敏感肌ADHDが生活を試みる

For A Better Tomorrow

ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック その23:Figoのスキンローション

 

 

 

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。

 

ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その23です。

 

過去回はこちら。続き物ではないので1から読む必要はありません(読んでくれたら嬉しいけど!)。以前の内容を踏まえるときはリンクを貼ります。

 

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わたしはテストステロン投与(男性ホルモン治療)を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。

 

今回は、Figo(フィーゴ)の化粧水、スキンローションをレビューしていきます。

 

 

 

 

1.オトコすぎるメンズコスメ、現る。

2023年6月から見切り発車で始めたメンズコスメレビュー100本ノックシリーズも、気づけば20回を越えた。これだけメンズコスメを使うと、日本のメンズコスメにありがちな特徴が大体わかってくる。メンズコスメレビュー100本ノックその9で解説した4つの特徴は以下の通りである。

 

①従来的な男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを引用している

②女性の肌やメイクと比較して男性の肌やメイクを差別化している

③ジェンダーレス、エイジレスなどターゲットを幅広く設定している、倫理的配慮を強調している

④寒色・無機質・シンプル・直線的なデザインである

 

各項目の詳細は過去記事を参照してもらうとして、今回取り上げるメンズコスメブランドは、中でも①の特徴を、未だかつてない濃度で帯びている。有り体に言うと男度(おとこど)が高すぎる。あまりにもオスすぎる。まさにメンズコスメの中のメンズコスメなのだ。

 

勿体ぶらずにとっとと見ていきましょう。今回取り上げるブランドはFigoという。

まずは公式インスタグラムと、そこから繰り出される広告を見てほしい。

 

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うわーーーーーーーーーー!!!

オトコすぎる~~~~~~~~~~!!!!!

 

高級ホテルのラウンジだかバーだかのソファに腰かける、ロマンスグレーにひげの高齢男性。胸ポケットから柄物のハンカチを洒脱に覗かせ、金ボタンの袖口にはいかついクロノグラフが光る。ジャケットの下はよく見るとカジュアルなデニムシャツで、男性がこのラウンジだかバーだかに場慣れしているのが窺えます。そして謎にしなだれかかる、男性よりは歳下に見える女性。髪とアクセサリーはごくシンプルにまとめ、ブラックドレスの二の腕とレースの下から覗く素肌が一番の華とばかりに露出しています。

あまりにも(シスヘテロ)男性の夢すぎる。しかもだいぶ古めの。

プロモーションにおいては雑誌LEONに掲載! っぽいわあ~~~~~。

 

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LEONといえば「ちょい不良(ワル)オヤジ」ブームの発信源として有名な中年男性向けファッション誌である。掲載商品のほとんどが欧米ラグジュアリーブランドの高額商品で、バブル世代の中年男性をターゲットに「モテるオヤジ」「ちょい不良オヤジ」の在り方を説いている。看板モデルはイタリア人タレントのパンツェッタ・ジローラモ。伊達男の代名詞ですね。

 

 

LEON関連のニュースといえば、日本語圏インターネットに親しんでいる人なら、2017年に男性ファッション誌GG(ジジ)の創刊号の内容が批判されたのは記憶しているかもしれない。ナンパ指南として美術館では見ず知らずの女性に蘊蓄を語ってマンスプレイニング*2し、焼肉屋では肉の部位の知識を披露する流れで女性の身体に触るといった内容で、当然ながら炎上した。そのGGの仕掛人はLEONの初代編集長の岸田一郎氏である。

 

www.dailyshincho.jp

 

メンズコスメブランドFigoは、そのLEONにすでに2度も掲載されているのである。

 

 

 

2.ビジュアルについて

改めてFigoについて見ていこう。Figoは、クラウドファンディング系応援購入サービスのMakuake(マクアケ)を通じて2023年に発足したばかりのメンズコスメブランドである。運営元は大阪に拠点を置くスタートアップの株式会社ワイズリンクス。2023年7月に先行発売され、8月にオンラインショップがオープン。実店舗では、今のところ兵庫の神戸阪急と東京のチューズベースシブヤで販売されているようだ。

公式サイトはこちら。

 

figojapan.com

 

チューズベースシブヤでは現在セット販売のみでした。

 

 

商品ラインナップは2023年12月現在、洗顔料・化粧水・美容液・クリーム。最大の特徴は、化粧水と美容液の容器がスキットルの形をしていることである。

 

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スキットルとは、蒸留酒の携帯用容器である。元々は野外で身体を温める目的でウイスキー、ブランデー、ウォッカといったアルコール度数の高い蒸留酒を少量持ち運ぶための道具で、ズボンの尻ポケットにねじ込めるように堅牢な金属製で平たく歪曲した形状になっている。

 

 

一昔前の硬派な映画やドラマで、男性俳優が寒空の下、ズボンのポケットやトレンチコートのポケットから出してあおるイメージを持っている人が多いだろう。そのイメージ通り、現代のタウンユースにおいては実用品というよりはロマンの産物である(キャンパーなど、アウトドアユースでは実際に使っている人もいるようだ)。わたしもハードボイルド小説やノワール映画が好きなのでわかります。化粧水や美容液がスキットルに入っている必要は1ミリもないし、顔につける化粧品は衛生が第一なので内部を洗いにくい構造の容器はデメリットでしかない(本物のスキットルが蒸留酒専用なのも、醸造酒だと成分が残留して不衛生になるからである)。ただただロマンのためだけの容器です。こういうムダは、個人的には全然嫌いではない。

ちなみに詰替用リフィルもある。取って付けたように環境への配慮を謳っているのが面白いですね。

 

 

公式インスタグラムを掘っていくと、最初に貼った広告の男女のイメージ画像のロケ地は大阪・御堂筋のセントレジスホテル大阪であることがわかった。一番安いプランで1泊6万円台、高いプランだと40万円台のホテルである。

モデルはMasaaki Kawasaki氏とMerisa氏。

 

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プロモーション映像には男性がバーで葉巻を吸っているものもある。そのロケ地は大阪・心斎橋のBAR DaDA(バールダダ)。分煙なしの喫煙可能店舗である。近年、分煙なし形態は昼営業のレストランでは少なくなってきたが、夜間営業の飲酒メインの店ではまだ見かける印象だ。

 

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Figoは大人男性向けのエイジングケアブランドなので、用いられているイメージも古めかしく、高価格である。過去記事でも述べたように、美容業界は「オッサン向け」「オバハン向け」などあからさまな言葉遣いをすることはない。コスメにおいて「大人」というとおおむね30代から40代以上を指すのが通例である。20代だって法律上は大人だが、20代は「20代」とそのまま書かれるか、「学生」「25歳以上」「アラサー」などと細分化されることが多い。イメージモデルの男性が1969年生まれの54歳で、白髪頭でもあることから、Figoのターゲットは大人世代の中でも上のほうの、40代後半以上であろう。過去にレビューしてきたブランドでいうと、メンズコスメレビュー100本ノックその15で取り上げたKHAKI(カーキ)のさらに上、100本ノックその13で取り上げたVARON(ヴァロン)と同世代くらいだと思われる。

 

過去記事でもたびたび述べてきたように、メンズコスメブランドは、従来的には女性のものというイメージのある美容をいかに男性にも抵抗なく行ってもらうかに心血を注いでおり、ここにブランドごとの工夫が表れる。その戦略の一つが、先述したメンズコスメブランドの特徴①の、男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを引用することだ。ブランドや製品、あるいは美容そのものが、実は「男らしい」のだとしてイメージの変化を促すのである。

たとえばKHAKIは、アウトドアスポーツの日焼けによる肌ダメージケアの重要性を説き、アウトドアブランドとのコラボなどでアクティブなスポーツマンのイメージを強調した。男性が日焼けするシチュエーションならば通勤通学や屋外での労働などもあるし、たまのレジャーよりもそっちのほうが日常的なはずだが、スポーツのイメージに全振りすることで「男らしい」印象を獲得しているのである。ここでは、余暇があるような働き方をし、その余暇を屋外レジャーに使う経済的・精神的余裕のある、おそらくはホワイトカラーの男性像が強烈に想定されている。

 

 

VARONは、独自の美容成分としてウイスキーの樽材であるヨーロッパナラ木のエキスを配合し、ウイスキーの「男らしい」イメージでもって中年・高齢男性に希求した。製品説明では、スーツを着た男性がプレゼンをする様子や妻らしき女性に褒められて照れている様子のイラストが描かれ、ここでも現代における理想的な男性像としてホワイトカラーでシスヘテロの男性像が掲げられている。

 

 

今回取り上げるFigoのアプローチも、VARONに似ている。スキットル容器でVARON以上に直接的に酒のイメージを引用し、高級ホテルやバーなどをロケ地に「男らしい」イメージを構築している。男性モデルがひげを蓄えていることも重要であろう。ひげは男らしさの象徴である。たとえば、過去記事でもたびたび触れてきたメンズ日傘ブランドのIZA(イーザ)は、2021年に窪塚洋介、2023年にオダギリジョーをイメージモデルに起用しているが、両者ともひげを生やしている。

 

 

 

窪塚洋介もオダギリジョーも、フィルモグラフィにおいてはブロックバスター映画よりも文芸色の強い単館系映画での活躍が目を引く。どこか影のある、異端な雰囲気を持つ俳優である。現代日本において、日傘を差すことはスキンケア以上に「男らしくない」とされる行為であるので、日傘を差しても違和感のない男性として、旧来的なマッチョイムズムから外れた孤高な雰囲気のある人物が求められるのは必然であろう。しかし広告としてはできるだけ多くの人に好いてもらう必要があるので、外れ値すぎず適度なセックスアピールもある、容姿端麗な人気俳優が選ばれるというわけだ。ひげは彼らの男らしさを強調し、メインターゲットである男性に親近感を持ってもらう小道具となっている。

 

 

ひげは一般的に、日焼け止めやファンデーションなど顔に塗るものと相性が悪い。メンズメイクが浸透しない原因の一つでもあるだろう。Figoは、テカり防止保湿クリーム(商品名アンチシャインクリーム)の商品説明において「メンズメイクまではしたくない。 でも触れられ肌でいたい。 そんな肌を叶えるのはフィーゴアンチシャインクリームだけ。」と書いているので、メイクアップコスメを作るつもりは今のところないのかもしれない。

 

 

 

3.女性モデルについて

さて、「触れられ肌」というパワーワードが飛び出したが、これはFigoのキャッチコピーである。公式サイトやインスタ広告には、「驚きも、嫉妬も、羨望も。すべてを味わい楽しめる 同世代で最上の触れられ肌へ。」という言葉が踊っている。

中年・高齢男性が顔に触れられるシチュエーションとしては、幼い子や孫と戯れる場面や、もっと年齢が上がると介護の場面もあるだろうが、ここでは明らかに女性との性愛の場面が仄めかされている。

株式会社ワイズリンクス代表である梁瀬伸吾(やなせしんご)氏のインスタグラムでも、「モテ」「愛され」を志向していることは明言されている。

 

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上記リール動画では、葉巻をくゆらせロックグラスを傾ける男性に女性が声をかけ、頬にさりげなく触れる場面で終わっている。

その女性役を演じるのモデルのMerisa氏は、年齢は非公開のようだが1969年生まれのMasaaki Kawasakiと比べると20以上は歳下であろう。

 

お気に入りの服記録記事で紹介したEzickのモデルもされているそう。知らなかった!

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公開プロフィールによると、ハワイのコナ生まれで、イタリア系アメリカ人と日本人のミックスだそうである。

Figoのビジュアルの男女は、近い距離で寄り添ってはいるが、おそらくは夫婦でもカップルでもなく、バーで知り合ったという設定の他人同士である。白人ルーツを持つMerisa氏は、初老男性に若い女性が話しかけて頬に触れてくるというシチュエーションの非日常性に合わせて起用されたのであろう。日本において白人はマイノリティであり、非日常を演出できる。また、「白人の美女」という記号化された、(シスヘテロ男性の)ある種の夢のイメージの利用とも捉えられる。Figoのターゲット層は、バブル景気の時代(1980年代後半から90年代初頭)に青春を過ごし、欧米の洋画や洋雑誌に親しんだ人も多いだろう。両親ともに白人である「金髪のチャンネー」ならさらに記号的・象徴的であるが、流石にリアリティがないと判断されたのだろうか。あるいは、人種的ステレオタイプを助長するので不適切であるとされたか。シンプルに、「今の時代はポリコレ的にアウト(笑)」として避けられた可能性もある(この2つは決してイコールではない)。

白人的な容姿は、長らく全世界的に美の基準であり続け、ありとあらゆる広告に利用されている。記号化・客体化は女性において顕著だが、男性においても、たとえば先述の男性ファッション誌LEONはイタリア人タレントのパンツェッタ・ジローラモを20年来モデルに起用し続けている。ジローラモとメンズコスメブランドの縁はこれだけではなく、最近だと2023年11月にアスタリフトメンのイベントに登壇している。

 

 

アスタリフトメンは、富士フイルムが写真フィルム分野で培ったテクノロジーを活かして開発したアスタリフトのメンズラインである。広告戦略においてはFigo同様、「男らしさ」を強調するスタイルのようだ。公式インスタグラムには、Figoと同じく高級腕時計が小道具として登場する。

 

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なんの説明もなくいきなり「戸賀私物」と出てくるので誰やねんと思いますが、ブランドアンバサダーであり実業家・編集者の戸賀敬城(とがひろくに)氏のことらしい。そんな自由すぎる運用が災いしたのか、インスタグラムの更新は2021年で止まっている。唯一のフォロイーはアスタリフト公式かと思いきや戸賀氏の個人アカウントというね。

アスタリフトメン公式にはオーデマピゲやロレックス、パテックフィリップなど、高級腕時計が次々登場する。ほかにもエルメスのバッグやヴィトンのシャツ、ベントレーの車など、戸賀氏の私物をたくさん見られるよ! やったね! 高所得男性の私物匂わせが見たい人におすすめです。

 

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4.商品について

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価格:6600円 容量:130ミリリットル

 

さて、やっと商品レビューに到達しました。公式オンラインでは、最初Amazonペイでゲスト購入しようとしたらなぜか決済できず(最終確認画面に決済ボタンが表示されず先に進めない)、クレジットカードで会員登録購入したらいけました。公式サイトは「ご利用ガイド」の項目が現時点で空白だし、まだスタートしたばかりでいろいろこなれていないのかもしれません。

商品自体は、注文したら翌日に発送され、その翌日には到着。迅速。

 

わたしが買った化粧水であるスキンローションを見ていきます。

ラッピングが無料だったので、せっかくなのでラッピングしてもらいました。

 

 

おお~~~~~!

かっこいい~~~~~~!!……のか?

 

 

価格は130ミリリットル6600円とかなりの高額だが、ステンレス製の容器代が占める割合が大きそうだ。こだわっているだけあって高級感がありチープではない。

せっかくなのでいろいろ写真を撮ってみました。しばしフォトギャラリーをお楽しみください。

 

 

わたしの精一杯の高級腕時計(※3万円)と一緒にパシャリ。呉樹私物(戸賀氏オマージュ)

 

重さを計ってみると218グラムでした。一般的なスキンケアコスメに比べると重めではあるが、ぱっと持ち上げるのに支障が出るほどではない。

出し口はスクリューキャップ(回して開けるねじ式の蓋)で、本物のスキットルにありがちなように本体に接続されており、蓋だけ失くす心配はない。

 

 

これまでも述べてきたが、わたしはスキンケア用品には片手ワンタッチで出せるポンプ容器を推奨している。抑鬱やADHDなどで意欲や行動力が低下しているときでも使えるからだ。生活は、コンディションが悪いときに合わせて組み立てるのが一番いい。そこらへんの工夫は過去記事にも書いてきました。

 

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しかし、スキットルのような、利便性には劣るが気分が高揚する製品のほうがモチベーションが上がって継続しやすいと感じる人もいるだろう。利便性とバイブスのバランスは人それぞれであり、ある程度経験を積まないとわかりにくい部分でもある。スキンケア初心者は、いろいろ使ってみて自分の性格を知っていくのがいいだろう。スキンケアの目的は肌コンディションをよくすることだけに非ず。試行錯誤を通じておのれを知ることこそが真の目的である。

Figoは美容液先行のスキンケア(アルビオン系列が定着させた手法ですね)を推奨しており、この化粧水は美容液のあとに使う。それだけあって、化粧水としてはかなり強いとろみがついている。脂性肌の夏のシンプルケアならこれだけでもいいかもしれない。

 

 

香りは非常にリアルなレモングラスの香り。レモングラスティーが好きな人はかなり嬉しいと思う。

製品情報はこちら。

 

 

成分として特徴的なのは、藍エキスを配合していることである。タデ科植物であるアイは、ご存じの通り青色の染料として古くから利用されてきた。藍水抽出液はメラニン生成抑制(いわゆる「美白」作用。なおこのブログでは美白という言葉は採用しない)・抗酸化作用・保湿作用などがあり、肌にいいのだそう。そういえば藍染職人さんの手はすべすべで綺麗と聞いたことがある。

Figoは、藍エキスがインディゴデニムの染料であることをフューチャーしている。

 

prtimes.jp

インディゴのジーンズを染める染料としても有名な藍から抽出した植物エキスです。藍に含まれる有効成分は肌のキメを整え、健やかさを保ち、若々しい肌へ。化粧水・美容液・アンチシャインクリームの3つの共通成分。

 

基本的に化粧品の成分は、割合が多い順に記載される(医薬部外品においてはまた別ルールがある)。なので化粧水の場合、多くの商品がまず水から始まる。公式によると、Figoのスキンローションの成分は以下の通り。

 

〈全成分表示〉 水、BG、グリセリン、PCA-Na、ペンチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒト幹細胞順化培養液、レチノール、フラーレン、藍エキス、DPG、ジグリセリン、ヒアルロン酸Na、ナイアシンアミド、グリチルリチン酸2K、クダモノトケイソウ果実エキス、加水分解コンキオリン、フェノキシエタノール

 

プレスリリースでPRされている整肌成分は、ヒト幹細胞順化培養液→レチノール→フラーレン→藍エキスの順に記載されている。藍エキスは、配合量としてはあまり多くはないようだ。それなのにプレスリリースでは真っ先に触れられているのは、デニムの「男らしい」イメージを利用するためであろう。

旧来的な男性のジェンダーロールにおいて、男性が服飾に拘泥することはおおむね「男らしくない」とされる。しかしスーツやシルバーアクセサリーや革小物やスニーカーなどいくつかの例外はあり、そのうちの一つがデニムである。デニムは「男らしい」趣味であり、後ろ指を指されることは少ない。とりわけオーセンティックなインディゴデニムは、シルバー925やレザーのように、使い古して育てる趣味であるとされている(あくまでコットン多めのインディゴの話。スパンデックス高配合のブラックスキニーとかはまた違う気がします)。長く使える「本物」であり、女子供の浅い趣味とは違うというわけである。男性の文化に顕著なこのような本質主義は、「作らず、繕わず。あなたらしい自分へ」(ORBIS Mr.公式より)や「女性のような『色鮮やかなメイク』でなく、自然と健康的に魅せるのが『ステルスメイク』」(FIVEISM×THREE公式より)といった、メンズメイクにありがちな自然さ至上・個性重視のテイストにも反映されている。根底にはもちろん、女性の文化を劣位に置いて排除してきたこの社会のミソジニーとホモフォビアがある。

Figoのビジュアルの男性がジャケットの下にドレスシャツではなくインディゴブルーのデニムシャツを着ていたのは、場慣れしてる感・お洒落上級者感を演出するのと同時に、キー成分とリンクさせるためだったのだろう。

 

手持ちのブルーデニムの尻ポケットに入れてパシャリ。

 

ほかには、レチノールが配合されているのが珍しい。レチノールはレディース美容の世界では2022年ごろから大流行している美容成分である。ビタミンAの一種で、シミ・シワ・毛穴など幅広い肌悩みにオールマイティに作用する。しかしレチノールは酸化しやすく不安定な成分で、レチノール高配合のスキンケアの多くはコストをかけてエアレス容器に充填したり冷蔵庫保管を推奨したりしている。また、肌刺激になり得る強い成分なので、夜にだけ使用推奨されるのが一般的である。Figoはレチノールだけを売りにしているわけではなく、使用タイミングや保管方法にも特記がないことから、レチノールの効果はあまり期待しすぎないほうがいいと個人的には思う。

レチノールのほかには、ナイアシンアミドとグリチルリチン酸2Kも配合されている。こちらも有名でエビデンスの確かな美容成分だが、成分表での順番は比較的あとのほうなので配合濃度は高くはないと思われる。

成分だけ見ると、イチオシの藍成分のほか、レチノール・ナイアシンアミド・グリチルリチン酸2Kと、豪華ではある。しかし配合濃度はおそらく低いので、気楽に使うのがいいだろう。配合濃度が低いと、敏感肌にも刺激になるリスクが低いのはメリットである。

 

以上、Figoのスキンローションについてでした。

スキットルからデニムから、これだけ幾重にも「男らしさ」を積み上げてお膳立てされないとおちおちスキンケアもできないのかと笑うのは容易い。しかし批判すべきは個人の内面ではなく、男性に恥の感情を植えつけている旧弊な構造である。男性美容の広告や商品の多くは、一方では構造に加担しつつ、一方では突き崩している。バランスをどちらに振るかはブランド次第で、Figoは前者に大きく振っているといえるだろう。

 

 

 

 

 

*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。出生時女性。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。

*2:mansplaining/男性が女性を見下したような態度で訊かれてもいないのに知識をひけらかすこと。女性が男性より無知であるとする固定観念に基づくディスコミュニケーションであり迷惑行為。man(男性)とexplaining(説明・解説する)を組み合わせた造語。