透明感」がまず分化し、「ツヤ」「キメ」「色ムラ」といった概念が再発見されていったのが、2019年以降の美容界隈なのではないだろうか。美容液の進化と、スキンケアコスメを化学的な観点でレビューする成分系インフルエンサーが増えたこともあって、美容成分の知識が普及し、成分それぞれに対応する個別の肌悩みが見い出され、界隈全体の肌解像度が上がったのではないか。

また、人種差別の観点からも、白いことを美しさと結びつける価値観は相対化されつつある。2020年5月以降に日本でも知られるようになったブラックライヴズマター(Black Lives Matter/BLM)運動を例に挙げるまでもない*4

アンリクスのカラーレスコントゥアパウダーは無色であり、肌の色を明るく見せたり暗く見せたりする効果はなく、肌のツヤだけに厳密に作用する。この慎ましさは、白人中心主義な美を脱して多様な美を称揚していこうとする世界的な傾向とも呼応して、男性だけではなくジェンダー問わずのメイクに関心がある人に響くのではないだろうか。商品が先にあり、トレンドがあとから来るとすれば、かつてラベンダーのコントロールカラーUVによって「透明感」が見い出されたように、無色のコントゥアが作るトレンドもあるのかもしれない。

 

 

以上、アンリクスのカラーレスコントゥアパウダーについてでした。

 

アンリクスのプロモーションビデオを貼って終わりにします。KATEのno more rules魂が好きな人には絶対刺さるかっこよさなので、ぜひ見てみてください。

 

youtu.be

 

 

 

 

 

 

*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。

*2:プチプライス・コスメの略。身近なドラッグストアや、ロフトやPLAZAなどのバラエティショップで販売されている安価なコスメのこと。おおむね2000円以下。

*3:デパート・コスメの略。伊勢丹や髙島屋などの百貨店で販売されている高価なコスメのこと。おおむね3000円以上で、1万円を超える商品もある。

*4:BLMは、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える国際的な積極行動主義運動の総称である。国際的に注目を集め日本でも知名度を得たのは2020年5月25日のジョージ・フロイド圧殺事件以降だが、運動自体は2013年から継続して行われている。