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現代書館『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』寄稿のお知らせ&セックストイ「立鳥」使用レポ

 

 

 

【おことわり】

本記事の内容は、わたしが寄稿している同人雑誌『反トランス差別ZINE われらはすでに共にある』が新たに商業出版されることの告知と、寄稿文に登場するセックストイ(オナニーグッズ)である「立鳥」の使用レポです。前半に告知、後半にレポと、章立てして分けているので、自慰や性器の話を避けたい方は前半だけ読んでいただけます。

 

 

 

 

『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』が発売されます

お知らせです。過去に寄稿した同人雑誌『反トランス差別ZINE われらはすでに共にある』が、増補の上新たに商業出版されます。現代書館から『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』のタイトルで、2023年8月23日に1100円で発売予定です。まだお読みでない方はもちろん、すでに読んでくださった方も、改めて手に取っていただければと思います。

増補として、『誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー史』等の著者である吉野靫(よしのゆぎ)さんのエッセイと、『トランス男性によるトランスジェンダー男性学』『埋没した世界─トランスジェンダーふたりの往復書簡』等の著者である周司あきらさんのブックガイドが追加されています。

 

現在公開されている商品情報はこちらです。

 

www.hanmoto.com

 

Amazonでも予約開始しています。

 

 

過去に頒布された物理本は同人雑誌の形態ということもあり、主に都心の限られた店舗でしかお求めいただけませんでした。今回、増補版は商業出版の形で流通しますので、以前よりは入手が容易になるのではないでしょうか。ISBコードつきなので書店や図書館へのリクエストも可能になります。

同人雑誌版にはすでにKindle版も発売されていますが、個人的にはデザインのアクセシビリティに欠陥があると感じており、心からおすすめすることができていませんでした。今回新たに物理本が出て、より多くの方におすすめしやすくなったことを嬉しく思います。トランスジェンダーへの差別的言説が流布されている昨今、当事者や支援者の声を聞く意志のあるあなたに読んでいただきたいです。本というメディアが、完全にバリアフリーではないにせよ金銭さえ払えば平等に開かれているままに、幅広い人たちに手に取っていただければ幸いです。売り上げの一部は同人雑誌版同様、トランスジェンダー支援団体に寄付されます。

 

以上、告知でした。

以下、セックストイのレポです。自慰や性器の話をします。自慰や性器の話以外の話もします。

 

 

 

セックストイ「立鳥」使用レポ

さて、上記のブックレットにわたしは「セックストイと自炊飯」と題して、AFAB*1でテストステロン投与(男性ホルモン治療)を選択したジェンダークィアとしての経験を描いた短いエッセイを寄せている。今回は、文中に登場するそのセックストイ・立鳥(たとり)をレビューしていきます。文中では、セックストイの使用感自体は主旨ではないのでさらっと触れるのみに留めたが、ブログではじっくりしっかり感想を書きたいと思う。
早速やっていきましょう。

 

1.製品概要

立鳥は、ToyCodという会社から販売されているセックストイである。クリトリスを吸引して刺激する機能と、膣内をピストンして刺激する機能がついている2way仕様のバイブだ。

 

立鳥。

 

わたしはAmazonで3480円で購入したが、現在Amazonでは在庫切れのようだ。今なら、BEYOURLOVERというアダルトグッズ専門店の通販で入手するのが簡単だろう。3690円。BEYOURLOVERは別件で利用したことがあるが、決して怪しいサイトではないので安心して使っていいと思います。

 

www.beyourlover.co.jp

 

通販しても、セックストイとはわからない名前で送られてくるので(具体的な表示名は失念したが「雑貨」とかそんな感じだったと思う)、配達員や同居人に知られたくない人でも利用できる。

パッケージはこちら。

 

パッケージ。

パッケージ。

 

クンニ&ピストン、本格的なセックス体験

・滑らかな手触り、医療用シリコン素材使用

・吸引機能&ピストン機能、一台二役

・弱・中・強、3つの吸引パターンでクリを刺激する

・7つの伸縮パターン、豊富多彩な機能

・全身防水、水の中でも思う存分楽しめる

 

クリーム色と赤色の2色があり、わたしは赤色を選んだ。

さらさらのシリコン素材は触感が心地よい。ちょうど握りやすい太さ・重さも相まって触れていて気持ちいいと感じる。

 

立鳥。

 

クリトリス吸引部の穴は直径1.4センチほど。内部の突起が3段階の強さで吸引しながら振動する仕組みになっている。

 

吸引部接写。

 

ピストン部分は7パターンの伸縮運動をする。太さは、これが勃起したペニスだとしたら平均からやや太めの範疇ではないかと思う。

 

先端。

 

ボタンは2種類で、○のボタンを長押しするとクリトリス吸引開始、短く押すと段階調節ができる。Zのボタンも、長押しするとピストン開始、短く押すと段階調節できる。シンプル設計。それぞれ長押しで終了できます。

 

ボタン。

 

充電は専用のUSB端子でマグネット式。充電している姿はあからさまに「エッチなおもちゃがボロンしてる」感じなので、同居人に知られたくない人は場所には注意です。

 

充電に接続している様子。

 

 

 

2.使ってみた感想

まず前提としてわたしはセックストイを買うのが初めてであり、ほかの製品との比較はできない。指以外(シャワー、流水、角など)を用いたマスターベーションとの比較も、経験がないのでできない。今回初めてセックストイを使ったマスターベーションを行ったわけだが、結論としてはクリトリス吸引部分は非常によいです。ピストンは、わたしが膣内では性的快感を感じない体質のためなんとも言えない。

クリトリス吸引は、陰核包皮をむいて穴にはめるのではなく、陰核包皮の上から陰核の根元に押しつけるのが個人的にはよかった。正直、吸引よりも振動のほうが、性的快感に繋がる動きとして比重が大きいように思う。また、パッケージには「クンニ」とあるが、クンニリングスの性的快感とは似ても似つかない別物だと感じる。こんなクンニができる人間はおらん。総じて、吸引グッズというよりは、吸引もできる穴があるローターだと感じました

これは振動するセックストイは皆そうなのかもしれないが、押し当てた瞬間に性的快感があるのが新鮮でした。わたしが普段行う指を用いたマスターベーションでは、触りはじめの時間は物理的触覚があるのみで、性的快感はある程度継続して刺激しないと生じてこない。しかし立鳥は、押し当てた瞬間に即、微弱ではあるが性的な快感が生じるのである。だからなのか、「おかず」を閲覧することによる精神的な高まりを追い越して肉体だけ無理やり絶頂に押し上げられているような物足りなさはあります。指のほうが、時間はかかるが絶頂の快感は明らかに深いのである。それでも、短時間で済むのと最初から気持ちいいのは大変便利なので、もう手放せません。

 

ピストンは、わたしが膣内では性的快感を感じない身体なので、挿入の圧迫感と、突かれている物理的感覚しかなかったです。いわゆる「開発」をされている人なら性的快感を感じられるのかもしれません。わたしも、恋人が男性である場合ペニスを挿入するのは好きだが、究極のプライベート空間としての性器を極限まで近づけることを介した精神的な一体感を好んでのことなので、そこに性的快感は求めていない(精神的な一体感に性的快感までくっついてきたらお得だろうなとは思うが、残念ながらそれが可能な体質ではないので仕方がない)。なお、わたしはモノアモリー*2のアロロマンティック・アロセクシュアル*3なので、恋人はすなわちセックスパートナーであり、セックスパートナーはすなわち恋人である。

 

作動音であるが、かなり大きい。吸引部分は「ボボボボボ」、ピストン部分は「ヴィンヴィンヴィンヴィン」って感じです。とりわけピストン部分の音は、セックスの最中に登場させるならムードが壊れかねないほど大きいので、服を脱ぐ前に一度相手に音を聞かせて覚悟させておくのがいいと思う。わたしは同居人がいるので、使うタイミングには一応気を遣っている。

 

 

 

3.Fからいずこかへ向かうジェンダークィアとしての感想

クリトリス吸引部を陰核包皮の上からクリトリスにあてると、臍の上にピストン部分がくる。つまり、勃起したペニスが生えたかのごとき姿になるのは、『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』にも書いた通りだ。今まで包皮を剥いてよくよく目を凝らさないと確認できなかったおのれの性的興奮が、一目瞭然な形で浮き彫りになったのである。これにより、反トランス差別ブックレットには書かなかったこととして、マスターベーションの満足度が飛躍的に高まった。要は、性的に敏感な自らの一部──それは必ずしもペニスである必要はないはずだが、結果として様態はペニスに近い──を女性に愛撫してもらったり膣内に包み込んでもらったりする性的妄想が非常に容易になったのである。立鳥をあてがいながら、わたしは女性とセックスする性的妄想を行う。臍の上を向いている立鳥の先端を自分で撫で回すと、それはわたしではない女性がわたしの性器を愛撫していると感じられる。その間もクリトリス吸引部がクリトリスを休みなく刺激することによって生じている快感は、女性の愛撫によって生じたものと錯覚できる。立鳥を上下にさすると、それは性器が女性の膣の中を上下に移動している感触と錯覚できる。なお、射精はわたしにとって自分ごととは感じられないので、クリトリスが絶頂するときに自らの射精を空想することはない。絶頂するときは、身体の一部である立鳥が、女性の体内で弾けて溶けていくかのような感覚を味わっている。もはや立鳥は、わたしにとっては眼鏡かスマートフォンに近い。ないほうが不便で、ないほうがよほど「ありのまま」の自分を発揮するのに支障があるもの。身体の延長。外部化された身体。

 

これまでシス男性とシス女性とトランス女性に恋をした経験がある。中にはセックスに進展した人もいる。そんなわたしはバイセクシュアルあるいはパンセクシュアルとみなされるだろうが、その見立てにはずっと居心地の悪さを感じており、積極的に名乗ることはしてこなかった。なぜなら、女性とセックスしているときのわたしは主観的な意識としては異性であったからだ。男性ではないが、結果としては男性に近い、とにかく女性とは異なる生き物として、わたしは女性に性的慕情を経験してきた。そんなわたしにとって、バイセクシュアルまたはパンセクシュアルというアイデンティティは、女性ならぬものとして女性を愛する感覚を十全に表現してくれるものではないのだ。なお、わたしは男性ではないので、男性とセックスしているときに同性として男性を愛しているような感覚があるわけではまったくない。男性もまた異性である。

立鳥はわたしにとって、男性──女性の身体にとっては異性であるとされている性──の身体に近づけるアタッチメントである。セックスの場面でもそれ以外の場面でも、男性になりたいと思った経験はごくごく少ないが、とりあえずの「異性」としての男性の身体に近づくことは、わたしの性的充足を大いに高めた。加えて、女性ならぬものとして女性を愛する感覚を生まれて初めて肯定されたかのような感覚まで味わうことができた。やはりここでも眼鏡と同じで、不足を解決するのは多くの場合テクノロジーなのである。立鳥を通じて、わたしは自身のアイデンティティを掴み直した。

 

ブックレットと立鳥。

 

なお、わたしの性欲の在り方をみて、わたしをオートアンドロフィリア(自己男性化性愛症)ではないかと思う人もいるかもしれない。わたしは自分をそうアイデンティファイしていないが、他者からそう思われるぶんには強いて否定しようとは思わない。いずれにせよ、オートガイネフィリア(自己女性化性愛症)/オートアンドロフィリアの概念を語るには、日本語圏インターネットは危険すぎるので、この場ではこれ以上触れない。もう少しセーフティーな場所があれば、そこで語るかもしれない。

 

以上、ジェンダークィアによる立鳥の感想でした。

 

 

 

増補版に寄稿されている吉野靫さん・周司あきらさんのご著書はこちらです。

 

 

 

 

 

わたしがテストステロン投与を受けるようになった話は過去記事に書いています。

 

www.infernalbunny.com

 

最近は、ジェンダークィアかつ精神障害者の立場からの「メンズ」コスメのレビュー100本ノックを始めたので、こちらもぜひ読んでください。まだ100分の2です。助けてくれ。

 

www.infernalbunny.com

 

 

 

 

 

*1:assigned female at birth の略。出生時に女性を割り当てられること。AMAB=assigned male at birth は出生時に男性を割り当てられること。

*2:一人の恋人を愛する価値観。対義語はポリアモリー。

*3:アロロマンティックは他者に恋愛的慕情を感じる性的指向。対義語はアロマンティック。アロセクシュアルは他者に性的慕情を感じる性的指向。対義語はアセクシュアル。

モノアモリー・アロロマンティック・アロセクシュアルであるということは、わたしが恋愛・性愛に関してはこの社会におけるマジョリティであることを意味する。