敏感肌ADHDが生活を試みる

For A Better Tomorrow

30代兼業作家(双極性障害)の食生活改善を試みる。1カ月目の記録

 

 

 

過去記事に書いたように、わたしは2020年夏から一人暮らしをやめて、双極性障害の兼業作家である「先生」と共同生活をしている。
 
 
書生として、衣食住*1と勉学に集中できる環境と小遣いを提供していただく代わりに、わたしに委託された家事のひとつに炊事がある。これは、ただ三度の食事を作成して食卓に並べるだけではなく、先生の望みであるダイエットに協力するとか、 おやつを爆買いしようとしていたら制止するとか、先生の食事管理とでもいうべき内容まで含まれている。その様子を、ここに記録していこうと思う。オープンな情報とすることで、 ほかの誰かの参考になったり、こちらにも有益なフィードバックがあったりしたら幸いである。題材の性質上、先生のパーソナルな生活状況を公にしてしまうことになるが、書生のバランス感覚と先生の最終チェックによって、必要分のプライバシーは守られていると信じる。わたしが書く文章で言及される先生の個人情報はおおむね、先生が自身のSNSなどですでに明かしてきたものに限られている。
 
なお、記事タイトル「30代兼業作家(双極性障害)」について補足しておきます。当然ながら、先生の職業は食事にあまり関係がない。副業がデスクワーク(ちなみに本業もデスクワーク)ということで、運動が不足しがちという情報を与える意図もあるが、単に、「30代」だけだと収まりが悪いから長くしてみただけだと思ってください。そして「双極性障害」、こちらも直接的に関係があるわけではない。しかし、疾患の苦痛により精神的余裕がなく食事が疎かになり、それが肉体の不調に拍車をかけ、さらに精神状態が悪化するという悪循環があることは見て取れ、そういう意味では必要情報であると判断した。以上の意図により、このようなタイトルといたしました。生身の人間を属性で切り取るようなことはあまりしたくないのだけれど、便宜上ということで。
 
 
では、書いていきます。長いです。
 
 

 

 

1.先生のこれまでの食生活について 入居前の所見

書生の雑感

先生と共同生活契約を締結する前、数日間のお試し同居を行った際に、食べ物の好みや普段の食生活について伺った。いわく、好き嫌いはほとんどない。食事に興味がなく、料理をする余裕もなく、出前と冷凍食品と家事代行でしのいできたとのこと。しかし、文字通りの意味で食事に興味がなければ、砕いたカロリーメイトをスポドリで練ったものを週3で流し込んでいてもおかしくないのだが(そのようにして食事を済ませている友人もいる)、先生はちゃんと「料理」を所望していたし、舌も的確で、味がわかる人であった。生活に余裕がない中でも、料理を摂取する欲を保てているのは偉大なことであり、大変喜ばしい。とはいえ先生の食事内容は、「食 “生活”」としてで整えたものではなく、特定の主菜をピンポイントで欲して突発的に出前を取るみたいな、で考えたものに偏りがちのようであった。疾患の苦痛により食事に気を配る意欲・思考力が減衰している中で、散発的に閃く食欲をその都度手繰り寄せて空腹感から逃げ延びるしかなくなっている、という状況が見て取れた。食事に関心を払う余裕がないのに、余裕がないからこそ食生活が整わず、常に食事の心配をせざるを得ないという、精神的弱者にありがちなパラドックスに陥っている様子であった(若干、過去のわたしを見ているようでもあった)。空腹感をその都度黙らせて一日いちにちを辛うじてやり過ごしている状態であろうと思われ、先生の今までの辛苦が偲ばれた。突発的に欲して注文する出前の内容が、ピザとか揚げ物とか、わかりやすく炭水化物と脂質で脳の報酬回路を刺激するようなラインナップに偏っているのも納得であった。抑鬱状態のときにこの手のジャンクフードをドーピングすると多少ハッピーな気持ちになるのは、わたしも実感としてわかる。なお、こういう食事スタイルがダイエット的によろしくないのは言うまでもないし、先生が頻繁に胃炎を起こしている一因であろうとも思われた。
 
―― 以上のようなことを、お試し同居中の数日間で感じた。すべてわたしの主観による推察なので、合っているかは知らないです。他人からは先生の食生活がこのように見えた、というだけの記録として読んでください。そして、先生自身にこのような状況を改めてもらいたいから言語化しているのではない、ということも付け加えておきたい(わざわざ指摘されるまでもなくある程度自覚なさっているだろうし、だいいち、なにか言いたいことがあるならブログに書くまでもなく直接言えばいいのだから)。もちろん、先生の健康のためには改めるべきなのですが(内科医からもそのように指導されているとのこと)、そこに先生本人がリソースを割く必要は(今のところ)ないのです。それができるくらいなら苦労しないのだ。ご自分でそれができるくらいなら、ほぼ見ず知らずの他人を家に招き入れて高い金を出して養うような羽目には陥っていないでしょう。先生は、家事を行うリソースが自分に足りないのを自覚なさっているからこそ、書生というインセンティブを迎えるに至ったのであって、その決断自体が先生にとっては「生活」であろう。そこから先を考えるのは、アウトソーシング先の人員(=わたし)の役目である。先生の役目は、家事労働の外注を継続できるだけの金銭(つまり、わたしを家に住まわせるのにかかる費用)を稼ぎ続けることだ。われわれは、そのような契約に基づいて同居しているのだから。先生は社会人歴1X年の3X歳、わたしは大学生とはいえとっくに成人済みの2X歳であり、 お互いに自分のできることとできないことは把握していて然るべきである。無理や我慢をして破滅するのではなく、キャパシティを超えていることに関して他者に適切に援助を求めるスキルこそが望まれている。
 
とはいえ、今後先生が自分で料理とかするのを望むことがあれば、書生としてはもちろん協力する所存です。現時点でも、台所の器具配置なんかもわたしがやりやすいように変えさせてもらっているが、あまりわたし専用に先鋭化させるのではなく、他者(先生)から見ても直感的にわかりやすいように意識してはいます。共同生活契約解消後のことや、わたしの長期入院時・不慮の死亡時等を想定している。
 
 

事前の情報収集

ちなみに、お試し同居をするよりも先に、インターネットからの情報収集a.k.a. ネットストーキングも行っていた。先生のブログとnoteは全記事遡り、Twitterのメディア欄の食べ物の写真を総ざらえした。さらに、Twitterの単語検索で「朝食」「昼食」「夕食」「夜食」「外食」「出前」「宅配」「食べる」「食べたい」「食べた」「美味しい」「美味しくない」「台所」「冷蔵庫」など、食生活に関連する語句を細かく調べ上げたのも役に立った。これで、おおよその生活ぶりや嗜好は事前にイメージした上で共同生活に臨むことができた。先生は、自分の内面に関しては多弁な人ではないが、食べたもの等の生活実態についてはわりかしコンスタントに呟くタイプだったので、書生としては大助かりであった。近しい人のSNSアカウントを知っていることは必ずしもメリットばかりではないですが、こういうときばかりは便利と言わざるを得ない。
 

 

 

2.入居直後 胃に負担をかけない献立の模索

実は、共同生活契約を締結してから実際に入居するまでの一カ月半は、先生の体調が坂道を転がり落ちるように悪化していた時期でもあった。引っ越し直後は気忙しいだろうし当分は料理しなくてもよい、と先生は言ってくださっていたが、どう見てもそんな悠長なことを言っていられる状況ではなかった。先生は、胃炎の激しい腹痛と嘔吐が落ち着いた一瞬の隙にピザだの天丼だのを暴食してはまた七転八倒することを繰り返しており、それはもはや自傷行為のようであった。これ以上出前とUber Eatsでもたせるのは、肉体面・精神面ともに負荷が大きすぎると思われた。よって、入居後まずは市販の冷凍弁当とパウチ総菜を出すようにし(固形物が食べられそうにないときはゼリーや果物の缶詰など)、入居4日目くらいから自炊飯の供給を開始した。
 
当面は、胃炎をこれ以上悪化させないことを最優先として方針を立てた。具体的には、以下の五点を心がけた。
 
・とにかく柔らかく仕上げる
・生ものよりは加熱調理
・油分、食物繊維、刺激物は控えめに
・牛乳は使わない(先生は牛乳を飲む習慣を持っている。普段は牛乳でお腹を壊すことはないとのことだが、胃腸の炎症による消化酵素流出からの一時的な乳糖不耐症に陥っている可能性を想定した)
・先生が好きなモンスターエナジーなどのカフェイン飲料は厳禁(これは先生も自主的に辞めておられた)
 
気をつけたほうがいいことは本当はもっと沢山あるのだろうが、 わたしの炊事スキルで実現可能なのはこのくらいでした。まずはわたし自身が新生活に慣れて、家事を継続しなければならないので、最初はゆるいほうがいい。ちなみにわたしの料理スキルはべつに高くはないです。他人のぶんまで炊事をするのは、実家にいた高校生のとき以来数年ぶりである(実家でも、毎日しているわけではなかった)。「食生活改善」などと大風呂敷を広げるのに相応しいような技術はなにもないし、主婦/主夫歴の長い方から見るとごく簡単な料理しか作れていませんが、 まあ一般的な20代大学生がすることだと思って多目に見ていただけると幸いです。家事でいうなら、片づけや洗濯のほうが得意だ。ちなみに先生は片づけが最も苦手とのことなので、バランスが取れていてよかった。
 
上記の方針から、以下のような料理が生成された(毎食の献立を記憶しているわけではないが、この期間だけは「胃炎 食事」とかでググりながら作ったのもあって、若干のメモ書きが残ってました)。
 
・卵と鶏肉と長ねぎのうどん
・鮭と大根の味噌煮
・冷しゃぶサラダ
・鱈のムニエル
・鱈の中華風蒸し煮
・(上記の蒸し煮の煮汁から生成された)雑炊
・詳しくは忘れたけどホタテと葉もの野菜を使ったなにか
・詳しくは忘れたけど鶏肉とじゃがいもを使ったなにか
etc.
 
鍋ひとつでできる簡単なメニュー中心で、荷解きや行政手続きなどを済ませつつ、ぼちぼち10日ほどを過ごした。
 

 

 

3.胃炎寛解後~現在

現在の方針

そうこうしているうちに、先生の胃が回復の兆しを見せてきた。蒼白だった顔が少しずつ生気を取り戻し、一度に食べられる量が増え、食べたい料理名を口にするようになり、ピザを所望するようにもなった(却下した)。ある日、今すぐインドカレーを食べないと死ぬ難病にかかったと強硬に主張されたので、ついに出前でインドカレーを注文して食べたが、胃痛にはならなかったようなので、ひとまずは寛解したと判断。そこからは、刺激物もほどほどに取り入れるようになった。具体的には、先生が好きなキムチを使ったメニューを解禁するなど。とはいえ、胃炎は繰り返すものであるし(先生も、断続的に数カ月に渡って苦しんでいた)、いずれにせよ健康的な食生活を継続したほうがいいのは間違いない。
 
通常の食事ができるようになったということで、とにかく胃腸を動かして代謝を上げることを考えた。吐いてばかりいたのに痩せなかったと先生はがっかりしていたが、身体が危機を感じて代謝を抑制しているのかもしれない。一品一品のカロリーは控えるにしても、品数はある程度増やして胃を動かし、精神的な満足感も高めることを目指した。先生は、わたしの家事負担を気遣う気持ちもあってか「連続して同じ料理が出てきても平気です」「無限カレーでも無限鍋でも十分」と言ってくれているが、それでは栄養バランスが悪くてまた体調を崩しかねないし、満足感がないと結局間食に走るリスクが高まるだけである。食事にあまり興味がないとのことだから、何食も同じものが出てきてもいいというのは本心なのだろうが、もうその本心に3X歳の肉体がついていけていないのである。先生の気持ちとは関係なく、ある程度のコストは投下させてもらうことにした。先生の健康は居候のわたしにとっても死活問題なので、わたし自身のためにも必要なコストだと判断している。なお、単純に先生の友達(?)の端くれとしても、先生の身体が心配なのはいうまでもない。
 

 

 
 

現在の食事内容

上記のような方針と、わたしの炊事能力とを擦り合わせた結果、現在の食事(夕食)はおおむね一汁二菜に落ち着いている。一汁三菜教には入信していないので無視します。
 
・主食
基本はご飯。白米:もち麦を3:1の割合で炊いて140グラムずつ小分けにして冷凍しておいたものを、食べる直前に電子レンジで解凍する(このスタイルは先生の指示)。

 

はくばく もち麦ごはん50g(12袋)

はくばく もち麦ごはん50g(12袋)

  • メディア: 食品&飲料
 

 

たまに炊き込みご飯も仕込む。
 
・主菜
肉か魚。ダイエットするにしてもタンパク質は大事。脂身の少ない白身魚を多用している(わたしが個人的に肉より魚が好きというのもある)。一度に大量に作って、余りは冷蔵保存して後日食べたり、次の日の副菜に回したりすることが多い。
油控えめとか野菜多めとか、一般的なダイエットの作法は一応踏まえて作っている。
 
・副菜
その日に作ることもあるし、作り置きすることもある。市販品や、先生が大量に備蓄していたパウチ総菜を温めて済ませることもある。前日の主菜の残りをアレンジして副菜に仕立てることも。 手軽さ優先
 
・汁物
スープか味噌汁。基本はインスタントのもので、野菜や海藻などを追加してボリュームと栄養を増やす。副菜が多いときは省略することも。
基本はこんな感じ。トリッキーなことはせずに、とにかく、暴食でも粗食でもない一定のクオリティの食事を、一定の量、一定の時間に供給することを目指しています。
たまに、大皿一枚で済ませる系の料理を取り混ぜる。パスタやどんぶりやチヂミなど。
個人的には、複雑な料理を一品用意するよりは簡単な料理を複数用意するほうが楽である(あくまでわたしの場合ね。作り手の性格や生活スタイルによると思う)。
 
効率化できるところはどんどんそうさせてもらう。市販の調理済み食材や、クックドゥ的なブレンド調味料も適宜活用する。いうまでもなく、それに文句をつけるような先生ではないです。とはいえ、個人的にはブレンド調味料はあまり好きではない。手間暇をかけるべきだと思っているからではなく、ブレンド調味料は一問一答の具体的な料理しか作ることができず応用が利かないからです。その料理に要る肉や野菜が冷蔵庫になかったら途端にアウトになってしまう。「冷蔵庫にあるものから適当に献立をでっちあげる」という、日常メシにおいて避けては通れないメイン作業にはあまり役に立ってくれないのだ。ブレンド調味料は、味の安定供給に役立つ(作り手の精神状態等に左右されない)アイテムであって、常用すれば楽できるものでは必ずしもない、というのが個人的な意見。複雑な味付けの料理を作りたいときなどに、適宜活用している(ここらへんの、精神的弱者でも継続できる自炊のコツなどについては、いずれ個別記事にしたい)。
 
食事直前の準備時間(純粋に調理にかかる時間ではなく、台所に入室してから調理・配膳をし先生を呼ぶまでの時間)は、おおむね30分。長くても45分。それ以上かかる献立は面倒なので作らない。下準備や前日の仕込みなどが必要なら、 隙間時間に適宜行っている。
 
 
たまに、先生が自分の食べたいものを出前で頼んだり、外出帰りに惣菜を買ってきたりする。稀に二人で外食したりもする。
 
 
これは、二人で食べたいきなりステーキ。

 
ALIVE

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朝食はほぼ固定

なお、上記は夕食の話で、朝食は毎日固定である(先生の指示)。思考コスト削減になって楽です。内容は以下の通り。
 
・パン
先生お気に入りの、BAGEL & BAGELのベーグルを通販でまとめ買いしている。
 
前夜に冷凍庫から出して解凍しておき、朝にトースターで焼く。朝に冷凍庫から出して電子レンジで解凍温めする方法も試したが、やはり自然解凍してから焼くほうが美味しいという結論に達した。
 
 
・ヨーグルト
1パックを二人で半分こする。週二回の宅配で入手している。
 
 
・サラダ
基本はレタス・トマト・キュウリ。そのときどきで冷蔵庫にある野菜を適宜活用する。
 
・スクランブルエッグ
先生に指示された内容は上記3品なのですが、自主的に追加した。卵は栄養満点だし、朝はしっかり食べるべき(という持論)。出勤日や通院日など、先生にとって重たいタスクがあるときや、先生の元気がないときに、わたしの裁量で追加される。外出予定がない休日は省略。
 
ちなみに、「なぜ目玉焼きではなくてスクランブルエッグなんですか」と先生に訊かれた。なぜかというと、目玉焼きは寝ぼけたり慌てたりしていると卵黄を破いてしまってぐちゃぐちゃになる可能性があるが、スクランブルエッグは最初からぐちゃぐちゃなので失敗しないからである。わたしのコンディションに左右されずに供給できるのがよい。先生は、たまには目玉焼きも食べたいとおっしゃっていますが、書生権限でガン無視しております。
 
 
以上が朝食である。
 
 
平日の昼食は、先生は職場で食べる。携帯食糧や、社員食堂などで済ませているようです。わたしも家で適当に食べる。
休日の昼食は、上記の一汁二菜をボリュームダウンさせたようなやつをわたしが作ったり、二人で即席麺をすすったりしている。お手軽に済ませる。
 

 

 

食事の時間を一定に保つ

これも先生の指示です。朝食は6:30、昼食は11:30、夕食は18:30と決まっている(夜、残業等で帰りが遅くなるときは連絡が入る)。
 
先生が一人で暮らしていたときは、出勤時間と職場の昼休みに合わせて食べる朝昼はともかく、夕食は体調によって滞りがちのようだった。今は、わたしがこの時間に合わせて作って食卓に呼べばちゃんといらっしゃるので問題ない。
 
休日もだいたいこのスケジュールである。双極性障害の治療の一環としても、生活リズムを一定に保つのが大事なのだそう。わたしも本でそのように読んだ記憶がある。
 
ちなみに、共同生活契約を締結してから入居するまでの間に、下記の本を再読した。
 
さらに、下記の本を新規購入して読んだ。
 
双極性障害 第3版: 病態の理解から治療戦略まで

双極性障害 第3版: 病態の理解から治療戦略まで

  • 作者:加藤 忠史
  • 発売日: 2019/06/24
  • メディア: 単行本
 
 
加藤忠史『これだけは知っておきたい双極性障害 躁・うつに早めに気づき再発を防ぐ』は、症状・治療法・発症メカニズムなどの基本情報が平易な文体でコンパクトにまとまっていて読みやすかった。当事者と近親者どちらの利害にも偏らないフラットな語り口なのがいい。見開き2ページの左側に概要、右ページに詳細が乗っているという構成も素晴らしい。今まさに鬱状態のさなかにあって文章を読むこともつらい当事者が手に取ることを想定した、親切で理にかなった設計であると感じた。
親しい友人に当事者がいるのもあり、数年前に好奇心で購入したものだが(わたしは自分の診断名とは違う疾患の本もけっこう読む)、今読んでも面白かったです。
 
同著者の『双極性障害 病態の理解から治療戦略まで 第3版』は、疾患の歴史(古代ギリシャ時代にはすでに発見されていたらしい)や、疫学的側面・社会的側面から、最新の治療戦略・治療薬といった身近な情報までがぎっしり400ページに詰まっており、読みごたえがあった。帯の言葉 “症状の診かたから識別診断、治療薬の選択、ゲノム研究、病態仮説まで双極性障害に関する膨大な情報をコンパクトかつ読みやすくまとめた決定版!” に偽りのない必読書であると感じた。2019年発刊なので、情報も比較的新しい。上記の『これだけは知っておきたい双極性障害』よりは専門書寄りで、やや難解です。ゲノム研究やバイオマーカー研究に関するくだりは、わたしの知識不足のせいで理解できていない部分も多いが、おおむね興味深く読んだ。
 
もちろん、本を読んだからといって先生を “理解” できるはずもない。とはいえ、まったく知らないよりは、先生と雑談が可能な程度には知識があったほうがいいし、であれば中途半端にネットの情報を聞きかじるよりは腰を据えて専門書にあたったほうがお得、くらいの軽い気持ちです。いずれにせよ、非当事者の立場から “わかった” ような気になってしまうのは危険なので、あくまで参考程度と心得ておきたいところだ。先生は、「双極性障害患者」ではなく、先生という一個の人間である。 そしてわたしはそんな先生の同居人に過ぎず、医療関係者ではない。わたしに先生の地獄はわからないし、また、逆も然りである。
 
話が逸れた。食事の話に戻る。
 
 

間食を防ぐ

ダイエットするなら、間食をしないのは大事。入居時に冷凍庫に転がっていたハーゲンダッツなどは、許可を得てわたしが失敬し、その後買い足すことはしないでおいた。これで、先生が自分で買い物に行かない限り、お菓子類を得ることはできない。自分で買いに行くというのなら、大人が自分のお金を使ってすることなので止めはしないが。たまに、通販でドライフルーツなどを買っているようである。
 
時々、わたしが入居する前に買ってあったらしきジュースやみつ豆の空き缶が、深夜の台所にひっそり転がっていたりするのですが、それも先生が自分の判断ですることなので干渉する筋合いはありません。誰にでも、甘いものが必要な夜はあるのだ。
ちなみに、先生はお酒を飲まない人なので、そこらへんの節制は不要である。喫煙もしない。
 
なお、お菓子を買うのを控えると、わたしも先生に付き合ってお菓子を断つことになるが、わたしも元からそんなに間食しないたちなのでべつにかまわない。
 
 

果物を供給する

お菓子は買わないが、日々の潤いは必要なので、食後に果物を供給する。現在の先生のブームは梨なので、常備するようにしている。休日のおやつどきにも、リクエストがあればむく。
 
なお、周知の通り、果物は決して安い買い物ではない。しかし、予算を決めてわたしに生活費を預けているのは先生であるので、先生がこれでよいと言うのなら書生はその予算でやらせていただく次第です。食費をもう少し減らすように等の指示が先生からあれば、適宜見直すことにする(最終的な家計管理は先生の役割である)。
 
 
食べ物を撮る習慣がなくて、実際の料理の写真が一枚もないことに気づいたので、わたしがもとの家から持ってきたかわいいお皿でも見といてください。
 
からあげクンのお皿。
 
 

 

 

4.総括、契約内容について

以上が、わたしの炊事タスクの内容である。
これらが先生のQOL向上にどれほど役立っているのかは不明だが、とりあえずはこんな感じで日々を過ごしている。とにかく継続することが大事。
 
わたしは、このような業務を担当する代わりに、基本的な生存と学習環境を保障していただいている。炊事のほかには、片づけ・掃除・洗濯・ゴミ出し、朝6時半に先生を起こすことなどもわたしの役割である。
これが妥当な取り引きであると思えるかは人によるだろう。先生はこの程度のタスクのために安くはないお金を支出して赤の他人を住まわせているのかと驚く方もおられるかもしれない。しかし、人それぞれできることとできないことがあるというだけの話である。われわれは、双方納得して共同生活契約を結んでいるので、なにも問題はない。
 
 

5.重要事項:短期的な変化に一喜一憂せず、淡々と生活すること

なお、上記のような生活改善を経て先生の体調がよくなったとか悪くなったとか、体重が何キロ減ったとか増えたとか、その手の結果についてはここには書きません(そもそも今回の記事に限って言えば、たった一カ月間の話なのでもとより変化があるはずもないが)。
 
肝心の成果を書かないなんて、生活改善記録としては甚だ不完全だが、これはあくまでわたし個人の行動ログなのでご了承ください。体調や体重などという、本人のコントロールが及ばないセンシティブな事柄を短いスパンで言語化するべきではない、というのがわたしの判断です(胃炎がましになった、くらいの超短期的な事柄は書くが)。仮に今月は調子がよくても来月には悪くなっているかもしれないし、わたしだって抑鬱が悪化して自炊できなくなっているかもしれないし、それらにいちいち一喜一憂していてはお互いに気詰まりなだけである。そもそも、体調・体重変化のトリガーは食事だけではありません。年齢的なものや運動量や処方薬の副作用など、さまざまな要因が考えられるので、単一の要素にことさらに結びつけてアウトプットしても無意味である
今後もこのような記事を出すかもしれませんが、主にわたしの側の試行錯誤だけを記録していき、先生側の反応についてはいいとも悪いともなにも書かないつもりです。
 
 
お互いに、同居人ができたからといって、根本的な苦痛や課題が消えてなくなるわけではない。独りで背負うべきものは、これまで通り各自で背負っていかねばならない。互いに過度な期待はせず、淡々とやっていこうと思う。最低限、生きて今夜の飯を喰っていればそれでよい。
 
 
青空と雲。
 
 
以上、1カ月経過時点のまとめでした。
引き続き、双方の真摯な協力に基づいて、よりよい食生活・共同生活を試みていきます。
 
 

 
 
 
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*1:正確に言うと、「衣」は毎月1日にいただくお小遣いの中からわたしの裁量で買うことになっています。食住は完全に生活費から出していただいている。