Instagramなどでセルフネイルの画像を眺めていると、どの爪にもそれぞれに違った魅力があることに気づく。
長く伸ばして、優美な弧を描く形に整えて、精緻なアートを施した爪は、それ自体が一つの箱庭のように完成されている。指先にまとう、小さな楽園。持ち運べる贅沢。作成にかかるであろう時間や手間も考えるにつけ、真に豊かな空気から生まれた芸術品であると感じる。
反対に、短く切って、単色をさらっとベタ塗りした爪もいい。実用的で質実剛健で、マチュアな魅力がにおい立つ。成熟した大人の手という感じだ。
さらにその単色が、自爪に近い色だったらなおチャーミングだと思う。一見なにも塗っていないかのように見えるネイルは、手そのものを際立たせる。派手色にはない力強さと、独特の「誤魔化しの利かなさ」があるように感じる。
そのような、地味だけど地味じゃないネイルをしたい気分のときに、わたしがよく使うネイルポリッシュを紹介しようと思います。
Ducato(デュカート)の、ファイバーインハードナーEX スモーキーベージュ。7ミリリットル750円。
公式サイト ファイバーインハードナーEX スモーキーベージュ|デュカート
爪の欠けや割れを防ぎ、弱い爪もしっかり補強。ネイルカラーとして使えるナイロン繊維入りハードナー。
●保湿成分:パンテノール、加水分解コラーゲン、アボカドエキス、マカデミア種子油配合
ネイルカラーとしてもベースコートとしても使える、オールインワンネイルだ。写真は、ネイルカラーとして三度塗りしたもの。わたしの肌では、パープル味を感じるグレージュに発色した。ボトルではピンク系の微細なパールが見えるが、爪に塗ると見えなくなります(これがナイロンなのかな?)。
パッケージはこちら。
ベースコートもトップコートもなしにこれ一本でさらっと塗ることができる。また、ナイロン繊維が配合されており、爪を割れにくくしてくれる。個人的には、爪をスクエア型に整えたときに端から欠けるのを防いでくれるのが助かった。その性質上、表面には微細なざらつきがあり、ツヤツヤぷっくりとはいかないが、個人的には気にならない範囲でした。
このようなヌーディー系のオールインワンネイルは他ブランドからも出ているが、ほとんどがピンクやピンクベージュ系の色味だった。このような寒色系のベージュは珍しいので、有名なパラドゥのネイルファンデやキャンメイクのファンデーションネイルが肌馴染み悪かった人におすすめです。よく言われるような桜貝っぽいキュートさではなく、シックさやクールさを求める人にもおすすめです。
また、ベースコートとしては、爪先や、爪の根元の白い部分(爪半月)とピンク色の部分の境目をぼかしてくれるのがいい。塗っておくと、透け感のある薄色のカラーをムラなく発色させることができます。
***
さて。
上記のDucatoの写真もそうだし、
最近の別の写真を見てもわかるが、
わたしは色白ではない。
肌のキメも、あまり細かくないのがおわかりいただけると思う。世間一般的な「美肌」の基準を満たしてはいないのです(ちなみに顔も白くはないし、かなり肌荒れしているほうである)。
とくに、先生と共同生活を始めてからは、以前よりも手が乾燥するようになった。おそらく、一人暮らしのときよりも水仕事をする時間が増えたからだろう。先月から急に、痒みをともなう手荒れも出現した。皮膚疾患以外でこのような症状が出たのは人生初のことです。べつに気にしてはいないが、今後水が滲みて痛んだりするようならちょっと不便かもしれない。
中指と薬指と股の3カ所に肌荒れ。写真はフィルターなしの無加工(トリミングのみ)。
年齢的な変化もあるだろう。歳上の方は、20代が加齢を語るなんてちゃんちゃらおかしいとお思いでしょうが、若輩者なりの変化は感じるところであります。手は年齢が出やすいパーツなのだと、20代なりに実感している。
しかし、写真の上でならどうか。今どきはアプリを使えばいくらでも白肌にできるし、シミもシワもない陶器のような肌に加工することも可能です。それはそれで、現代社会ならではの面白い体験だろう。
でも、個人的には、それはしないでいます。少なくとも、ブログに載せる写真には。
理由の一つは、冒頭で少し触れた通り、若さにも色白にも拠らない美しさを見い出していきたいからだ。すべやかで白い手にはすべやかで白い手なりの魅力があり、そうでない手にはまた別の魅力があるはずだ。前者のほうが称揚されがちな世の中であるなら、わたしは、後者の作例を増やしていきたいのである。
なお、日焼け止めを塗ったりメラニン分解効果のあるクリームを塗ったりするケアを否定しているわけではない。わたしもスキンケアはしている。肌は、審美性を左右する外皮である以前に、そもそもが「器官」なので、ある程度は保護して労わって健康を保つ必要があります。
もう一つ、肌の加工をしない理由は、シワも手荒れも事実そこにあるからである。
事実そこにあるのに、ないものとして扱われがちなのが気に食わないからである。それはまるで、発達障害者その他の精神的マイノリティのように。
現に存在して、今このときを生きているはずなのに、いないものとして社会は回っているのだ。
ここらへんのことは、腕時計の着画の記事でも書いた。
腕時計の接写、思ったより腕毛が目立ってるな。オーソドックスな “映え” の作法を踏襲した写真に、本来あって当然なのに「なかったこと」にされがちな要素を落とし込んでいきたいという気持ちがあるので、肌の画像はほとんど加工していません。 https://t.co/2l7qNbsDca
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年5月27日
デパコスにコンサータを映り込ませる写真にこだわるのも然りで、百貨店の美しい化粧品フロアにも、わたしのような人間は「いる」んです。なにもしなかったら「標準」「健常」の枠に強制的に入らされるのだから、目に見える形で示していく。 pic.twitter.com/srmgGgk4Dw
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年5月27日
当ブログのヘッダー画像は、前代未聞の“映えサータ”でお送りしております。精神的弱者でも実践できる、セルフケアや美容のコツをお届け。
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年3月22日
敏感肌ADHDが生活を試みるhttps://t.co/VMtatRs9GD pic.twitter.com/pcIShEE6P1
わたしは、趣味としてネイルを楽しむ人間で、美肌ではなくて、ADHDだ。この三要素はなんの問題もなく両立するし、事実そのような人はいくらでもいるだろう。それでも、ともすれば「マイナス要素」は捨象され忘れられがちな気はしています。であれば、目に見える形で示していこうと思うのです。なによりも、わたし自身に言い聞かせるために。わたしという人間を構成する要素がプラスかマイナスかは、わたし自身が決めることなのだ。もちろん、「障害は個性」なんていう綺麗ごとを言うつもりはないし、なりたい理想像があるのならそれに惹かれる美意識を否定したいわけではない。ただ、最初からないものとして切り捨てられるいわれはないのだ。どんな要素も。
誰しも、「ありのまま」で生きることは不可能だ。障害者でなくても、誰にとっても無理な話です。それでも、写真を加工しないでおくくらいの、反抗とも言えないようなほんのちょっとした反抗でささやかに自己主張するくらいなら、難なくできる。わたし一人で運営しているブログの中くらいは、白くもなくツルツルでもない写真を溢れさせておこうと思うのです。
そんなわたしの手に、DucatoのファイバーインハードナーEX スモーキーベージュはしっくりくるのです。以上、レビューとも言えないレビューでした。
イカれたメンバーを紹介するぜ!
— 呉樹直己@求職中 (@GJOshpink) 2020年10月18日
多様性!
関連記事
ADHDでも継続できるハンドケア・ネイルケアの方法はこちら。
爪が割れやすい人は、貧血を疑ってみるといいかもしれません。
手荒れ自体は歓迎できるものではないが、生活環境の変化による広義の成長としては興味深いし、ワクワクします。ここらへんの感情の機微は、同居人の食事管理ログの記事にも書きました。
わたし、22歳のときに初めて「冷え」(気候としての全身的な「寒さ」ではなく、手足がことさらに冷たくなる感覚)を体感して、レッグウォーマーや腹巻きの存在意義を理解したんですけど、これも加齢によってものの見方が変わった例ですね。人生が変わると、アンテナが増える。
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年9月27日
最近買ったハンドクリームの話。