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亡くなった友人の思い出をイメージしたアクセサリーを オーダーした話。 #新星急報社

 

 

 

亡くなった友人の思い出を、フルオーダーのイメージアクセサリーという形で具現化してきました。

この記事は、わたしがそのようなオーダーをしようと思うに至った経緯と、アクセサリー作家様とのやり取りの記録です。自死やメンタルヘルスに関する内容を含むので、閲覧の際はご自身の状態と相談の上でお願いいたします。

 

 

 

 

1.友人のこと

友人の本名を書くことはしません。一つにはプライバシーを守るためですし、もう一つには、彼は親に与えられた名を厭い、自らの手で自らを名づけ直そうとしていたからです。ですからここでも、彼が自らの意志で定めた名であるnai_inhexと呼ぶことにします。

まずは、nai_inhexの文章と、彼の葬儀のあとにわたしが書いた文章を読んでいただければと思います。

 

nai-inhex.hatenablog.com

 

www.infernalbunny.com

 

読んでいただけましたか。

わたしはnai_inhexが亡くなる前から、彼のことを文章にしてこのブログで公開してきました。亡くなってからも上記のように「ネタ」にし、今またこうして「ネタ」にしようとしています。なぜなら、できるだけ多くの方に彼のことを知っていただき、彼が戦いそして敗北したこの社会の構造的非情に思いを馳せ、戦いを引き継いでいただきたいからです。彼への手向けと嘯いて誤魔化すつもりはありません。死者のためではなく、この社会に残された生者であるわたし個人の意志として、わたしは彼のことを書き続けています。エゴイスティックである、冒涜であるという批判は謹んで受け止めます。

 

今回、彼をイメージしたアクセサリーをオーダーしようと思い立ったのは、今も変わらず彼を愛しその不在に心を痛めている者の一人として、思い出を具現化して心の慰めにしたかったからです。しかし、その完成品を彼の人生と紐づけてインターネットに公開するのは、上記の通り、できるだけ多くの方に彼を憶えていてほしいからです。信頼できるアクセサリー作家様にお願いして作っていただいた美しいアクセサリーの画像的インパクトを借りて、改めてお願いします。nai_inhexを憶えていてください。

 

 

 

2.わたしから見た彼のこと

制作は、過去に二度ピアスを作っていただいた新星急報社様にお願いしました。

 

shinse.thebase.in

 

 

都内各所で不定期開催されている「対面オーダー」のコースで、わたしから見たnai_inhexのことを語り、「イメージアクセサリー」として解釈に沿うパーツを提案していただいた形です。

イメージアクセサリーの作り方については、下記のネット記事にも詳しいです。二次元や三次元の「推し」のキャラクターをイメージしてオーダーされる方が多いようです。

 

nlab.itmedia.co.jp

 

アクセサリー形状は、彼が読書家であったことからブックマーカー(栞)でお願いしました。金属の棒に飾りがぶら下がった形状のものです。実用性は低いとのことですが、ペン立てに飾ったりして楽しむこともできそうです。

 

 

イメージソースとしては、nai_inhexのはてなブログ(冒頭で引用した記事)を印刷してお渡ししました。対面オーダー会のルールとして、キャラクター説明(今回はキャラクターではありませんが)は15分程度で済ませる必要がありました。はてなブログはそれだけで十分濃い内容なので、読んでいただいた上で、彼の人柄についてわたしからは簡潔に2点のみお伝えしました。まず1点目は、彼が戦いの人であったこと。戦いの相手は、彼のブログに書いてある通り、幼少期においては虐待してくる親であり、長じては一般的とされるレールを外れた人間の生存が困難になる社会構造であり、絶えずのしかかってくる抑鬱やトラウマでした。そして2点目は、自己責任論の有害さを人一倍思い知っていたはずなのに、それを内面化して他者を酷薄にジャッジするような矛盾と葛藤を抱えた人であったことです。彼は、親から金銭的援助を受けている学生への怨嗟を隠そうともしていませんでした。親に経済的に依存している者が家庭環境に悩んでいても、その悩みを軽んずるようなことを何度も口にしていました。生家で肉体的・精神的に暴力を受けてきたのはもちろん、食事や衣服すら与えられないような極めて苛酷な環境をサバイブしてきたという自負が、彼を頑なにしていました。

以上2点を、わたしから見たnai_inhexの印象深い点としてお伝えしました。友人として思い出深い個別のエピソードはたくさんありますが、きりがないので省きました。キャラクターではなくて生身の人間なので、彼の外見的特徴に言及するのも意味がないと判断して控えました。

 

 

 

3.提案していただいたこと

わたしの話を聞いた上で、新星急報社様にはいくつかのパーツをご提案いただきました。

まず、スワロフスキーのガラスビーズ2種類。どちらも複雑なカッティングで強く輝き、nai_inhexの矛盾と葛藤に満ちた複雑な内面を表すかのように、何色とも断言できない色をしています。どちらも角度によって深い青や緑や赤に変化しますが、1つは比較的透明感のある明るい印象、もう1つは黒色も多く入っており、重油溜まりのような重々しい印象を受けました。どちらも魅力的ですが、nai_inhexの人間的魅力の結晶の比喩として、明るく輝くほうを選びました。なお、このスワロフスキーにはアクアマリンボルケーノという名前がついており、後述の溶岩のパーツとの相性もいいことを教えていただきました。

 

次に、黒系のパーツを集めた小箱から、溶岩を切り出したパーツと、ラフなカットのオニキスと、大粒のカンババジャスパーをご提案いただきました。

溶岩は磨かれていないもので、表面は自然のままに素焼きのようなざらついた質感です。nai_inhexが抱いていた怒りのパワーを表現できるのではないかとのことでした。

オニキスは、表面は研磨されておりツルツルですが、形は荒々しく不規則です。オニキスはギリシャ語で「爪」に由来しており、彼の持っていた意志力や、爪痕を残すことに繋がるのではないかとのことでした。

カンババジャスパーという石は初めて知りました。含有物によって模様が違ってくる石で、今あるものには蛇紋岩という石が含まれており豹柄のような有機的な模様を描いています。軽い石よりは重量感のあるものをということでご提案いただきました。

さらに、コマが不規則な形のチェーンをアクセントとして出していただきました。

 

 

 

全体として、何色というわけでもなく、形もはっきりしない、でも存在感のある重たいものを目指すのはどうかとご提案いただき、その方向で進めることになりました。

かっこよく、しかしアンバランスで、ちょっと寂しくて、綺麗なところがあるイメージということで、細い輪っかのパーツも提示していただきました。新星急報社さんのイメージもわたしのイメージも、正円ではなくいびつな円ということで一致していました。いろいろ出していただいた末に、一部だけ真っ直ぐで一部だけ捻れた小さな円を、社会状況が違ったら別の生き方があったのに外部の圧力で歪んでしまったものとして提示していただきました。儚さと美しさが混ざったような華奢なパーツで、まさにnai_inhexのイメージ通りだったので採用しました。

 

以上で大まかな形が完成しました。もう少し要素を追加することもできるとのことで、カンババジャスパーの豹柄から連想したこととして、猫派ではなく犬派だったこと、生家で飼っていた黒柴をこよなく愛していたことをお話しました。生家では犬だけが味方で、布団も与えられない中、玄関で犬を抱いて暖を取って寝ていたそうです。そこで、オニキスを真っ黒なものから白色と茶色が混ざったものに変更して黒柴を表現することをご提案いただきました。こちらとしては連想したことを何気なくお話しただけなのにこの発想力……! プロってすごい。

 

以上ですべて決定し、組み立てていただいたブックマーカーがこちらです。

 

ブックマーカー。

ブックマーカーを手に持ったところ。

 

石は上からカンババジャスパー、オニキス、スワロフスキーのアクアマリンボルケーノ、溶岩です。

 

石接写。

 

荒々しく重たい色彩の中で、オニキスに混じる白色と茶色の柴みの愛らしいこと!

 

石接写。

 

なお、梱包の際には、柴犬イメージのクリーム色と薄茶色の薄紙を選んで梱包していただきました。細部まで手厚い!

 

茶色の薄紙。

封筒。

 

 

 

以上、亡くなった友人をアクセサリーにした話でした。

 

ブックマーカーを本棚の本に差したところ。

 

新星急報社様には重たい依頼となり少なからずご負担をおかけしたことと思いますが、素晴らしいものを作ってくださり深く感謝申し上げます。

また、冒頭に書いた通り、死者を冒涜しているというご意見は受け止めますが、新星急報社様は客であるわたしの要望に答えてくださっただけですので、新星急報社様へのご批判はお控えください。

 

 

新星急報社様のウェブショップとインスタグラムはこちらです。

基本のアクセサリー形状はピアス・イヤリング・ネックレス・ブレスレット・チェーンリング・サンキャッチャー・グラスコードであり、ブックマーカーは特殊オーダーとなるため、パーツ在庫確保のため10日以上前の事前連絡必須とのことでした。

 

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過去に書いた新星急報社様のオーダー会レポはこちらから。

 

ピアス。

 

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