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ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック その18:samuleのシルクスキンプレストパウダー

 

 

 

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ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その18です。

 

過去回はこちら。続き物ではないので1から読む必要はありません(読んでくれたら嬉しいけど!)。以前の内容を踏まえるときはリンクを貼ります。

 

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わたしはテストステロン投与(男性ホルモン治療)を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。

 

今回は、samule(サミュレ)のフェイスパウダー、シルクスキンプレストパウダーをレビューしていきます。

 

 

 

 

1.サミュレとは

サミュレは2023年3月にデビューしたばかりのジェンダーニュートラルコスメブランドである。運営元である株式会社BUZZWIT(バズウィット)はアパレルのオンラインショップを多数持つ会社であり、中でもEllno Loset(エルノロゼット)とEzick(エジック)は、わたしも購入したことがあった。

 

Ellno Losetのスリットジャケット。

 

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Ezickのアシンメトリートップス。過去記事でも紹介しました。

 

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Ellno Losetはジェンダーレスブランド、Ezickは分類としてはレディースだがモノトーン主体のエッジの利いたアイテムが多く、マスキュリンなスタイルが好きなわたしの需要に合っていたのだ。どちらも現代的なプチプラ~中価格帯のモード系ブランドといった印象を受ける。ちなみにBUZZWITの母体である株式会社アダストリアの傘下には、フェミニンすぎないパーティードレスの記事でも紹介したHARE(ハレ)がいる。HAREも過去記事に書いたようにモード系のブランドである。

 

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このような周辺事情を見るに、サミュレは(ファッション用語としての)ユニセックスなデザインのノウハウが元々ある会社が、アパレルの延長線上で開発したブランドなのではないだろうか。サミュレは今のところ実店舗展開はしておらず、ZOZOTOWNとfavclo(ファブクロ)で販売している。どちらも本分はアパレル通販サイト。

サミュレのZOZOTOWN公式ページはこちら。

 

https://zozo.jp/brand/samule/

 

公式インスタグラムはこちら。

 

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サミュレはデビューしたばかりのブランドということもあってかネット上の情報が少ないのだが、調べたところ、2023年7月からはRyoなる人物が「ディレクター」を務めていることがわかった。

 

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Ryo氏はインスタグラムのフォロワー1.2万人のインフルエンサー。カメラマンとしてWeb媒体などのファッションフォトを手がけつつ、自身のモノトーンコーデのお洒落なセルフィーで人気を博しているようだ。

 

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「ディレクター」の具体的な業務内容は不明だが、「担当させてもらってるからだけじゃなくリアルに推しのコスメです♪」などの微妙に距離のある話しぶりから察するに、Ryo氏は大元の「発案者」「ブランド創業者」ではなさそうだ。

 

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さらに調べると、ブランドの立ち上げ人はsyotaという人物であることがわかった。

 

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shota氏も、アパレル関係からキャリアを始めてコスメ分野に携わっているようだ。サミュレのいくつかの商品画像では自らモデルも務めている。Ryo氏との役割分担などは不明だが、Ryo氏が「公式インスタ運用してるのでそっちも見てね!」と発言している投稿があるので、サミュレ公式の「中の人」として文字を打っているのはRyo氏のほう、あるいは共同編集であろう。

若い人が飛びつくコスメも結局は「偉いオジサン」が作っている、とは昔から言われていることだが、サミュレの場合、SNSをお洒落に使いこなす容姿端麗な若い男性(Ryo氏は「#モード系男子」「#雰囲気男子」、shota氏は「#メンズファッション」などのハッシュタグを使っているので男性と思われる)がクリエイターとして前に出ているのは、時代の変化を感じさせます。もちろん両氏に全権があるわけではなく、もっと上にはべつの偉い人がいるのかもしれないが。

 

しかし、両氏とも、ブランドの顔にしては言葉遣いにやや粗雑なものを感じるのが正直なところである。

以下はサミュレ公式のインスタストーリーのスクリーンショットであるが、ジェンダーニュートラルコスメブランドを標榜するからには、コスメの色味を「女性らしい」でくくるのは迂闊な印象を受けます。

 

 

 

shota氏も「メンズにもおすすめ」「いい女になれる」など、ジェンダーニュートラルコスメであるというそもそもの前提をあやふやにするような発信をしている。

 

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株式会社BUZZWITの公式サイトには「【 samule 】は多くの人が抱える悩みを解決すべく立ち上げに至りました。メイク初心者の方も、メイクを毎日する方も納得していただけるラインナップを取り揃えております。」とある。ユーザーは「メイク初心者の方」「メイクを毎日する方」と表現され、男性・女性という言葉は(おそらくは意図的に)避けられている。実際、一般的なレディースブランドよりも「女性以外」のユーザーが有意に多いはずだ。それなのに、「中の人」たちの発信が嚙み合っていない印象を受けました。美容業界の言葉は、従来的なフェミニティ/マスキュリニティを前提としたものが圧倒的に多いが、ジェンダーニュートラルを掲げるコスメブランドには、規範に拠らない新たな表現を期待したいところである。

 

 

 

2.商品について

https://zozo.jp/shop/kutir/goods-sale/71254599/?did=118005959

価格:3630円 容量:10グラム

 

さて、商品についてである。

定価は3630円となっているが、ほとんど常時セールが開催されている(こういう商法あるよね~~)。実際は半額から2500円程度で入手可能。わたしはZOZOTOWNで2537円で購入した。

鏡とパフつきのコンパクト容器で、厚みも薄く、持ち運びに便利。パフに持ち手がついていないのはやや不便。

 

 

 

過去記事でも何度も書いたが、フェイスパウダーは、粉が舞い飛んで指やポーチを汚しやすいルースパウダーよりも、押し固められているので飛び散らないプレストパウダーを選ぶのがおすすめです。

 

左がプレストパウダー、右がルースパウダー。

 

パウダーはSPF(日焼け止め効果)なしの1色展開。手に出してみてもほぼ透明で色はつかない。

製品説明はこちら。

 

 

実際に使ってみたのがこちら。ベースメイクの効果は写真だと伝わりにくいが、色ムラが軽く整っていい感じです。

 

 

 

 

3.丸いパウダーは女性っぽい?

さて、ごく普通のプレストパウダーとして問題なく使えるサミュレであるが、一般的なレディース分類のコスメとの違いは、容器が四角いことではないだろうか。

一般的なレディース分類のフェイスパウダーは、おおむね丸い容器で作られている。

 

わたしの手元にあったパウダー。左から順に毛穴パテ職人のカラープレストパウダー、エレガンスのラプードルオートニュアンス、イニスフリーのノーセバムミネラルパクト、アナスイのルースパウダー。

 

しかしサミュレは、内部のパウダー自体は円形でありながら、パッケージはわざわざ四角形なのである。

 

 

これはやはり、丸いコンパクト容器は「女性のお化粧品」のイメージが強いと判断されたからではないでしょうか。

サミュレのほかにも、メンズコスメレビュー100本ノックその2で紹介したFIVEISM×THREE(ファイブイズムバイスリー)のパウダーも四角形だった(こちらは中身も四角形)。

 

 

www.infernalbunny.com

 

ほかにも、LIPPS BOY(リップスボーイ)LUWONT(ルオント)が四角いパウダーを作っている。海外コスメでは、イギリスのメンズコスメブランドWAR PAINTに四角いパウダーがある。

 

 

 

 

いずれも、女性的とされるものに心理的抵抗を感じる人(イコール男性とは限らない)向けに工夫されているのだと思われる。

もちろんレディースコスメにも四角いパウダーはあるが(過去記事で紹介したRMKのシルクフィットフェイスパウダーなど)、メンズコスメのパウダーの四角率はやはり有意に高いように感じます。

 

個人的には、丸いパウダーのほうがメイクポーチに入れるときに向きを気にしなくていいから便利だと感じるが、さほど大きな差ではないので、デザインの好みで選べばいいと思う。

 

 

 

 

4.パウダー以外のメンズ向けテカリ対策アイテム

最後に、メンズコスメブランドが出している、フェイスパウダー以外の皮脂テカリ対策アイテムを紹介して終わりにしたい。

レディース想定のメイク指南情報などを見ると、メイク崩れの原因となる皮脂はフェイスパウダーで抑えるのが一般的である。しかし、メンズコスメブランドは、先述したように「丸いコンパクト容器」の女性的イメージを回避するためか、パウダー以外のコスメを多く出している。

 

まず、メンズコスメレビュー100本ノックその3でも紹介したメンズコスメブランドORBIS Mr.(オルビスミスター)は、オイルコントロールスティックというスティック型のコスメを出している。クロスポリマーなどの粉体の成分が練り込まれたスティックで、顔に滑らせると粉体が皮脂を吸着する仕組み。

 

www.orbis.co.jp

 

メンズ向けのスティック型の皮脂吸着アイテムは、ほかにもプチプラ*2からはMENCOS(メンコス)のあぶらとりスティックが出ている。

 

mencosbrand.com

 

デパコス*3では、ジバンシイミスターのミスターマットスティックがあった。ジバンシィミスターはフランス産ハイブランドであるジバンシイビューティーのメンズラインだが、アイテム数は少なく、日本で取り扱いがある店舗も減ってきている。オイルコントロールスティックはすでに廃盤。

 

www.givenchybeauty.com

 

スティック型以外では、日本のメンズコスメブランドBOTCHAN(ボッチャン)が、皮脂や毛穴対策に特化したジェルであるスキンパーフェクター マットを出している。

 

botchan.tokyo

 

皮脂テカリ防止用のベースメイクアイテムは、UVカット効果や肌色補正効果などを併せ持つものがほとんどだが、こちらはカバー力がほとんどないジェルで、皮脂や毛穴対策に特化しているのが新しい。男性は女性より皮脂悩みが大きい傾向にあることを踏まえ、あえてシングルベネフィットを押し出してインパクトを狙っているのだと思われる。

メンズメイクは皮脂対策が不可欠であり、各ブランドの工夫が見えるのが面白いところだ。いずれレビューしていきます。

 

以上、サミュレのシルクスキンプレストパウダーについてでした。

 

 

 

 

 

*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。出生時女性。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。

*2:プチプライス・コスメの略。身近なドラッグストアや、PLAZAやロフトなどのバラエティショップで買える安価なコスメのこと。おおむね2000円以下。

*3:デパート・コスメの略。伊勢丹や髙島屋などの百貨店で販売されている高価なコスメのこと。おおむね3000円以上で、1万円を超える商品もある。