ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その11です。
過去回はこちら。
わたしはテストステロン投与（男性ホルモン治療）を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。
今回は、柑橘王子のオールインワンジェルをレビューしていきます。
1．柑橘王子とは
柑橘王子は株式会社コスメティックローランドが運営するブランドの一つである。公式サイトを見ても情報が少ないのだが、2008年8月から2021年8月のブランド総出荷数270万個突破とあるので、少なくとも2008年から存続しているようだ。
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個人的な体感では、ロフトやPLAZAなどの大きめのバラエティショップよりも、街中のマツキヨやココカラファインなどのドラッグストアのほうでよく見かける。ギャツビーやuno（ウーノ）、バルクオムなどと並んで、最も身近なメンズコスメブランドの一つだろう。
メンズコスメレビュー100本ノック その9で解説したメンズコスメブランドの4つの特徴をおさらいする。
①従来的な男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを引用している
②女性の肌やメイクと比較して男性の肌やメイクを差別化している
③ジェンダーレス、エイジレスなどターゲットを幅広く設定している、倫理的配慮を強調している
④寒色・無機質・シンプル・直線的なデザインである
この4つでいうと、柑橘王子は「王子」という男性のみに冠せられる用語を用いることで①従来的な男性ジェンダーに親和的な事物のイメージを引用していると言えるだろう。容器のデザインは寒色ではないが、④のようにどちらかというとシンプルである。ポップな色遣いは、「王」ではなく「王子」であることからして、若い世代にも希求しているのかもしれない。
ちなみに、「王」を用いたメンズコスメもちゃんと存在する。ロート製薬のボディウォッシュのデ・オウがそれである。「女子高生の香りになれる」と変なバズり方をして話題になったデオコの男性版です。
2．オールインワンジェルとは
価格：1100円 容量：180ミリリットル
今回レビューするMSオールインワンエッセンスは、スキンケアコスメの分類でいうとオールインワンジェルにあたる。
そもそもスキンケアは肌に水分を与えて、その水分が蒸発しないように油分で蓋をするのが基本のやり方である。水分にあたるのが化粧水、油分にあたるのが乳液やクリームである。まず化粧水を塗って次に乳液を塗って蓋をするのが、一般的なスキンケアの流れだ。
しかしオールインワンジェルは、水分と油分の両方をバランスよく含んでおり、これ1個を塗るだけでスキンケアが完結するという素晴らしいプロダクトである。スキンケア初心者は、とりあえずオールインワンジェルを買っとけ。これが今回の記事の1つ目の結論です。初心者だけではない。朝の身支度を少しでも時短したいハードワーカーや、スキンケアに割く精神的コストが少ないADHDなどの精神障害者にもこのコツは有効です。
もちろん、オールインワンジェルだけでいいならすべてのスキンケアがオールインワンジェルに成り代わっているはずなので、化粧水や乳液が生き残っているのにはそれなりの理由があります。オールインワンジェルは水分と油分両方を含むということは、肌質によってはどっちつかずになってしまうのがデメリットだ。油分がもっと欲しい乾燥肌の人にとってはカサつくかもしれないし、水分を優先的に補給したい脂性肌の人にとってはベタつくかもしれない。肌質に合ったものを見つけるのが大事です。
3．ポンプ容器について
ポンプ容器のメリット
さらに、MSオールインワンエッセンスはポンプ容器である。
ポンプ容器は、ポンプヘッドを片手で押すだけで中身が出てくる。片手ワンタッチでスキンケアができるのだ。スキンケア用品は、ポンプ容器で揃えろ。これが今回の記事の2つ目の結論です。いいからポンプ容器にしとけ。世界が変わるぞ。
スキンケアコスメによくある容器は、ほかにはスクリューキャップ容器とヒンジキャップ容器がある。
スクリューキャップ（上記画像の左端）は、ネジ式の蓋を回して開ける方式の容器である。スキンケアするのに①容器を持ち上げる ②蓋を回して開ける ③容器を傾けて中身を出す ④その間片手に持っておいた蓋を回して閉める ⑤容器を置く という実に5段階を要する。最悪の容器。今すぐ滅ぶべき。
ヒンジキャップ（上記画像の真ん中）は、容器と蓋が繋がっている蝶つがい方式の容器である。醤油など調味料によく用いられます。こちらは片手ワンタッチで開閉できるのでスクリューキャップよりは利便性が高いが、容器を持ち上げる傾ける手間は生じます。
それにひきかえポンプ容器（上記画像の右端）は、容器を持ち上げる必要もなく、ワンステップで中身を出すことができるのである。
また、オールインワンジェルのようなとろみの強いプロダクトは、ジャム瓶のようなジャー容器で販売されていることも多い。
ジャー容器はスクリューキャップを回して開けて指を突っ込んで適量を取って蓋を閉める必要があり、これまた手間がかかります。ポンプ容器なら、ポンプを押すだけで一定量が供給されるので自分に必要な量を把握しやすいのも大きなメリットだ。
ポンプ容器のデメリット
ポンプ容器は個人的には最高なんですが、生活スタイルや個々人の性格によっては不便な点もあるので、書き出しておきます。
①目線より下の平面に置く必要がある
まず、ポンプ容器をプッシュするためには目線より下の平らな面に置いておく必要があります。目線より上の、たとえば洗面所の棚などにスキンケア用品を置いておいて手を伸ばして取る方式で収納している人にはメリットが薄いかもしれません（ゼロではないと思うが）。ちなみにわたしはドラム式洗濯機の上に置いています。
バストイレ一体型アパートで一人暮らししていたときはトイレの上に置いていました。
②飛び散ることがある
手の位置を間違えると壁とかに飛び散ることがあり、それを不快に感じる人には向かない。
③残量が把握しにくい
これはポンプ容器に限らず縦型の容器の多くがそうなのだが、開口部が広いジャー容器に比べて残量がわかりにくいことが多い。透明の容器はその限りではない。
④最後まで使い切るのが難しい
ポンプ容器は、スキンケアがまだ残っていても、残り僅かになるとホースの吸い上げが悪くなることがある。安いものなら捨ててしまえるが、高いスキンケアだと勿体ないと感じる人もいるだろう。
⑤壊す可能性がある
ポンプ容器はスクリューキャップなどに比べたら複雑な構造をしており、多くはプラスチック製なので、あまりにも荒く扱うと壊れます。
⑥持ち運びには不向き
ポンプ容器は強く押すと中身が飛び出てしまうので、そのままバッグに入れて銭湯とか旅行とかに持っていくにはやや不安がある。使い始めの最初についているストッパーがあればはめておくといいのだが、失くしてしまう人も多いでしょう。
4．成分について
オールインワンであることと容器のことばかり語ってきたが、MSオールインワンエッセンスの中身にも触れておきます。
容器はこちら。
店頭ではシールが貼ってあり、ビタミンCとCICA（シカ）成分が入っていることがアピールされています。
CICAとは韓国発祥の美容成分で、ツボクサという草に含まれる成分である。動物の鹿は関係がない。肌荒れ防止や保湿効果があるとされ、レディースコスメにおいては2019年ごろから広まり2021年ごろに爆発的に商品数が増えた。このMSオールインワンエッセンスは2022年9月発売であり、レディースコスメにおける流行を汲んでメンズコスメにも配合したのであろう。
ジェルは水分多め。乾燥肌の人はやや保湿感が物足りないかもしれないが、ベタつきがないので、感覚過敏のある発達障害者にもおすすめできます。
香りはレモンの香りがはっきりついている。癖がなく比較的万人受けする香りだとは思うが、無香料でないと耐えられない人には向きません。
以上、MSオールインワンエッセンスについてでした。
5．今回の結論
スキンケア初心者は、
ポンプ容器のオールインワンジェルを使え
これが一番お伝えしたいことです。
初心者でなくても、スキンケアがどうにも継続できない人、面倒に感じてしまう人は、容器に精神的コストを食われてないか確認してみてください。
容器を変えて、ワンステップでできるようにするだけで、変わるかもしれません。
ADHDはじめ、スキンケアに使える精神的コストが少ない人向けの時短スキンケアについては、過去記事で沢山書いてきたので参考にしてみてください。
*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。出生時女性。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。
