日常的にメイクをするようになった2018年ごろから、とりわけリップメイクが好きで、いろいろ買い集めていた。色選びが難しいファンデーションや、塗る範囲を自分で見定める必要があるアイシャドウと違って、リップは唇の輪郭通りに塗れば最低限は完成するので、初心者でもハードルが低かったのだ。血のような深紅ばかりつけていた時期もあるし、限りなく黒に近いダークブラウンに凝っていた時期もある。さまざまな試行錯誤、さまざまなマイブームを経つつ、それなりにメイク歴を重ねてきた今のわたしが出した結論が、タイトルに繋がるわけです。
結局、彩度の低い、グレーがかった、ピンクともベージュともつかない泥みたいな色のリップが最強。一番おしゃれ。でも顔色は死ぬ。
伝わりますかね。マットな、低彩度の、くすみピンクベージュ。ツヤがないから生き生きとした若見え効果もなく、赤味がないから血色感も足してくれない。日系日本人であるわたしの肌の場合、肌とのコントラストがつかないから美肌効果もない。おそらくどんなパーソナルカラーの人が使っても顔色が悪くなる。紅としての役割を果たさないくちべにです。けれども、うまく使えば最高におしゃれになると個人的には思います。ほかの色には出せない、唯一無二のオーラが出る。メイクが持つ一側面として、生き生きとした血色感により生命力を感じさせる(あえて露骨な言い方をすると、生殖可能性を誇示する)という面があると思うんですが、その面を完全に捨て去っているからかもしれない。黒や青紫ほどは奇抜じゃないし、緑みたいな完全な異色に振り切っているわけでもない。でも、よく見たら普通じゃない。そんなリップは決して多くはないが、血色感をなくすリップなんてそのへんの美容メディアは決して特集してくれないので、自分でまとめておこうと思います。今手元にあるのは3本で、うち1本は廃盤品なのでまとめ記事としては心もとないが、いずれ続きも書きたい。
では、書いていきます。
手のスウォッチはすべて、Androidのデフォルトカメラを用いて自然光下で撮影した。できるだけ肉眼で見たときの色に近づくように加工してある。
唇の着画は撮影場所の都合で蛍光灯下で撮影しているが、こちらもできるだけ肉眼の色を再現したつもりだ。
血色感抹殺リップ3選
1.M・A・C(マック) リップスティック ホワール
通常サイズ 価格:3520円 容量:3.0グラム
ミニサイズ 価格:2090円 容量:1.8グラム(写真はミニサイズ)
公式の色説明は「ダーティーローズ」。マット質感で、くすんだピンクベージュにブラウンが混ざったニュアンスカラー。ブラウンが入ってるからベージュリップとしては濃いんですよね。このブラウン味のおかげで、ライトスキンの場合は肌とのコントラストができて合わせやすいと思います。
パッケージもおしゃれです。
マックのリップスティックにはすべて特有のバニラの芳香がついているので、感覚過敏の人は気をつけてください。なお味はやや苦く、人工的な身体に悪そうな味がする。弊ブログのリップのレビューはすべて、匂いに加えて味にも言及しています。とはいえ、濃いリップほど粘膜近くまで塗ると口腔内のピンク色とのコントラストが際立って不自然になるので、あまり口の中近くまでベタ塗りしないのがおすすめ。
マックには一部商品の一部カラーにミニサイズの展開があり、ホワールもミニサイズがあるので買いやすい(わたしが持っているのもミニサイズ)。色味的にもお値段的にも、血色感抹殺リップ初心者におすすめです。
なお、今回のリップは、マックのキャンペーン期間中に購入しました。リップの売上が全額、HIV/AIDSとともに生きる人々・女性や少女・LGBTQIA+の人々を支援するM・A・C ビバグラム基金に寄付されるキャンペーンです。要は寄付できる上にリップまでもらえるってこと。M・A・C ビバグラム基金は歴史の長い基金で、ちょくちょくこの手のキャンペーンをやるので要チェックです。
M·A·Cでリップを買いました。
— 呉樹直己🐢 (@GJOshpink) 2023年6月9日
本日6月9日限定で、リップの売上が全額、HIV/AIDSとともに生きる人々・女性や少女・LGBTQIA+の人々を支援するM·A·C ビバグラム基金に寄付されるそうです。
ミニサイズのリップも対象なので、2090円+送料から寄付できることになります。https://t.co/m7L5voka4T pic.twitter.com/3jhWGXLRza
2.MUZIGAE MANSION(ムジゲマンション) オブジェリキッド 011 Poise
価格:2200円 容量:6.0グラム
MUZIGAE MANSION(ムジゲマンション)は韓国で2022年にスタートしたばかりのブランド。무지개(ムジゲ)は虹を意味するらしい。ヴィーガンコスメブランドであり、動物性原料を用いず動物実験をしていない。このオブジェリキッドは個性的な容器デザインもさることながら、記憶と感情という抽象的概念を色に落とし込んだというコンセプトも素敵である。
絵の具のようなパッケージは見た目に反して柔らかくはなく、アクリルのような硬い素材でできている。潰して漏れる心配はない。
この011 Poiseは、2022年10月に発売された新色である。poiseは落ち着き、安定、平静、みたいな意味。公式の色説明は、「どんなカラーを乗せても華麗な雰囲気を重ね合わせたように演出させるペールヌードベース」とのことで、本来はほかのリップを重ねる前提の色のようだ。色名には唇の色をならす、抑える、みたいな意味が込められているのかな。しかしもちろん、1本で使っちゃいます。
パッケージはこちら。
個人的にはかなりいい匂いがする。花屋のような、青々しさと仄かな甘さが混ざったグリーン系の香りがします。花の香りを模した「フローラル」ではなく、あくまで本物の花屋さんの香り。香水でいうとHERETIC PARFUM(ヘレティックパルファム)のフラワーポーン(花のポルノ)に似ている。植物性原料のみを使っているとこんないい香りになるんでしょうか。わたしは好きな匂いでしたが、感覚過敏の人は気をつけたほうがいいでしょう。ちなみに味も生花のような青臭さがある。苦くはないです。植物性原料だから非常時には食べられるかもしれん。
2023年6月現在、取り扱い店舗は都心に限られているので、通販で買うのが簡単。Amazonにも楽天にも公式ストアがあります。
実店舗だと、2023年6月現在、首都圏のアットコスメストアとPortamento THE STORE 渋谷スクランブルスクエアで取り扱いがあるようだ。わたしはアットコスメストアルミネエスト新宿店とルミネ横浜店で目撃したが、一部の色しかなかった。全色確実に揃っているのは渋谷スクランブルスクエアの韓国コスメコーナーである。参考までに。
ほかの色だと、015 Tensionにも惹かれる。公式の色説明によると「唇の細部まで生かしたベースで生まれ持った上品さが感じられるタンニングベージュ」で、赤味のない潔いヌードベージュのようだ。2023年の第36回東京ガールズコレクションで圧巻のダンスパフォーマンスを披露して話題になったラウール(ジャニーズグループSnow Manのメンバー)がステージでつけていた色だそうです。手がけたメイクアップアーティストは小田切ヒロ。
ラウールのパフォーマンスはSnow Man公式で見られます。
若いアイドル全然ついていけてないんですが、ラウールさんだけはパリコレでヨウジヤマモトのランウェイに立ったりして服界隈にも名前が流れてきたので知ってます。2003年生まれの19歳。2022年の東京ガールズコレクションでもピンクサテンのスーツとエナメルのブーツでアンドロジナスな魅力を発揮しており、Z世代って自然にこういう人がいるから恐ろしいな(雑世代論罪にて死刑)。
小田切ヒロがTGC2023のラウールのメイクを再現した動画はこちら。
小田切ヒロは、LGBTのトレンドに逆行してコッテコテの「オネエ」営業を貫いている逆に稀有なメイクアップアーティストで、「『オネエ』が教えてあげる」スタイルのショート動画はまあシンプルに好みが分かれそうではある。わたしはオネエ営業よりも、精油の飲用を勧めたりメイク中に水晶で空気を浄化(?)したりするスピリチュアルな部分が好きじゃないので薄目で見ています。なお、今の社会ではわざわざ書く価値があることだと思うのでわざわざ書くが、小田切ヒロは自身のジェンダーアイデンティティやセクシュアリティを明言したことはないものの、男性(に見える)パートナーがいることはVlogコンテンツで公開しています。
3.RMK(アールエムケー) リップスティック コンフォートマットフィット 03 モードファクトリー
価格:3850円 容量:4.2グラム
こちら廃盤商品であり、紹介しても意味ないんですが、ブログは第一には自分用メモなので書いちゃいます。
浜崎あゆみになれるリップとして過去にも紹介しました。ベージュリップのよさに目覚めた1本です。
ピンク味が少なく白味のあるマットベージュ。人によってはリップコンシーラーみたいに発色しそうだ。
無臭なので感覚過敏でも安心してつけられると思う。ちなみに味も無味。
3色を比較するとこんな感じ。右からマック、ムジゲマンション、RMK。
以上、血色感抹殺リップ3選でした。
血色感ってなんだろう
口紅は、その名の通り、唇に赤味、つまり血色感を与える役割のものである。でも血色感ってなんなんでしょうね。血色感があると顔色がよく、健康そうに見えるが、顔色がよく健康そうだからといって、それだけで見た目がオールオッケーになるわけではないと思います。顔色をよくしてくれるリップは、顔色をよくしてくれるものであって、それ以上でもそれ以下でもない。不健康そうだけどなんかいい、みたいな方向性の美もあると思うわけです。顔色をよくしないことから始めるアンチエイブリズム、アリだと思う。
もちろん、なんでもそうだが、似合う似合わないはあります。わたしはたまたま不健康そうなのが似合わなくもない容姿だったというだけの話です。顔色の重要度は年齢や服装やTPOによっても違うし、わたしは今現在重要度が低い境遇であるだけだ。でも、もし挑戦できそうなら、顔色を殺すメイク、たまにはおすすめです。新鮮で楽しいので。
以上、まとめでした。
シュウウエムラのルージュアンリミテッド BR736も血色感抹殺リップでおすすめ。ただマスク耐性は低いので最近は使っていません。
その他のコスメレビューはこちら。