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ヴィーガンコスメ探訪(3)中国コスメと動物実験の現状

 

 

 

ヴィーガン(vegan)とは、動物性成分を摂取しない主義およびそのような主義の人を指す。多くは食生活において適用されるが、皮革製品や動物実験を行った製品を利用しないなど、生活全般にも適用される思想である。
ヴィーガンに、偽善的である・自己満足に溺れている・押しつけがましいなどの悪いイメージを持っている人は少なくないことと思う。わたしも昔はそうだった。しかし今わたしが理解している限りでは、ヴィーガンの思想は単なる動物愛護に留まらない、脱搾取を最終目標とした包括的なものである。肉食は植物食に比べて環境への負荷が極めて大きいことはデータとして証明されており、動物性成分を避けることは「動物が可哀想」といった感情の問題ではなく、持続可能なよりよい社会を作るための合理的な選択たり得るのである。たとえば、地球温暖化の原因の一つは家畜の放出するメタンガスや食肉処理過程で生じる大気汚染であり、一部地域においては水資源の不足や海水面の上昇による土地の減少という形ですでに問題化している。環境保護は遠い未来の話ではなく、今を生きる人々の生活を左右する緊急の課題なのだ。

 

もちろん、ヴィーガンであるためには栄養面その他の代替物にアクセスできる必要があり、ある程度の金銭的・精神的余裕は必須である。ヴィーガン製品は一般的に高額で、ヴィーガン食材を扱うスーパーやレストランも多くは都会にしかない。富裕層の偽善であるとする批判・反感はこのようなイメージからくるのだろう。しかし、事実として、われわれが動物食を今のペースで続けていくことは不可能なのだ。であれば、富裕層ではないわたしにしても、ローコストで始められる部分だけでもヴィーガン的ライフスタイルを採り入れることには意義があると思うわけです。

精神障害者には珍しくないことだが、わたしは規則正しい食事が不得手である。ほぼ毎日抑鬱がある中で、限られた精神的コストを使って自炊をしている。食事に今以上のコストをかけることは、現状では難しい。だが、わたしの自発的な興味の対象である──つまり、精神的コストを割くことが可能である──美容の分野でなら、ヴィーガン製品にお金を落として支援し、生活に採り入れていくことは不可能ではない。よって、しばらく前から、ヴィーガンコスメをぼちぼち買うようにしている。せっかくなので、情報をブログにまとめていこうと思います。

過去のレビューはこちら。

 

www.infernalbunny.com

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今回はコスメレビューではなく、中国コスメにおける動物実験の実施状況について調べたことをまとめました。コスメ選びの参考にしてください。

 

サムネイルは、昔ふれあい広場的な場所でふれあったヒヨコです。

 

 

 

 

 

1.ヴィーガンコスメと動物実験

わたしの理解している限りでは、ヴィーガンの思想の目的は環境保護動物愛護の2つである。環境保護の重要性については上記で述べた通りだ。そしてもう一つ重要とされるのが動物愛護である。動物性食品を食べることは当然その動物を殺傷することなので、動物の権利を鑑みて倫理的に避けるべきとされる。人間が動物を殺傷するのは一つには食肉目的だが、化粧品や医薬品の分野では動物実験の過程で殺傷されることも多い。動物実験とはヒトに対して危険が生じる可能性のある化学物質や機器を、ヒトに適用する前にまずウサギやモルモットなどの動物に対して用いて実験することで、当該の動物にとっては当然苦痛である。ヴィーガンコスメは、動物性成分を用いていないのに加えて、動物を殺傷する動物実験も行わないことを旨としている。ヴィーガンコスメは、特記していなくても多くの場合が動物実験不実施、クルエルティフリー(cruelty free)である(例外については後述)。

 

なお、なんからの動物性成分を使用しているなどでヴィーガンコスメとは謳っていないがクルエルティフリーではあるコスメも存在する。過去記事でもいくつかレビューしてきた。

 

www.infernalbunny.com

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わたしが今までヴィーガンコスメを調べてきた感じでいうと、化粧品においては、保湿成分のミツロウ(ハチ由来)やラメとして使われる貝殻粉末(カイ由来)で引っかかることが多いように思う。

そのほか、コスメにありがちな動物性成分は以下のようなものがある。

 

・馬油(ウマ由来)

・真珠(アコヤガイ由来)

・コラーゲン(魚・ブタ由来)

・プラセンタ(ウマ・ブタ由来)

・スクワラン(サメ由来)

・ハチミツ(ハチ由来)

・加水分解シルク(カイコ由来)

・チロシン(鳥の羽毛由来)

・アナツバメ巣発酵液(アナツバメ由来)

・牛乳由来の保湿成分(ウシ由来)

※ただし、プラセンタはブタやウマを殺傷することなく採取が可能なため、必ずしもヴィーガンの理念に反するとは限らない。

 

わたしの個人的な感情でいうと、動物愛護にまではまだ関心が湧かないのが正直なところである。しかしもちろん、動物実験をしなくて済むのならしないに越したことはないだろうとは思う。

 

【例外:動物実験をした上でヴィーガンコスメを謳うケース】

コスメ自体に動物性成分が含まれていなくても、動物実験を行っていれば製造過程で動物を搾取したことになるので、通常それはヴィーガンコスメとは呼ばれない。一般的な解釈によると、クルエルティフリーだがヴィーガンコスメではないコスメは存在するが、ヴィーガンコスメであればそのコスメは同時にクルエルティフリーでもあるということになる。しかし厳密に言うと、動物実験を行った上で動物性成分不使用のコスメを作ってヴィーガンコスメと謳って販売した例はあるようだ(検索したら出てきます。ソースが不明瞭だったのでここに貼ることはしないでおく)。ヴィーガンにせよクルエルティフリーにせよ、透明性が確保されていないことも多い。本当に正確なところは消費者が個別に調べたり問い合わせたりするしかないのが現状だ。

 

当ブログでは、よりよい生活を持続していくために、厳密性よりも消費者であるわたしのキャパシティ温存を優先している。2023年10月現在のわたしはコスメ選びに思考コストを割くことが可能な状態だが、生活状況や精神状態の変化によってはそれができなくなる可能性も大いにある。ブログに掲載する情報にはできる限り正確を期すが、あくまで厳密性よりも自分優先の方針であることはご承知おきください。

 

 

 

2.中国コスメと動物実験

さて、そんな動物実験だが、中国では長らく必須だった。中国で売る化粧品には動物実験が義務づけられていたのである。しかし近年、中国発のヴィーガンコスメブランドも出てきている。矛盾しているのではないかと思って調べたところ、ここ数年で規制が変わったことを知った。自分用メモとして、わたしが調べたことを共有していく。以下で言う「中国」とは中華人民共和国の大陸部(本土)を指す(台湾や特別行政区については別項目にて触れます)。

 

前提として、中国では化粧品は特殊用途化粧品と一般化粧品の2つに分類される。特殊用途化粧品(特殊化妆品、specialised cosmetics)とは、ニキビ治療・美白・エイジングケアなど特定の効果効能や新しい効果効能を謳った化粧品のことである。日本でいう医薬部外品に近いと思われる(医薬部外品は日本独自のカテゴリー)。ヘアカラー剤・パーマ液・育毛剤、日焼け止め、デオドラント、子ども向けの製品も特殊用途化粧品である。対する一般化粧品(普通化妆品、non-specialised cosmetics)とは、特殊用途化粧品ではない化粧品のことである。マスカラやチークなどのメイクアップ化粧品全般、特定の効果効能を謳わないスキンケア用品、シャンプー、ネイルカラー・ネイルケア、フレグランスなどが一般化粧品にあたる。

かつて中国では、外国から輸入する化粧品は一般化粧品・特殊用途化粧品ともに動物実験が必須だった。

中国国内で販売するために必要な動物実験は目の炎症に対するテスト1種、肌の炎症に対するテスト2種で、それぞれでウサギ3匹が犠牲になる。2013年の実績によると、年間で12万匹が動物実験のために使用される計算である。

 

中国国内生産の化粧品も長らく動物実験必須だったが、2014年6月、国内生産の一般化粧品および、越境ECなどオンラインで販売される一般化粧品・特殊用途化粧品のうち一定の要件を満たすものに関しては動物実験義務づけが解除された。

さらに2019年12月には、クルエルティフリー認証である「リーピングバニー」認証を得た化粧品ブランド7つが、クルエルティフリーのまま中国で販売することを許可された。

 

 

 

そんな中、2021年3月、国家食品薬品監督管理局(National Medical Products Administration、NMPA)が「化粧品の動物実験に関する条件の緩和」を発表する。これにより、2021年5月1日付で輸入化粧品の動物実験義務化が撤廃された。対象は一般化粧品で、動物実験を免除する代わりに、安全検査の実施や製造管理・品質管理に関する書類の提出が必須となる。なお、特殊用途化粧品は引き続き動物実験が必要である。中国に輸入される化粧品は大半が一般化粧品である。

 

この法改正により、これまで動物実験義務化で進出を断念した化粧品ブランドが中国市場に参入することが可能になった。中国のビューティ市場はCOVID-19流行による低迷からV字回復を達成し、成長し続けているため、多くの企業にとってビジネスチャンスになる。2020年12月付のゴールドマン・サックス(GOLDMAN SACHS)の調査によると、中国本土の美容市場は19年において4250億人民元(約6兆8000億円)にのぼるとされている。また同社は中国国内の化粧品消費率は19〜25年で12%伸張し、市場規模は1兆人民元(約16兆円)にまで拡大すると予測する。

中国国内においても、ECやSNS戦略に長けた振興ブランドが老舗を抜いてトップ企業に躍り出るなど、ビューティ市場は活況を呈している。グローバル展開を狙う中国ブランドが、欧米や中東のユーザーを意識してヴィーガン&クルエルティフリーで展開することも増えており、中国発のヴィーガンコスメブランドは多い。

 

以上は中国本土の状況であり、香港・マカオ・台湾では動物実験を行わずに化粧品の輸入・販売が可能である。

 

 

 

3.まとめ

 

2023年10月時点での状況

 

●中国国内生産の一般化粧品は現在では動物実験が免除されているので、「中国発ヴィーガンコスメ」は存在する。

 

●輸入化粧品は、国内実店舗で販売されるものは一般化粧品に限り動物実験が免除される。越境ECなどオンライン販売のものは、一般化粧品・特殊用途化粧品ともに一定の要件を満たせば動物実験が免除される。

 

●国内生産の特殊用途化粧品と、輸入化粧品のうち特殊用途化粧品と要件を満たせない一般化粧品は、現在も動物実験が義務づけられている。

 

●香港・マカオ・台湾では動物実験要件は課されていない。

 

 

 

【参考文献】

中国の化粧品のための動物実験、規制緩和へ - アニマルライツセンター

中国当局 化粧品のための動物実験 廃止に向けた方針を発表|ラッシュジャパン合同会社のプレスリリース

中国 輸入された普通化粧品は動物試験を免除! | ChemLinked

中国が輸入化粧品の一部を動物実験免除へ - WWDJAPAN

中国が輸入化粧品の動物実験義務化を撤廃 - WWDJAPAN

キラッとギャラクシーな中華ヴィーガンコスメ | なんかなんか通信

最新トレンド【中国ヴィーガンコスメ特集】動物実験をしないクルエルティフリーが人気拡大中

Be Cruelty Free China – ZEESEA

 

 

中国のヴィーガンコスメブランドのまとめはこちら。

 

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