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ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック その15:KHAKIのゴーイングアップクリーム

 

 

 

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。

 

ジェンダークィアによるメンズコスメレビュー100本ノック、その15です。

過去回はこちら。続き物ではないので1から読む必要はありません(読んでくれたら嬉しいけど!)。以前の内容を踏まえるときはリンクを貼ります。

 

www.infernalbunny.com

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わたしはテストステロン投与(男性ホルモン治療)を受けているが、女性から男性への「性別移行」を目指しているわけではなく、男性ジェンダーに帰属意識はない。しかし、AFAB*1のジェンダークィアとしても、そしてわたしの生活を規定するもう一つの属性である精神障害者としても、メンズコスメが持つ可能性に注目しているので、メンズコスメの奥深い世界をより理解するために、身銭を切って100個のコスメを買って使ってレビューすることにしました。「メンズ向け」「ジェンダーレス」を明言しているブランドのアイテムを中心に、メイクアップアイテムだけではなく、スキンケア、ヘアケア、美容グッズなど幅広く取り上げる予定です。

 

今回は、KHAKI(カーキ)の美容液クリーム、ゴーイングアップクリームをレビューしていきます。こちらはAmazonほしい物リストを通じて俳人の石原ユキオさんに支援していただきました。ありがとうございます!

ユキオさんは兼業で長年創作活動をされている方で、わたしはユキオさんが提唱する「季節創作者」の概念が好きなんですよね。そう、創作だけに邁進できる人ばかりじゃないのが当然で、持続可能な形でぼちぼちやっていきたいものです。

 

 

ユキオさんにいただいた「わたしは作中人物じゃないですよ」「女流って呼んだらコロス」バッジは、わたしの創作のお守りです。

 

 

ユキオさんがこの缶バッジを作るに至った話はこちらから読むことができます。俳句に限らず、文芸創作コミュニティに関わる人には刺さるお話だと思う。

 

sisterleemag.medium.com

 

ユキオさんのYouTubeはこちら。

 

 

 

 

 

1.KHAKIとは

KHAKIは2021年3月にローンチしたメンズコスメブランドである。2023年10月現在、スキンケアコスメのみを展開しておりベースメイクやメイクアップは扱っていない。

公式サイトはこちら。

 

www.khaki.jp

 

公式インスタグラムはこちら。

 

www.instagram.com

 

価格帯は洗顔料が1980円、化粧水が2750円、美容液クリームが3960円と、プチプラ*2ではないがデパコス*3というほどではない。ドラッグストアの中価格帯ブランド程度だが、今のところドラッグストアには展開しておらず、阪急・髙島屋などの百貨店を中心に出店している。過去のポップアップもバーニーズニューヨークやチューズベースシブヤなど都会志向の中~高価格帯セレクトショップでの開催が多い。ポーチつきセットが用意されていたり、公式インスタグラムで男性向けギフトとしてたびたび宣伝されていたりすることからも、日用品というよりは、少し特別感のある、「感度の高い」30代以降の男性に向けたハイセンスなプロダクトとして売り出されているようだ。オンラインの販路はAmazon・楽天・ZOZOTOWNなど手広いが、これも身近に手に取りやすくする工夫というよりは、ギフトとして取り寄せを容易にする狙いが大きいのではないだろうか。

 

www.instagram.com

 

 

 

2.商品について

 

amzn.to

GOING UP CREAM<薬用クリーム美容液>www.khaki.jp

価格:3960円 容量:20グラム

 

さて、ゴーイングアップクリームである。

分類としては医薬部外品で、有効成分としてナイアシンアミドが配合されている。ナイアシンアミドはメラニンの生成抑制効果(いわゆる「美白」効果。なおこのブログでは「美白」という言葉は採用しない)とシワ改善効果を兼ね備えており、近年注目を集めている成分である。わたしも以前からスキンケアに採り入れるようにしています。

 

容器はスクリューキャップのチューブ容器。

 


 
チューブ容器は、個人的には広口瓶様のジャー容器よりは使いやすく、続けやすいと感じる。しかし、チューブ容器は置き場所が安定せず見失いがちだがジャー容器は安定感があるので続けやすいという意見も見たことがあるので、人によるかもしれない。

中身は塗り薬にありがちな粘りのあるテクスチャー。

 

 

香りはスギやヒノキのような清涼感のある樹木の香りである。個人的にはいい香りだと感じた。成分を見てみるとベルガモット・ラベンダー・ローズマリーの精油が使われているそうで、意外とスギでもヒノキでもなかった。ウッディっぽさはローズマリーによるものらしい。

パッケージはこちら。

 

 

ナイアシンアミド配合で、しわや乾燥の気になる部分にポイント使いすることが推奨されている点は、メンズコスメレビュー100本ノックその14で紹介したゴリラコスメティクスのSEメディカルセラムとまったく同じである。容器形状や価格帯もほぼ同じ。SEメディカルセラムは無香料なので、感覚過敏で香りが気になる人はSEメディカルセラムのほうがいいかもしれない。

 

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3.KHAKIはスポーツマン向け?

そんなゴーイングアップクリームだが、公式インスタグラムでは「紫外線を浴びるメンズの肌のためのフェイスクリーム」として紹介されている。

 

www.instagram.com

 

そもそもKHAKI自体が、スポーツのあとに使うスキンケア用品ブランドとして売り出されているのだ。公式インスタグラムのバイオグラフィーには「アウトドア派のメンズスキンケア」とあり、公式サイトのトップページにも「カッコ良く外遊びを楽しみたいメンズのためのスキンケア」とある。

 

日を浴びる機会の多い肌に
 
キャンプ、サーフィン、ゴルフ、ランニング、

自転車、釣り、スケートボード、日々の通勤、etc…

紫外線を浴びる機会の多いメンズの

肌悩みを効果的にケアする医薬部外品

不要な成分をなるべく使っていない低刺激性

日々の肌荒れや紫外線によるシミ・ほてりを予防し

外気の刺激でざらついた肌をなめらかに

こだわりのギアやファッションがさらに似合う顔に

カッコ良く外遊びを楽しみたいメンズのための

スキンケア「KHAKI(カーキ)」

 

skincare for enjoyable life

 

自然を感じ、遊ぼう

思いっきり体を動かそう

たくさん日の光を浴びたなら

毎日のルーティンケアを忘れずに

効果的なスキンケアで

肌は見違えるほど変わる

整った肌が人生をもっと楽しくする

さあ、充実したライフスタイルを

自分の手でデザインしよう

 

公式サイトのブランド説明には、代表である藤井健一氏(株式会社hue five代表取締役)によるブランド創業の経緯が綴られている。それによると、晴れた日に妻とランニングをしていて妻に紫外線ケアを勧められたことがきっかけの一つだそうだ。まさにスポーツをきっかけに始まったブランドなのだ。

 

「やっぱり男は少しくらい焼けてたほうが、引き締まってかっこいいよね。」

「私もそう思う。でもシミがあるとちょっと老けて見えるかも。メンズも紫外線ケアしたほうがいいんじゃない?男女関係なく紫外線を浴び続けるとシミができるよ。」

「え、でも日焼けした肌が好きだし…別に色白肌になりたいわけじゃないけど…」

「私も色白肌が目的で紫外線ケアしてないよ。紫外線でシミやしわができて老けて見られたくないからだよ。」

 

実生活では、男性が紫外線を浴びるシチュエーションはアウトドアスポーツの場だけではない。通勤や外回りの営業で日の下を歩くこともあるだろう。というか頻度としてはそっちのシチュエーションのほうが多いはずだが、KHAKIが着目するのはあくまでスポーツによる肌ダメージである。

 

販促においても、「アウトドア派向け」のコンセプトは強調されている。

まず、2023年8月にはアパレルブランドのMAGIC NUMBERとコラボしている。MAGIC NUMBERはプロサーファーの中村竜が代表を務めるブランドであり、スポーツウェアやワークウェアを展開している。コラボ商品にはMAGIC NUMBERのキャッチコピー「SEE YOU IN THE WATER」が印字され、川遊びや海遊びを想起させる。

 

 

また、公式インスタグラム上では定期的に #趣味フォト募集 というキャンペーンが行われている。これは、KHAKI公式アカウントをフォローした上で指定のハッシュタグをつけてアウトドアスポーツを楽しんでいる写真を投稿すると、抽選で5名にKHAKIのスキンケアセットが当たるというもの。投稿写真は公式インスタグラムにリポストされたり、公式サイトにイメージフォトとして掲載されたり、店頭のポップに使用されたりする。KHAKI製品をこれからもらえるキャンペーンなので、当然KHAKI製品が映り込んでいる必要はなく、ただのアウトドアの写真でよい。つまり、KHAKIユーザーではないかもしれない人の写真がリポストされたりポップに使用されたりするわけで、不思議といえば不思議である。

 

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4.エクスキューズとしてのスポーツ

過去記事で繰り返し述べてきたように、メンズコスメブランドは、従来的には女性のものと思われている美容をいかに男性にも取り組んでもらうかに最大のコストを注いでいる。男性の抵抗感を減らし親しみを持ってもらうためのデザインやコンセプトはそのまま、レディースコスメにはない、メンズコスメ特有の特徴となっている。過去に紹介してきたメンズコスメブランドでいうと、FIVEISM×THREE(ファイブイズムバイスリー)は鎧・喫煙・高級車といった「男性的」なモノのイメージをコンセプトに反映させた。ORBIS Mr.(オルビスミスター)も戦いのイメージを用いた。uno(ウーノ)は一般的にはピンク色である色つきリップクリームをグレーで作った。

そして今回のKHAKIにおいては、スポーツマン向けというコンセプトが、男性の身で美容という「男らしくない」行動に取り組むにあたってのエクスキューズとして機能していると、わたしには感じられる。

多少の肌ダメージは気にしない(とされている)男性も、海辺で長時間強い日差しと潮風に晒されたら、赤味やヒリヒリなどを自覚し、多少のスキンケアはするだろう。激しいアウトドアスポーツをしたあとということで、身体を労わるという発想も出てくるだろう。ブランドによって作り込まれた「アウトドア用」のイメージは、実際にはアウトドアスポーツをしない男性にも作用し、KHAKIの商品を手に取りやすくしているのではないでしょうか。サーフィン、キャンプ、スケボーといったアウトドアスポーツの「男らしさ」が、スキンケアの「女々しさ」を帳消しにしているのである。

 

 

 

先述したように、男性が日差しを浴びるシチュエーションなら、アウトドアスポーツ以外にも通勤や外回り営業などもっと身近なものがあるはずなのだ。農業・建設業・造園業など、屋外メインで仕事をする男性もたくさんいる。しかし、ブランドが注目するのはあくまで、余暇があり、その余暇を大がかりなレジャーに使う経済的・精神的余裕がある、おそらくはホワイトカラーの男性による、アウトドアスポーツでの日焼けである。ここには現代における男性の理想像を見ることができるだろう。また、先述した代表取締役によるブランド創業の経緯を思い出してほしいのだが、そこには「男は少しくらい焼けてたほうが、引き締まってかっこいい」と語る男性に対する、妻という異性の目線があった。余暇があるような働き方をしており、その余暇を大がかりなレジャーに使う経済的・精神的余裕がある、おそらくはホワイトカラーの、おそらくはシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの既婚男性像が、暗に提示されているのである。もちろん公式サイトに記載されているのは対外的に編集されたブランドストーリーに過ぎず、代表の藤井氏と配偶者が実際にこのような会話を交わしたとは限らない。しかし、少なくともこのような会話がリアリティを持ち、ターゲットである男性の共感を呼ぶと判断されたからこそ公式サイトに載っているのである。

 

資本主義社会において、商品は社会の鏡である。変わりつつある男性の現在地を、メンズコスメは敏感に察知して反映するはずだ。引き続き観察していきたいと思います。

 

以上、KHAKIのゴーイングアップクリームについてでした。石原ユキオさん、ありがとうございました。

 

せっかくなのでわたしのアウトドアスポーツの写真も載せようと思って画像フォルダを探しましたが、インドアオタクすぎて1枚もなかったので、湘南の海で泳いだときの写真を貼って終わりにします(過去数年内で最もアウトドアなアクティビティ)。

 

 

 

 

 

 

*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。出生時女性。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。

*2:プチプライス・コスメの略。身近なドラッグストアや、ロフトやPLAZAなどのバラエティショップで販売されている安価なコスメのこと。おおむね2000円以下。

*3:デパート・コスメの略。伊勢丹や髙島屋などの百貨店で販売されている高価なコスメのこと。おおむね3000円以上で、1万円を超える商品もある。