敏感肌ADHDが生活を試みる

For A Better Tomorrow

追悼されない選択に寄せて

 

 

 

女性ではないという自己認識から、わたしのクィアネスははじまった。典型的な女性としての性分化をし、女性と判断される容姿、女性と判断される声をしていてなお、女性という与えられた枠組みに帰属意識を見い出すことができなかった。この点においてわたしはトランスであった。

枠組みに帰属できなかった先の在り方は人それぞれ違う。大きくは、帰属意識を持つことができないままに与えられた枠組みの中に留まって生きる者と、リスクを賭して脱出を試みる者に二分されるであろう。さらには、脱出した先にある、「異性」というもう片方の枠組みに帰属意識を持つかどうかでも二分されるかもしれない。言うまでもなくこれらのおおまかな要素をもってしても、トランスの実存を4象限的に図式化することはできない。この社会において、枠組みは、アイデンティティであるより先に生き方であるからだ。ここにトランスの生の難しさがある。現状、日常生活のほとんどすべての局面において、われらには二つの枠組みに基づいた二つの生き方しか許されていない。男性でないなら女性であるとされ、女性でないなら男性であるとされる。多様性はあくまでその二つの枠組みの中でのみ許される。生まれの枠組みから脱出したら、その先にあるのは否応なく「反対」の枠組みだ。われらは、生存戦略として、どちらの枠組みで生きるかを選ばされる。職場で、学校で、生まれの家庭で、現在の家庭で、趣味のコミュニティで、出先のトイレで、公衆浴場で、その他無限に細分化され得るありとあらゆる場で、われらは目まぐるしく二択を迫られる。その上で、まるで選択などしていないかのように振る舞うことも同時に強いられる。迫られ、急かされ、やむにやまれず、消去法で、生存戦略として選んだ不本意な枠組みであったとしても、アイデンティティにぴったり沿う天与の枠組みであるかのように振る舞うことを求められる。枠組みの狭苦しさへの反発、あるいは枠組みが存在すること自体への疑問こそあれ、多くの者は選んだ枠組みの範囲内で生を進めていく中で、トランスだけが戸惑い立ち尽くし、一歩でも動けば擦られ、ぶつかり、血を流す。

われらは通常、他者の選択を知ることができない。本日11月20日、すなわちトランスジェンダー追悼の日(Transgender Day of Remembrance)においてさえ、われらが思い返すことができるのは、われらの前に偶然あるいは必然によって立ち現れたほんの一部の魂のみである。わたしは、医療的措置により、生まれの容姿と声を僅かに変化させた。その上で、もう片方の枠組みに帰属意識はないため、日常のほとんどすべてを生まれの枠組みの中で過ごすことを生存戦略として選択した。わたしの大切な人たちは、わたしが選択を成したことを知っている。おおむね生まれの枠組みに留まってはいても、ここにおいてわたしの尊厳は守られている。わたしは幸運であった。

知らないものは思えない。その選択を、その葛藤を認識されることがないまま今生を去った無数の魂たちに思いを馳せる方法は、未だ発明されていない。だからせめて、われらの前に立ち現れた魂に向けるのと同じだけの哀悼を、一見なにもないように感じてしまう虚空の彼方へも投げかける、一般的に祈りと呼ばれる行為をもって、今日という日の終わりとしたい。

 

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トランスジェンダーフラッグカラーのネイルアートのレシピ

 

 

トランスジェンダープライドフラッグは水色・ピンク・白の3色からなる。いずれも明度の高い薄い色なので、たとえば過去記事で紹介したモンドリアンネイル山口小夜子ネイルのような、くっきりしたコントラストがあってこそ映える直線的な柄を描くのには向いていない。そこで今回は、不定形の模様を描くことにした。ネイルズインク プラントパワー フリータイムイズミータイムを下地に、レブロン ウルトラHDスナップ 004 ブルーマイマインドキュアバザー ネイルカラー 24 マカロンをランダムに乗せた。中央にはオペークドットクリップ ボーテドオペーク ヴィーガンネイルポリッシュ ゴールドラメを乗せて華やかさを出すとともに、水色とピンクの境目を曖昧にして、「ガタガタ」ではなく「あえてやっているランダム」感を演出した。

 

 

奇しくも全部ヴィーガンネイルでした。4本とも下記記事にてレビューしています。

 

www.infernalbunny.com