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日記:精神障害者手帳を持って美術館に行くとき、入場料割引よりもありがたいこと

最終更新:2023.9.2

 

 

 

それは、来館にあたって事前予約が免除されることだと思う。

 

 

すべての美術館・博物館がそうとは限らないが、経験上、免除されることが多い。

身体障害者手帳・精神障害者手帳・療育手帳*1などを持っていると入館料が割引されたり無料になったりするのは、当事者ではない人もなんとなく知っていると思う。加えて、事前の時間予約も免除される施設が多いのだ。こちらは知らなかった人も多いのではないでしょうか。

COVID-19の流行以降、都会の大規模な展示においては、事前のweb予約を必須とする施設が増えた。混雑を分散させ感染拡大を防止するためには仕方ないが、体調が不安定な精神障害者にとってはこれはかなり相性の悪いシステムである。しかし、手帳ユーザーは多くの場合事前予約不要でいきなり来館してOKなのである! 手帳ユーザーが人口のごく一部だからこそ、それくらいのイレギュラーには対応できるということで免除されているのだろうが、当事者の実情に沿ったいいシステムだと思います。

さらに、多くの施設では手帳ユーザー本人だけではなく、同行者1名も介助者扱いで割引または無料となる(これは主には身体障害者を想定したシステムと思われる)。そこで、手帳ユーザーではない友達を気軽に誘うことも可能になるわけです。わたしはそうしている。なお、わたし個人は外出に介助者を必要としない状態にいる。だから、本来は介助者のための制度を「ライフハック」的に利用するのは不適切であるとする批判もあるかもしれない。しかし、障害内容に関わらず障害者は外出含む社会参画が困難になりがちなのだから、地域で他者と関わる機会を増やすことを助けるサービスであると考えれば、わたしのような人間も対象だと思って利用しています。ということで、わたしを誘えば予約不要・無料で入場できるので、友達はどんどん誘ってください。社会参画したいので。

 

 

 

最近行った展覧会をいくつか記録しておきます。

まずは、東京都現代美術館で開催された「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展。ここ1年で最も話題になったブロックバスター展でしょう。2022年12月から2023年5月という長期に渡って開催されたにもかかわらず。連日満員でチケットは争奪戦だったと聞きます。銀座のDiorからシャトルバスまで出ていたとか。なんでそんなに人気だったのかはよくわからない。撮影可で、見た目にわかりやすく美しくて、詳しくない人(わたしとか)でも感動できるから? たしかに、SNSに流れてきた「ドレスのアドベントカレンダー」の映像はインパクト大でしたが。

 

www.vogue.co.jp

 

こちらは、手帳ユーザーではない人を誘って2023年2月に行きました。事前予約不要なので急に誘って急に行けるのが最高。

展示はインスタレーション的で、服の細部は見えにくかったです。職人の超絶技巧を細部まで堪能するって感じじゃなかったかな。

 

これが、わたしが「ドレスのアドベントカレンダー」と呼んでいる区画です。

 

歴代の香水のCMとともに上映されていたマッテオ・ガローネ制作の2020-2021年秋冬のオートクチュールコレクションの映像──神話の時代、野で暮らす娘たち(全員赤毛)や人魚などの未開の生物に服をお届けする──のストレートに西洋啓蒙主義的な印象も相まって、すべてが残酷なほどにエクスクルーシブで、美しい。

 

youtu.be

 

個人的には、その後メゾンマルジェラにちょっと興味を持つので、ジョン・ガリアーノ時代の展示を意識して見とけばよかったと後悔しています。現メゾンマルジェラのデザイナーであるジョン・ガリアーノは、1996年からディオールのクリエイティブディレクターを勤めたのち、2011年に反ユダヤ発言で解雇されています。

 

www.fashionsnap.com

 

www.vogue.co.jp

 

 

 

もう一つは、2023年6月から9月まで東京都庭園美術館で開催された「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展。フィンランドは1917年にロシアから独立後、ナショナリズムの要請に従ってガラス工芸の分野においてもモダニズムが推進されたそうです。さらに第二次大戦後も「アートグラス」が国家復興の一翼として発展し、現代のフィンランドの「北欧モダン」なイメージが確立したのだとか。

 

bijutsutecho.com

 

 

東京都庭園美術館は、もとは宮家である朝香宮(あさかのみや)の旧邸であり、そのような権威を志向した建物での公開となったことは「アートグラス」の性質に不気味にマッチしていると感じました。

 

書庫と書斎がある家、羨ましいぜ!

 

 

 

見た目にわかりやすく華麗な作品が目を引く中で、ゲンネル・ニューマンの1941年の小品「スキー・パトロール」、通称「冬戦争」が印象的でした。作家がスキー・パトロールと名づけたが通称のほうが有名なそれは、冬装備で銃を持つ人物像が表され、1939年にソビエトのフィンランド侵攻によって勃発した冬戦争(第1次ソ連・フィンランド戦争)を象徴しているそうです。

 

 

もちろんあのイッタラ(フィンランドのガラス食器やインテリアの有名ブランド。おしゃれな人のインスタやYouTubeには必ず映っていることでお馴染み)のプロダクトもたくさん見られます。

来館日は快晴の日で、窓際に設置してある作品は陽光とのコラボレーションが見事でした。

 

 

こちらは手帳ユーザーの人と行ったのですが、東京都庭園美術館は珍しく付き添い2名まで無料なので、2人手帳を持っていたら4人まで無料ということになります。お得。

 

 

 

 

 

*1:知的障害があると判定された人に交付される手帳。自治体によって名称が異なり、「愛の手帳」などと呼ばれることも。