敏感肌ADHDが生活を試みる

For A Better Tomorrow

LGBTQプライドフラッグは誰のためのものか、あるいはマイノリティが「思想強い人」になることのリスクの話

 

 

 

ライフログが好きなので、そろそろバッグの中身紹介記事の続編を書こうと思って、持ち物をちまちま写真に撮っている。そんなとき自分のタブレットを見て、こんな風にデコることができているのはわたしが恵まれた立場にいるからだなとつくづく思った。

 

 

LGBTQプライドフラッグをモチーフとしたステッカーの類いは結局、当事者であると「誤解」されても困らない立場の人のためのものだと思っている。多くはアライか、真実当事者であったとしても可視化されることによって立場が危うくなりにくい、あるいは「説明」が可能な限られた人のための。わたしはホルモン治療をしているが、女性として生まれたジェンダークィアであるので、たとえトランスジェンダーの当事者だと見なされたとしても、男性として生まれたクィアである人よりも侵襲的な視線に晒されるリスクは少ない。実際に「詰問」されたとしても、身分証の性別欄を見せることもできる。男性として生まれたクィアであったなら、当事者であると思われることで女子トイレや公衆風呂への侵入者と見なされて排斥・攻撃されるリスクは跳ね上がるだろう。

そんなわたしでも、普段遣いするのは見ての通り、文字が入っていないステッカーである。たとえばTrans Rights Are Human Rights(トランスの権利は人権)と、はっきり文字が描いてあるものは意識的に避けている。水色とピンクと白色の旗の意味は知らなくてもトランスは知っている人を想定したときに、さまざまなリスクやコストを考えると、文字つきステッカーをつけることはできない。

 

 

 

 

この社会でなにかを「表明」することのリスクは常に不均衡だ。セクシュアルマイノリティ関係の表明に限った話ではない。直接の当事者であると見なされる可能性がごく低い場合、たとえば日系日本人らしい見た目の人間が日本においてパレスチナ解放のステッカーを身につける場合においても同様である。日本人と見なされることで「当事者」と思われることはないが、その人がなんらかのマイノリティであった場合、会社などですでに「(会社側から見たときのいわゆる)不適合」を起こしている可能性は優位に高い。すでになんらかの「配慮」を申請して認可されたりあるいは却下されたり、「面倒」「手間」「コスト」をかけさせたりしていて、「腫れ物」「厄介者」と見なされているかもしれない。そんな立場で、その上さらに「思想が強い人」と見なされ得る表明をするにあたってのリスクは、マジョリティとは比較にならない。このような不均衡は会社でなくてもあらゆる場で起こり得る。ある人にとってはセーフティな場と感じられてもべつの人にとってはそうではないこともあるだろう。

 

 

 

 

不均衡は「表明」自体に限った話ではない。そもそも表明に至るまでに要するコストも均等ではない。わたしがイスラエル軍によるパレスチナ人虐殺問題や、寄付できるコスメの記事で紹介してきたような諸問題に関心を払うことができるのは、心身にある程度の余裕があるからである。余裕があるのは、衣食住が満ちているからである(その衣食住は同居人である先生の経済力でまかなわれている)。マイノリティが、経済力が乏しく、衣食住が厳しく、心身の余裕がない状態に陥りやすいことは言うまでもないだろう。

 

 

 

「表明」の目的はさまざまあるが、一つには他者の引っかかりとなって問題への関心の輪を広げることであろう。つまりある程度は「異物」になる必要がある。それはわたしにはできないことだ。この社会において、わたしの表明は常に「仄めかし」に留まる。それでも、わたしの表明は自分自身を奮い立たせるためのものであるとして、意義を見い出しているところである。

虹色のステッカーは、エンパワメントされるメッセージつきのピンバッジは、SNSのハッシュタグは、あなたの「表明」は、なんのためのものか。誰のためのものか。わたしはマイノリティとして人に問い、マジョリティとして自分に問うている。

 

 

 

「NO PRIDE IN GENOCIDE」「Free PALESTINE」のステッカーは、アーティストのsuper-KIKIさんにいただきました。ありがとうございます。

 

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by super-KIKI (@super.kiki)

www.instagram.com

 

 

 

わたしが持っているステッカーやグッズの記録はこちら。

 

www.infernalbunny.com

 

www.infernalbunny.com

 

かっこいいステッカーがたくさんあるおすすめの通販サイトの紹介はこちらから。

 

www.infernalbunny.com