先日、初めてエッセイ同人誌を制作しました。
2024年5月19日に開催された文学フリマ東京38で初頒布し、ありがたいことに完売しました。BOOTHでの通販と書店での取り扱いぶんも完売しております。
本文試し読みはこちらから。増刷検討中ですので、頭の片隅で気にかけておいていただけると幸いです。
同人誌を作るのは生まれて初めてでしたが、なんとか完成させることができたので、制作の様子を時系列順に記録しておきます。過去記事では、イベント申込からイラスト依頼・執筆・入稿、イベント準備・SNS宣伝、イベント開始から終了までの様子を記録しました。出店料、イラスト依頼料、印刷費、売上などの具体的な金額も開示しています。
今回は、イベント終了後に行った作業を記録していきます。収支も公開します。同人誌制作はとりわけ金銭面が伏せられることが多いので、初心者の一例として参考になれば幸いです。
1.文フリ後の作業
5月19日 BOOTH公開
帰宅後、通販サイトのBOOTHをオープンした。BOOTHは、知名度が高く、個人でも管理しやすく、匿名配送に対応しているプラットフォームとして選択した。
文フリ後の夜は疲れているだろうと思ったので、細かい設定は事前に済ませてあり、在庫数を入力して公開するだけでいいようにしてあった。
制作記録(1)にも書いたように、文フリのサークル名はわかりやすさを第一に優先したが、BOOTHストア名と注文受付メッセージには多少の遊びを加えた。
現在は在庫がないが、再販する予定なので、よければショップをフォローしてお待ちください。
事前に自宅搬入にしておいた30冊に加えて、文フリの残部も通販に回すつもりだったが、ありがたいことに完売して残部が発生しなかった。よって、自宅ぶん30冊のうち、自分のぶんの予備数冊や、手渡しで渡すと約束していた親しい友達のぶんなどを除くと、通販に回すことができるのはたった11冊になってしまった。
在庫が少なくなったことで、SNSのDMを通じた直接販売は断念した。BOOTH運営元のピクシブ社は過去にトランスジェンダーの社員へのハラスメント問題を起こしており、ボイコットしている人もいる。わたしの本ではトランスジェンダー差別についても書いており、無関係な話ではないので、BOOTH以外の販路は用意しておくべくだと考えていた。しかし在庫数が逼迫している状態だと二重注文が発生しかねないため、やむを得ず過去記事から直接販売の案内を削除した。
11冊は小一時間で完売した。文フリ会場で買い逃して通販でも買い逃した人もいるのではないかと思う。本当に申し訳ありません。再販するので気長にお待ちください。
BOOST機能で投げ銭をしてださった方もいた。本当にありがとうございます。
総売上は21070円となった。本は1500円、匿名配送の送料が370円で、1冊1870円。1870円×11冊=20570円、投げ銭500円を足して21070円である。
あんしんBOOTHパック(自宅から匿名配送)コースの場合、サービス利用料は、ブースト金額を合わせて(商品価格+送料)×5.6%+22円である。わたしの場合、21570×0.056+22=1230円(小数点以下切上)。あまりわかっていないので目安として読んでください。振込手数料は、受取金額が30000円未満の場合は200円。つまり、わたしに入ってくる金額は21070円-1230円-200円=19640円くらいか。来月振り込まれたら正確な金額がわかるだろう。
5月20日 書店訪問
同人誌制作記録を書きはじめる。今回の経験は、金銭面含めて公開しようと決めていた。
同人誌制作は利益を度外視すべしという風潮が今も残っているのもあってか、収支は公開されないことが多いです。今回わたしの初めての同人誌制作は、印刷費やイラスト依頼料、取置数、売上冊数など、金銭面含むあらゆる数字をできるだけ公開するつもりです。初心者の一例として。
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2024年5月17日
売上がめちゃくちゃ少なかったら照れちゃうので、たくさん買ってね!
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2024年5月17日
売上が少なかったら恥ずかしいだろうなと思っていたが、結果的に完売し、最低限恥ずかしくなくてよかった。
透明書店様で取り扱いがはじまったので、ご挨拶に伺い、店頭を撮影させていただく。
今日は12〜19時営業です。お待ちしています。
— 透明書店 (@tomei_1111) 2024年5月20日
呉樹直己さん『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』入荷しています。昨日初売の初版はすでに完売(!)とのことです。ぜひ手に取ってみてください。 pic.twitter.com/jDDimCZ0JZ
今回は事前連絡はせずに来店した(過去のメールのやり取りの中でいつか書店にお伺いしたいですとは言ってあった)。商業出版本だったり大型書店だったりしたらまた作法も変わってくることだろう(今回のわたしの作法が正しいとも限らないが。この記事は同人誌制作にあたってわたしの行動を時系列順に記録したものであって、推奨マニュアルではない)。
東京・蔵前の透明書店 @tomei_1111 様にお邪魔してきました。
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2024年5月22日
呉樹直己『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』置いていただいてます。
開放的な店内に、新しめの人文書を中心に小説、短歌、ZINEなどバラエティ豊かに並ぶ素敵な本屋さんでした。
アクセス:蔵前駅 A5出口 徒歩1分 pic.twitter.com/IGhUtio3XB
わたしは、新刊から『読書と暴動』(ナージャ・トロコンニコワ著、野中モモさん訳)、何気にまだ買っていなかった『マイノリティだと思っていたらマジョリティだった件』(主に吉野靭さんの文章を目当てに)を買わせていただきました。 pic.twitter.com/fslAwWThbK
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2024年5月22日
夜は、文フリのために上京していたエディプスちゃんと打ち上げをする。エディプスちゃんは気づけば付き合いの長い友達で、「架空の文藝誌 魚は銃をもてない」を制作している小説書きである。第3号となる今号は、インターネットのご縁でなんと、わたしの同居人である「先生」が寄稿している。買った人はぜひ読んでみてください。現時点では通販はないようだ。
【お知らせ】来る5月19日(日)の文学フリマ東京に「みみず書房」として出店します。架空の文藝誌『魚は銃をもてない』の新刊を頒布しますので、ぜひ遊びにいらしてください。今回もすばらしい執筆陣にて。ステキな表紙はアーティストのradicalOta(@TivruskyPepelu)さんに描いて頂きました🐟 #さかもて pic.twitter.com/NXPy8PGVEG
— エディプスちゃん@文フリ東京 ゑ-51 (@Not_Tonight_Oed) 2024年5月1日
5月21日
疲れてくたばっていた。BOOTHでは「注文後2日で発送」に設定したがまだ発送できていない。
5月22日
相変わらずくたばっており家から出ることができず、発送失敗。
実は通信制大学のテスト期間なので、文フリ前後で滞っていた勉強に励む。
5月23日 発送作業
ようやく発送。遅くなってすみませんでした。
梱包には、ダンボールワンで購入したA5厚紙封筒とA5ビニール袋を用いた。記録(2)に書いたように、厚紙封筒が50枚1958円なので1枚39円、A5ビニール袋が100枚803円なので1枚8円。単純計算で1冊にかかる梱包資材は47円くらい。11冊梱包した経費は47円×11冊=517円くらいか。
BOOTHのガイドに従って、ファミリーマートから発送した。
発送作業を終えて、文フリ関連のタスクは一段落する。
フォロワーさんから透明書店様での購入報告をいただきハッピー。
5月24日
透明書店様に納品したぶんが完売する。
『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』、当店在庫あと1冊です。お早めにどうぞ。 https://t.co/y1dQ3cVYPX
— 透明書店 (@tomei_1111) 2024年5月24日
完売しました!! https://t.co/y0joUlgRTW
— 透明書店 (@tomei_1111) 2024年5月24日
透明書店様への納品数や掛率などは、わたしの一存で開示できることではないので非公開とする。
2.登場した金額まとめ
必ず必要だった金銭
●出店料 -7300円
●イラスト依頼料 -35000円
●印刷費 -67421円
工夫次第で節約できた金銭
●設営のためのグッズ -3269円
●ブース掲示物印刷費 -1000円
●当日の飲食物 -2111円
うち
おやつ・飲料 -1818円
昼食 -293円
通販にかかる金銭
●通販用梱包資材 -2761円
文フリの金銭
●イベント売上 +72000円
うち
通常料金 44冊 66000円
障害者割 6冊 6000円
通販の金銭
●通販 +19640円
うち
本売上 +16500円
ブースト +500円
送料 +4070円
サービス利用料 -1230円
振込手数料 -200円
→この時点での収支
(72000+19640)-(7300+35000+67421+3269+1000+2111+2761)=-27222円
含まれない金銭
文フリ会場への交通費、書店様からの収入 など
3.感想
イベント・通販ともにスムーズに完了し、初出店としては大成功の部類だと思う。お世話になった皆さん、本当にありがとうございました。
制作記録(1)に書いたように動機は「文フリ東京に出る」ことが先行していたが、執筆自体ももちろん楽しく、いい経験になった。本の内容も、未熟な部分はもちろん多いが、現時点でのわたしの力を発揮することができたと思う。これからも精進していきたい。
これにて「文フリ東京に出る」は実績解除したが、もちろん東京会場だけが文フリでない。今後は、機会があれば、あえて縁もゆかりもない地方会場に遠征するのもやってみたいと思った。
最終的な収支は赤字だが、覚悟の上だったので問題はない。同人誌制作は黒字になることのほうが少ないと聞いている。
読みたいと思ってくれた人全員に行き渡らなかったのが最大の心残りである。80冊という部数は結果的には少なすぎた。マーケティングの失敗(逆に成功?)として受け止めるしかない。
以上、初めての同人誌制作の記録(1)~(4)でした。
『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』あとがきに書いた謝辞を転載して、結びの言葉とします。
わたしの生活を支え、執筆環境を与えてくださった「先生」こと吉野茉莉(よしのまつり)さん
わたしの簡素なラフから素晴らしい表紙を仕上げてくださった斉藤鳩さん
校正に協力してくださったMさん
障害者のノブレス・オブリージュをともに果たしていくと誓いあった愛すべき先輩、Kさん
濁流を踏みとどまり、この本を手に取ってくださったすべての皆さんに
心から感謝申し上げます。
2024年5月 呉樹直己