好きなお洋服を好き勝手に語り尽くす着道楽日記、今回は、もう手放した服のうち、写真が残っていたものの記録です。着てみて気に入らない点があったから捨てるなり売るなりしたわけだが、写真が残っている服は、見た目だけは最高に気に入っていたものが多い。せっかくなので、わたしの感性の記録、ライフログとして、まとめておきます。また、手放した理由は精神障害者としての生活スタイルに合わなかったからという理由が大半であり、判断の経緯も記録することで、ほかの誰かの参考にもなれば幸いです。
写真はすべて、ブログを始める前に古いスマホで適当に撮ったものなので、今よりもクオリティが低いが、ご容赦ください。
- 1.Metamorphose temps de fille(メタモルフォーゼ) コートワンピース
- 2.MILK(ミルク) ライダースジャケット
- 3.HELLCATPUNKS(ヘルキャットパンクス) ライダースジャケット
1.Metamorphose temps de fille(メタモルフォーゼ) コートワンピース
価格:20000円前後(古着) 素材:失念
2018年ごろ購入
写真が粗く、服の魅力を伝えきれていないのが申し訳ないです。
2017年から2018年ごろの一時期、ロリィタ服の世界にはまっていた。わたしのファッションの好みを知る人からすると意外かもしれない。たしかに個人的な好みからは外れているので、自分で着たいとは思わなかったが、このラフ&リラックスの時代にガチガチに着固めて世界観を体現しようとする孤高の精神性に惹かれたのだ。好きが高じてロリィタ服が登場する自主映画まで作った。
【宣伝】シスターフッドをテーマとして自主映画制作をしています。DMまたはメアドへお気軽に一報ください。作品URLを送らせていただきます。 pic.twitter.com/vONElv8qcl
— 呉樹直己🐢🦪 (@GJOshpink) 2018年9月13日
わたしがロリィタ服に惹かれる理由は、歌人・小説家の川野芽生さんがエッセイで書いているそれと近いので引用する。
ロリィタに憧れる理由として挙げたいのが、お洋服のかわいさ美しさもさることながら、確固とした美学や思想を掲げている点だ。
ロリィタのかわいさは、「ほどほど」とか「好感度」とか「モテ」といったワードからは程遠い。
世間の目を気にせず、男受けも求めず、阿ることなく自分の信じるかわいさを貫いて凛と立つ強さ。
ことに女性は控え目で謙虚であることを求められるこの社会で、自分こそお姫様だとあえて宣言する誇り高さ。
それはわたしの美学にぴったり一致していた。
自分が選び取りたいかわいい格好に、「モテ」とか「愛され」といった言葉が纏わりついてくることを鬱陶しく思うわたしは、ロリィタという文化を取り入れることでその美学を明確に掲げたかった。
ロリィタファッションに憧れたのは、かわいく美しく、かつ「モテ」や「愛され」や「男ウケ」をきっぱりと拒絶していたからだ。
着る人も作る人も、「男性から」「女性として」「愛される」ことを目的としていない。そもそも何らかの目的のための手段としての装いではない。この装いは、それ自体が目的で、他の何物にも奉仕していない。この装いをすること自体が、お洋服を愛することであり、自分を愛することであり、それ自体で充足していて、他者からの愛とか承認なんて必要としていない(お洋服に愛されているとは感じるかもしれない)。
ロリィタ服には、「女の子らしい」と形容されるような要素がたっぷり詰め込まれている。フリルにリボンにレースにシフォン。でもそれは、「女性たるものみなこうあるべきだ」というメッセージを発してはいない。むしろ「女性たるもの……」といった価値観の信奉者なら引いてしまうだろう。この社会での「女性」は、控え目で謙虚で受け身であることが求められるし、何事も「ほどほど」が求められるから、「好きなもの、全部この手で掴み取りたい! 掴み取りました!」と全身で主張しているような、「そんな服を着られるなんて、自分のことをかわいいと思っているんだ?」と言われたら、「当然」と誇り高く言い返すような装いはジェンダー規範とは食い合わせが悪すぎる。
川野さんは実際に全身ロリィタ服をまとうところまで踏み出しているが、わたしの場合は自分で着たい服は着たい服としてべつにあったので、ロリィタ服を揃えようとは思わなかった。代わりに、ロリィタ系のブランドで、着たい服に近いテイストの服を探すことはたまにしていました。このメタモルフォーゼのコートワンピースは、その一環として買った。出会いは、当時住んでいた地方都市にたった一軒だけあった、ロリィタ服を扱う古着屋である。この県には新品のロリィタ服を扱う店は一軒もないので、県内唯一のロリィタ服の店でもあった(わたしが住んでいたころはね。今は違うかも)。わたしの家からは電車やバスを乗り継いてかなりかかったが、何回か通いました。
服を見ていく。生地は総別珍である。別珍とは表面が毛羽立っている織物のことで、ビロードやベルベットやベロアの仲間である。独特の光沢があり、途方もない気品と重厚感がある。実際、物理的にも重たい。ウエストはリボンの編み上げになっており、砂時計のようなウエストを作ることができる。2018年当時はすでにオーバーサイズのコートが氾濫しており、ウエストを絞るコートは貴重だったので感動しました。裾には生地と同じ黒い糸で百合や薔薇の刺繍が施してあります。うっとりするくらい贅沢。
上記の写真を見てもわかる通り、濃色のベロア系の生地はホコリが目立つので、今のわたしなら買わないと思います。重たくて、サイズもやや苦しかったのを我慢しながら着ていたが、徐々に精神疾患の症状が重くなり、心身の健康第一の生活を志向せざるを得なくなったので手放しました。着ているとよく褒められた。近所のイオンの服屋に入るなり店員さんから「お姉さんめちゃくちゃお洒落じゃないですか。もうなにも買う必要ないっすよ」という物凄いお世辞をいただいたときに着ていたのもこれ。
川野芽生さんの歌集を貼っておきます。帯にも引用されている「harassとは猟犬をけしかける声 その鹿がつかれはてて死ぬまで」が鮮烈。
2.MILK(ミルク) ライダースジャケット
価格:10000円前後(古着) 素材:おそらくポリエステル100%
2018年ごろ購入
これも上記のロリィタ系古着屋で買いました。MILKは原宿のストリートカルチャーを牽引してきたブランドの一つで、ロリィタやパンクなど個性的なテイストが特徴。こちらのライダースは短毛のフェイクファーで、白黒のレオパード柄。MILKらしくスウィートな要素が散りばめられており、よく見ると袖口や裾の黒いパイピングは小さなフリルになっているし、随所に大粒のフェイクパール飾りがついていた。全体的にはレオパード柄のクールさよりもガーリーを志向しているようだ。わたしは直球でかっこいいアイテムとして着たかったので、パール飾りは取ってしまった。
こちらも、サイズがやや苦しく、生活改善の一環として手放しました。
3.HELLCATPUNKS(ヘルキャットパンクス) ライダースジャケット
価格:10000円前後 素材:表地 綿100%、裏地 ポリエステル100%
2018年ごろ購入
これも、ロリィタ系ブランドを見ていたころの買い物です。ヘルキャットパンクスはパンクファッション・ロックファッションのブランドなのでロリィタではないが、いわゆる原宿系・青文字系としてロリィタ系ブランドと一緒に語られることが多い(ロリィタブランドの定義や歴史を語るにはかなりセンシティブな議論を要するが、わたしは詳しくないので「いわゆる原宿系・青文字系」とあえて大雑把に書いています。詳しい人からすると間違いもあるかもしれませんがご容赦ください)。このライダースはたしか新品で買った気がする。当時住んでいた県ではなく、出先のどこかの店で買いました。デニム生地なので、革のライダースでは暑い時期にGジャン感覚で着ようと思って買った。しかし、当時持っていたトップスはデザイン性の高いものが多かったので、襟のレオパード柄と喧嘩してしまって意外と相性が悪く、出番は多くなかった。じきに手放しました。
公式サイトを見ると、同じに見えるものが売っていたので貼っておきます。
12571円とあるが、わたしが買ったときはもう少し安かった気がする。セールだったのか、値上がりしたのか。
MILKとHELLCATPUNKSのライダースジャケットを手放したので、今手元にあるのはHAREのライダースのみです。過去記事でも紹介しました。
実は、体重が増えて体型が変化したことでこのライダースも少しきつくなっており(ライダースは元々着心地のいい服ではないが、それにしても許容度を超えてきており)、2022~2023年の冬は結局一度も着なかった。新しいライダースを買うか、あるいはライダースという服自体を生活の選択肢から外すことも考えています。肌寒いときのアウターはジャケットやカーディガンだけにする、と。また試行錯誤してみて、決まったらブログに書こうと思います。
以上、今日の着道楽日記でした。