少し前の記事に引き続き、急死した友人について書いています。そういう話を読みたくない人は読まないでください。
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1.
生前の彼を知っていた方と電話する機会を得た。泣かせていただくことになるかもしれないと思っていたのだが、通話相手の彼が早々に涙したことで、わたしは泣くタイミングを逃してしまった。
2.
黒薔薇の花束を買った。彼に似合う花だと思ったから。天然の黒薔薇も存在するらしいが、わたしが入手した薔薇は、深紅の薔薇に濃紺の色素を吸わせて人工的に作られたものだった。生けていると、水が群青色に染まった。当たり前の現象ではあるが、神秘的に感じた。
3.
わたしの誕生日が来て、過ぎていった。選挙権がもらえる年齢になったわけでもなし、酒が飲める年齢になったわけでもなし、「アラサー」とかいうレッテルを貼っていただくにはまだ早く、特別なことはなにもない。平凡な20代前半の、平凡な一年がまた過ぎていったというだけのことだ。
4.
2週間と少しが経った。
5.
彼は亡くなったままだ。
6.
日々の生活の、ふとした瞬間に、彼のことを思い出す。
7.
それでもわたしの生活は続いてしまう。「人生」は楽しいことも多いけれど、「生活」は常に地獄として立ちはだかっている。
8.
「生活」はいつだって苦しいものだ。であれば、地獄の一部に好きな人が加わってくれたのだと思えば、嬉しいことなのかもしれない。
9.
記憶とともに、わたしはこれからも生きていく。
10.
よりよい生を試みていく。生きている間は、そうしなければならないのだから。
【追記】その後、この薔薇はポプリになりました。