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ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック その21:獺祭ビューティの獺祭フェイシャルマスク

 

 

 

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ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その21です。

 

過去回はこちら。続き物ではないので1から読む必要はありません(読んでくれたら嬉しいけど!)。以前の内容を踏まえるときはリンクを貼ります。

 

www.infernalbunny.com

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わたしはテストステロン投与(男性ホルモン治療)を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。

 

今回は、獺祭ビューティのフェイスパック、獺祭フェイシャルマスクをレビューしていきます。

 

 

 

 

1.獺祭ビューティとは

獺祭ビューティ(DASSAI BEAUTY)は、山口県の酒造メーカー・旭酒造が展開するビューティラインであり、その名の通り日本酒の「獺祭」の酒粕エキスを配合していることが特徴である。獺祭は言わずと知れた純米大吟醸で、日本を代表する銘柄の一つであろう。

 

 

獺祭ビューティの公式サイトはこちら。

 

www.dassai-beauty.com

 

製品には、獺祭そのものである「純米大吟醸 磨き二割三分」と、製造過程で産出される酒粕のエキスが使用されている。酒粕エキスには16種類もの天然アミノ酸が含まれており、保湿効果が期待できるという。

 

 

 

2.商品について

 

獺祭フェイシャルマスク(3箱以上送料無料)www.dassai-beauty.com

価格:2750円 容量:25ミリリットル×5枚

 

フェイシャルマスクは2020年1月に美容家の山本未奈子監修のもと発売された。美容成分としては、獺祭そのもの(化粧品成分としての表示名はコメ発酵液)と酒粕エキスに加えて、ナノコラーゲンとビタミンC誘導体も配合されている。1枚550円と、フェイスパックとしてはやや高価なほうで、毎日のスキンケアに取り入れるというよりはスペシャルケア向け。

獺祭そのものが入ってはいるが、アルコールフリー表示がついている。アルコール分は製造過程で飛ぶか、表示義務以下の微量なのだろう。アルコールに過敏な人も使えそうだ。実際わたしもアルコール含有の化粧水などに刺激を感じることがあるが、これはピリピリすることもなく使えた。

シートは個包装。もっちりとして液含みがよい。香りは日本酒特有の爽やかな香りが若干するが、アルコール臭さはまったくない。推奨放置時間は10分。わたしは脂性肌だが、これ1枚でスキンケアを終わらせるにはやや乾燥するかなといったところ。保湿力の高い化粧水で念入りにケアした肌みたいになって気持ちがいい。わたしはメイク前に使うとちょうどいい。

製品情報はこちら。

 

 

 

 
 
 
 
 
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3.メンズコスメブランドとお酒のイメージ

獺祭ビューティの製品は2023年11月現在、フェイスパックと化粧水の2つ。わたしは男性向けでもあるジェンダーレスコスメと判断して取り上げた。実際、あとから公式インスタグラムを見てみると、白人男性表象を起用したイメージムービーや "All genders. All ages. All of us." といった発信があり、ボーダーレスな美を志向していることがわかった。

 

 
 
 
 
 
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一見してジェンダーレスコスメと判断された理由は、まず一つにはパッケージデザインにある。獺祭のボトルと同じロゴが潔く配されただけのシンプルなパッケージは、メンズコスメを思わせる。少なくとも、女性向けに顕著な曲線的・装飾的・暖色のデザインではない。

 

 

 

 

そしてもう一つは、お酒は従来には男性向けとされているからである。過去記事でも度々述べてきたように、メンズコスメブランドは、従来女性のものとされてきた美容をいかに男性に取り組んでもらうかを最大の課題としている。中でもよく見られる工夫が、男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを商品名やコンセプトに引用することだ。過去記事では、以下のような例を挙げてきた。

 

・ORBIS Mr(オルビスミスター) ネイルケアプロテクター→防具=戦いのイメージ

・FIVEISM×THREE(ファイブイズムバイスリー) ネイルアーマー→鎧=戦いのイメージ

・FIVEISM×THREE ゲームフェイスカモキッド→フットボールゲームのイメージ

・ゴリラコスメティクス→ゴリラのイメージ

・WAR PAINT(ウォーペイント)→戦いのイメージ

・DeBug(デバッグ)→理系、プログラミングのイメージ

 

これらに並ぶ例として、メンズコスメレビュー100本ノックその13で取り上げたサントリーが運営するメンズコスメブランドVARON(ヴァロン)は、独自美容成分としてウイスキー樽エキスを配合していた。ここでは酒のイメージが引用され、中年男性向けスキンケアとしての売りになっている。であれば、今回の獺祭ビューティのコンセプトである日本酒も、男性向け要素として機能しているのではないだろうか。従来的なイメージとして、飲酒は男性ジェンダーの文化とされている。晩酌をするのは「お父さん」であり、「お母さん」はお酌係である。甘口の酒に「女性にもおすすめ」という惹句がつくのは、女性の飲酒者が少ない(と、実態はともかく、そう思われている)からである。2023年8月には、ドイツの映画監督ウルリケ・オッティンガーの「ベルリン三部作」が日本初公開され、フェミニズム映画の文脈で再評価が進んだ。中でも1979年の作品『アル中女の肖像』が話題を呼んだのは、「アル中女」つまり飲酒する女性の表象が主題として取り上げられることが少なかったからであろう。

 

realsound.jp

 

 

 

4.食べ物に女性のイメージが付与される問題

ただし、酒の成分を含むコスメは全部ジェンダーレスな雰囲気があるかというと、そうとは限らない。ここに日本における酒のイメージの複雑さがある。

日本酒成分を美容成分としてアピールしているブランドは獺祭ビューティだけではない。たとえば、以下のキュレーションメディアのランキングでは菊正宗酒造・日本盛・白鶴酒造・日本ゼトック・大関の5つのメーカーの化粧水が紹介されている。

 

https://my-best.com/3020

 

中に、兵庫県の酒造・日本盛が手がける「米ぬか美人」というシリーズがある。米ぬかと日本酒を配合した化粧水だが、容器には和装の女性が描かれ、「美人」というネーミングからも、女性ユーザーを想定していることは明らかだ。

 

shop.nihonsakari.co.jp

 

また、熊本県の酒造・千代の園は、「乙女の柔肌」というシリーズを手がけている。こちらもいかにも女性的だ。

 

chiyonosono-shop.com

 

そう、日本には、高級食材に女性的な名前をつける風習もあるのだ。たとえば、米の名前には「あきたこまち」「つや姫」「きぬむすめ」「ミルキークイーン」「べっぴん小雪」「ふさおとめ」「ひとめぼれ」などがある。「新之助」「稲王」といった男性名のブランドもあるが、女性名のほうが有意に多い。

 

 

イチゴもそうだ。「とちおとめ」「あまおとめ」「おとめ心」「恋姫」「咲姫」「越後姫」「あかねっ娘」など、女性の名前であることが多い。

 

 

リンゴも、代表品種「ふじ」は初代ミス日本の山本富士子にかけているほか、「アルプス乙女」「姫小町」「あおもり乙女」「ピンクレディ」など、やはり女性的な名前が散見される。

 

 

性行為をすることを、俗語として「食べる」と言う。片方の人間(しばしば女性)の性的主体性を透明化し、「セックスされる」客体としてのみ捉える発想に基づいた表現であるが、高級食材に女性名をつける伝統と不気味に呼応しているように感じられる。米もイチゴもリンゴも、産業として地域に根づいた「ブランド食品」であり、ナショナリスティックなイデオロギーを纏っている。そのような食品に女性の名前がついていることは、家父長制を基に発展してきた近代日本の性質を反映していると言えるだろう。

 

獺祭ビューティの公式インスタグラムは、白人男女の表象を用いており、#jbeauty #japanbeauty などのハッシュタグから判断しても、海外向けのお土産としての需要も想定しているようだ。日本酒モチーフであっても、女性的なネーミングの奇習は引き継いでいないことが、個人的には嬉しく感じられる。

 

以上、獺祭ビューティの獺祭フェイシャルマスクについてでした。

 

 

 

 

 

 

*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。出生時女性。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。