まず最初に書いておくが、わたしが持っている腕時計は、CITIZENのSHAREX SXA31-0084 スタンダードソーラーテックモデル(10000円)とISSEY MIYAKE Uのno.15(36000円)だ。この記事では、この2本の購入経緯を紹介していく。
もちろん、ただ過去の買い物を振り返るだけでは、単なるわたしの趣味の羅列なので情報として汎用性がない。そうではなくて、どういう思考回路に基づいてこの時計を選んだかの機序を詳しく書いていくつもりだ。この2本のチョイスはわたしの個人的な趣味嗜好の産物ではあるが、同時に、ADHDの自分でも使いやすいか?を考慮した合理的選択の結果でもある。時計は安い買い物ではないし、購入時の思考回路をこうやって記録し共有することには、意義があるんじゃないかと思います。
なので今回は、腕時計のブランドの歴史がどうとか、ムーブメントがどうとかの蘊蓄には触れません。蘊蓄は、興味を持ってしまえばそれはそれで面白いものだが、それこそ趣味嗜好の領域なのでここでは割愛します(わたしも詳しくないし)。ここらへんは、興味のある人だけが自由に調べたらいい部分でしょう。
それでは、ADHD流の腕時計の選び方、書いていきます。
1.まず前提として。ADHDなら、腕時計を紛失することを想定して安物を買うべきか?
まず前提として、わたしは、出先で着脱するもの(傘・帽子・手袋・ハンカチ・ストール・イヤホンなど)にはお金をかけないと決めている。紛失することを前提にして、安物をどんどん買い替える心構えでいる。そのほうが気が楽だからだ。
ピアスやリングなどのアクセサリー類も、着脱はしなくても気づかないうちに落とす可能性があるので、安物しか買わない(それでも耳飾りに関しては、ピアスに変えてからはイヤリングの頃より圧倒的に落とす頻度が減りました。耳飾りをつけたいADHD民は、体質や職業規定が許すならば、勇気を出してピアスを開けてみるのがおすすめです)。
ここらへんの、服飾小物の選び方については、過去の記事でも詳しく書きました。「安物」が具体的にいくらなのかは各自の経済力によって違うと思うが、わたしの場合は、帽子や手袋は3000円台、アクセサリーは2000円台を目途にしています。傘はコンビニのビニール傘しか使わないと割り切っている。
とはいえ、どうしても欲しかったら高い物を買ってもいい。そこは各自臨機応変に考えましょう。自分の感性は大事に。わたしも、イヤホンだけは、ノイズキャンセリング機能つきの高額なワイヤレスイヤホン(AirPods Pro)を使っている。
では、腕時計はどうかというと、服飾小物ではあるが、外出先で着脱はあんまりしないし、気づかないうちに落下する可能性も低い。なので、強いて紛失を恐れて費用を抑えなくてもいいというのが個人的な結論です(わたしはどちらにせよ大学生なので、そんなに高価な時計は買えないが)。
もちろんこれは個人差があるので、腕時計をなくした経験があったり、どうしても心配だったりする人は、安めのものを選んでもいいと思う。自分自身と相談しましょう。ADHDなら、自分のキャパシティを自覚して、やりたいこととやれることのバランスを常に模索しながら生活を運営していこう。
2.ADHDの腕時計(1) 実用性重視のやつ
では、わたしが持っている腕時計を紹介していきます。
1本目は、CITIZENのSHAREX SXA31-0084 スタンダードソーラーテックモデルだ。
17歳のときに、大学入試で机の上に置く用に買った。当時は、液晶が一部消えている中古のデジタルウォッチ(フリマで買った)しか持ってなかったので。入試用ということで、つまりは、時間を見るという実用性を第一に優先して選んだ時計だ。
ちなみに、17歳当時は精神科にも通っておらず、自分がADHDだとはまったく気づいていなかった。しかし、自分が特異な性格である自覚はあったので、今と同じく、条件を考えてから慎重に買い物をする習慣はありました。勉強は一応できていたぶん、普通の優等生ならスムーズにできるはずのことがたまにできないのが自分でも不思議だったので、ある程度意識的に対策を講じていた。もちろん、今よりは自分の性質に対する理解も浅かったし、人生の解像度は全般的に低めでした。二度と戻りたくはないですね。
当時漠然と念頭に置いていた条件を、改めて明確に言語化してみると、以下のようになります。
①デジタルではなくアナログ。ちらっと横目で見たときに直感的に時間を把握できるように。
時間を直感的に把握できるのはアナログだということで条件に入れた。また、デザイン的にもアナログが好み(これは単なる個人的趣味)。実用性重視とはいえ、大学に入ってからもずっと使うつもりだったので、デザイン性も譲れない。
②文字盤が見やすい。数字はアラビア数字で、60秒の刻みも全部ついている。
一分一秒を争う入試で使うので、分数や秒数がきちんと目盛りで示されているやつがよかった。
▼こういう、無地のオシャレ文字盤は絶対NGです。
▼1~12の目盛りだけじゃなくて秒数も刻んでほしい。
▼そうそう、こういう文字盤のやつがいい。
③秒針のチクタク音が聞こえない
当たり前だと思うかもしれませんが、ドンキで売ってるような激安時計は、秒針の音がアホみたいに大きかったりします。聴覚過敏傾向のある発達障害者は絶対に選んではいけない。
④革バンドより素早くワンタッチ着脱できるステンレスバンド
ズボンのベルトみたいな、革に鳩目が開いていて金属の部品を通すやつじゃなくて、ワンアクションでパチッと留められるステンレスバンドがよかった。これは、(当時は意識していなかったものの)ADHDには特におすすめの条件です。ワンアクションでアクセスできないものをADHDが継続して使うのは難しいと思ったほうがいい。ADHDは、少しでも精神的負担に感じたら使わなくなりがち。
▼左がステンレスバンド、右が革バンド。
⑤電池交換不要のソーラー充電式
入試で使うので万一にも電池切れしない、ソーラー充電式がよかった。こちらもADHDにはおすすめの条件です。腕時計に限らず、メンテナンス不要はADHDの味方。こまめにメンテするのが難しいなら、多少高いお金を払ってでもメンテナンスフリーの製品を選ぼう。
⑥日常生活防水
ADHDなら、うっかり傘を忘れたりしてびしょぬれになるリスクを考慮しておいたほうがいい。17歳当時のわたしは今よりも病んでいて、傘を持つ贅沢(?)を自分に許す自己肯定感がなかったので、しょっちゅうずぶ濡れになっていました。
⑦日付表示機能は要らないが、ついていてもよい(どうせ調節が面倒で使わなくなるのでどうでもいい)
カレンダーがついている腕時計もありますが、アナログの場合は毎月調節しなきゃいけないのでどうせ使いません。日付はスマホで確認しよう。
▼こういうやつね。
⑧デザインは、服を選ばない、シンプルでスタイリッシュなもの。
何本も腕時計を買うお金はないので、これ一本でどんなシチュエーションでもまかなえるようなオーソドックスなものがよかった。ムーンフェイズやワールドタイムなど余計な文字盤装飾は不要。金属部分は銀色がいい(これは単なる個人的趣味)。
なお、ADHD目線から補足するならば、そもそも腕時計をつける・参照するという習慣を定着させるためにも、実用性一辺倒ではない、ある程度おしゃれで気に入った時計であることは大事だと思います。気に入っていれば自然とつけるし、見るようになる。脳の動機付け機能に不全があるADHDだからこそ、これが素敵!これをつけたい!というときめきは大事だと思います。
以上、8つの条件を念頭に置いて腕時計屋さんに行きました。改めてまとめると次のようになる。
①デジタルではなくアナログ。ちらっと横目で見たときに直感的に時間を把握できるように。
②文字盤が見やすい。数字はアラビア数字で、60秒の刻みも全部ついている。
③秒針のチクタク音が聞こえない
④革バンドより素早くワンタッチ着脱できるステンレスバンド
⑤電池交換不要のソーラー充電式
⑥日用生活防水
⑦日付表示機能は要らないが、ついていてもよい(どうせ調節が面倒で使わなくなるのでどうでもいい)
⑧デザインは、服を選ばない、シンプルでスタイリッシュなもの。
その結果選ばれたのが、CITIZENのSHAREX SXA31-0084 スタンダードソーラーテックモデルだったのでした。
公式サイト シチズンウオッチ オフィシャルサイト [CITIZEN-シチズン腕時計]
買ったのは数年前なので、バージョンとかが違うかもしれませんが、多分これです。
ブランドイメージとか身の丈(?)とかムーブメントの種類とかは、あんまり気にしていません。メンズかレディースかユニセックスかもこだわらない。一般的にはメンズのほうが文字盤が大きくて分厚いですが、メーカーによっても違うし、腕につけたときのバランスで決めればいいと思う。
3.ADHDの腕時計(2) ファッション性重視のやつ
さて、わたしの2本目の腕時計は、ISSEY MIYAKE Uのno.15だ。
1本目の腕時計に不満はないが、もう少しファッション性の高いおしゃれな腕時計も欲しいと思っていたところ、2020年1月に発売されて一目惚れしたので購入に至りました。一目惚れとはいえ、念頭に置いていた条件とはちゃんと合致したのでよかった。
条件は以下の通り。2本目なので、ファッション性を重視して、上記の8つの条件よりは多少緩いです。とはいえ、ADHDが使うことには変わりないので、使いやすさに関わる重大な項目は譲れない。どこまで妥協できるかは、個人の特性とか使い方とかによると思います。一例として参考にしてください。
①デジタルではなくアナログ。ちらっと横目で見たときに直感的に時間を把握できるように。
わたしは、時間はスマホではなく腕時計で確認する派なので、おしゃれ時計とはいえただのブレスレット扱いする気はない。ちゃんと、一目見て時間を把握できるようにしておきたいです。
②文字盤が見やすい。とはいえ、秒数の目盛りはなくてもいい。数字はローマ数字のほうがおしゃれ。
文字盤の見やすさはやはり重視したいが、センター試験みたいなシビアな場で使うわけではないので、さすがに60秒刻みの目盛りはなくていい。数字も、アラビア数字でなくてもいい。
③秒針のチクタク音が聞こえない
これは相変わらず重視します。ちなみに、よっぽど心配な人はスイープ運針(チクタクせずに、流れるようにスーッと秒針が動くやつ)を選べば確実ですが、個人的にはそこまでしなくてもいいかなと思ってます。ある程度ちゃんとした時計なら、文字盤に耳を押しつけない限り音は聞こえないので。
④バンドはワンタッチ着脱でなくても可。革でもOK。
ここは悩みましたが、ステンレスバンド限定にしてしまうと選択肢がかなり減るので妥協しました。人によっては、妥協しないほうがいい部分かもしれません。各自の気質と相談してください。
⑤ソーラー充電式でなくてもいい。動かなくなったら頑張って電池交換に行こう
ここも悩みましたが、ソーラー充電式だけにすると選択肢が極端に少なくなるので諦めました。
⑥日常生活防水
ちゃんとした腕時計はだいたい最低限の防水機能がついていますが、一応。
⑦日付表示機能は要らないが、ついていてもよい(どうせ調節が面倒で使わなくなるのでどうでもいい)
こちらも、実用性重視のときの条件と同じです。どうせ使わないのでどっちでもいい。
⑧デザインは、バイブスに従って。
おしゃれ用腕時計なので、ここは感性に従います。とはいえ、わたしの個人的な趣味として、あまり装飾過多な時計は好きではないので、割とシンプル志向かも。
以上8つ。改めてまとめると次のようになる。
①デジタルではなくアナログ。ちらっと横目で見たときに直感的に時間を把握できるように。
②文字盤が見やすい。とはいえ、秒数の目盛りはなくてもいい。数字はローマ数字のほうがおしゃれ。
③秒針のチクタク音が聞こえない
④バンドはワンタッチ着脱でなくても可。革でもOK。
⑤ソーラー充電式でなくてもいい。動かなくなったら頑張って電池交換に行こう
⑥日常生活防水
⑦日付表示機能は要らないが、ついていてもよい(どうせ調節が面倒で使わなくなるのでどうでもいい)
⑧デザインは、バイブスに従って。
ISSEY MIYAKE Uのno.15は、これらの条件に合致していました。
アナログで、1から12までの目盛りがあり、ローマ数字。秒針は静か。バンドは革をチョイス(ステンレスのモデルもありましたが、デザインが気に入らなかった)。電池は交換式。日常生活防水。余計な機能はなし。
ミニマムでシャープで、力強くも優美にも見えるデザインが気に入りました。公式の説明によると、“自動車のボディのような曲面処理を施したガラス面が神秘的な弧を描き、文字盤にローマ数字を配置した端正な表情が印象的なモデル” とのこと。それな~~わかる~~~(語彙力無し)
公式サイト U Designed by Satoshi Wada | ISSEY MIYAKE ONLINE STORE−イッセイ ミヤケ公式通販
デザイナーである和田智氏のインタビューはこちら。
シンプルで端正な「U(ユー)」は、"美しい普通"を追求したのだという。3針モデルで、カレンダーもなし。余白を生かしており、さらにはダイヤルやガラス面のカーブで、神秘的な揺らぎを作っている。
「ハイテクやAIの時代だからこそ、"人間が感じ得る力"を大切にしたい。情緒的な感情を持っているのは人間だけです。ケースのサイドを絞り込んだ形状は、製造過程において苦労しました。"美しい"は100年たっても古くなりません。しかし"新しい"はあっという間に古くなってしまう。技術力が進歩し、驚きやインパクトが要求される時代になっています。だからこそ、カーデザイナー=造形家として、そういう時代に対して、どうやって対処していくかを強く意識しています」
デザインのレビューは、こちらの記事が詳しいです。
https://www.tictac-web.com/column&feature/detail/?id=613
文字盤を覆うガラスの表情も、角度によって変わっていきます。縁に向かって緩やかな曲面で研削されているけれど、文字盤の視認性に関わる大きな面積は平面に仕上げられています。コップになみなみと注がれた水が、表面張力でギリギリ溢れず均衡を保っているようなイメージ。
以上、今のわたしの腕時計と、購入の経緯でした。
億万長者ではないわたしたちは、限られた予算内で最適な買い物をしなければなりません。ADHDなどの、世間一般的なスタンダードとは違う性質を持っているのであれば、それに合わせた購買基準が必要です。これからもわたしは、ADHDである自分にとっても快適に使えるか?を常に念頭に置いて買い物をするつもりだ。その思考回路をこうして共有することで、誰かの参考になれば幸いです。
【追記】腕時計の着画について。
腕時計の接写、思ったより腕毛が目立ってるな。オーソドックスな “映え” の作法を踏襲した写真に、本来あって当然なのに「なかったこと」にされがちな要素を落とし込んでいきたいという気持ちがあるので、肌の画像はほとんど加工していません。 https://t.co/2l7qNbsDca
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年5月27日
デパコスにコンサータを映り込ませる写真にこだわるのも然りで、百貨店の美しい化粧品フロアにも、わたしのような人間は「いる」んです。なにもしなかったら「標準」「健常」の枠に強制的に入らされるのだから、目に見える形で示していく。 pic.twitter.com/srmgGgk4Dw
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年5月27日
当ブログのヘッダー画像は、前代未聞の“映えサータ”でお送りしております。精神的弱者でも実践できる、セルフケアや美容のコツをお届け。
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2020年3月22日
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