先日、初めてエッセイ同人誌を制作しました。
2024年5月19日に開催された文学フリマ東京38で初頒布し、ありがたいことに完売しました。BOOTHでの通販も完売し、現在は東京都・蔵前の透明書店様に小数部がある状況です(そろそろ完売するかも)。増刷検討中です。
今日は12〜19時営業です。お待ちしています。
— 透明書店 (@tomei_1111) 2024年5月20日
呉樹直己さん『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』入荷しています。昨日初売の初版はすでに完売(!)とのことです。ぜひ手に取ってみてください。 pic.twitter.com/jDDimCZ0JZ
本文試し読みなどはこちらから。
同人誌を作るのは生まれて初めてでしたが、なんとか完成させることができたので、制作の様子を時系列順に記録しておきます。過去記事では、イベント申込からイラスト依頼・執筆・入稿、イベント準備・SNS宣伝の様子を記録しました。出店料、イラスト依頼料、印刷費などの具体的な金額も開示しています。
今回は、イベント当日の様子を記録していきます。同人誌制作はとりわけ金銭面が伏せられることが多いので、初心者の一例として参考になれば幸いです。
1.文フリ当日
①開場前
前夜に荷造りは済ませたのでやることがない。最後に、出店者票を持ったかだけ確認する。
服装は、とにかく疲れにくさを第一に優先して、せっかく人前に出るのでお洒落さも考慮した。
トップスはオールセインツのアロハシャツを選択。通気性がよく、汗も吸ってくれて過ごしやすい素材。ボトムスはオムプリッセイッセイミヤケのワイドパンツ。締めつけがなくてとにかく楽。オムプリッセの着やすさについては過去記事でも紹介しています。
ピアスはラリカのアシンメトリーピアスと、トランスジェンダープライドフラッグのピンバッジをつけた。
ピンバッジは本来はピアスではなく、肌に触れることを想定していない製品なので、金属アレルギーのリスクなどは自己責任だが、イベント時だけなら平気だろうと判断。フェミニズム系雑貨を扱うオンラインショップのdoughnutで購入したもの。
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行きがけに昼食としてコンビニでおにぎり2個を購入。293円。その他のおやつはすでに用意してある。
出店者は10:30入場開始である。10時に東京流通センターに到着。売り子の高島鈴さんと合流し、出店者票を渡す。本当は郵送するつもりだったが、前回の記事に書いたように精神状態が悪かったのでできなかった。わたしが全員分の出店者票を持っていると、万が一わたしが遅刻したときに売り子も待ちぼうけになるので、次回からは早めに郵送するようにしたい。
高島さんは自作のフリーペーパーと、委託販売物の『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』を持ってきてくれる。
②設営
10:30に入場。本はしまや出版の直接搬入サービスによってブースに届いている。会場に50冊、家に30冊届くように手配した。これで足りると予想していた(フラグ)。
ポスタースタンドを貸してくれる藤井佯さんは12時の一般入場開始にならないと入場できないので、ポスターを立てる以外の作業をする。よって早々にやることがなくなる。
この時点でのブースの様子はこちら。これに加えて、ポスタースタンドでメインビジュアル(本の表紙)と商品一覧(お品書き)を掲げた。
前回の記事に書いたように、とにかくブース番号とサークル名が目立つことを意識した。
会場では、運営から繰り返し「(出店者の証である)リストバンドを失くさないように」との注意喚起がアナウンスされていた。それはいいのだが、全部のアナウンスが「リストバンドを失くされるとこちらとしては一般入場チケットを買ってくださいと言わざるを得ません」というやけに持って回った言い方なのが気になった。「こ、ち、ら、と、し、て、は! 一般入場チケットを買ってくださいと、言・わ・ざ・る・を・得・な・いので、十~分、ご注意願います!」ってマジで4回くらい言われましたからね。普通に「リストバンドを失くさないでください。紛失されると一般入場チケットを買っていただきます」でいいのではと思ったが、よほど紛失トラブルが多くて運営も苦労しているのかもしれないですね。コミケの有名なフレーズ「おかえりなさいオタクさま、お帰りくださいお客様」みたいなもので、お客様気分で出店するのではなく、「場」の一員として主体的に動いてほしいというメッセージと受け取った。マジのお客(一般来場者)のお客様気分を否定するのなら、今の大規模化・商業化した文フリ東京においては無理筋だと思うが、これは出店者向けのアナウンスなのでまあセーフなのかもしれない。一般入場開始後はこのアナウンスは1回もなかった。
文学フリマ、とりわけ東京会場の運営方針に対しては批判の声もあるが、過去記事に書いてきたように個人的には支持している。
③設営完了、イベント開始
12:00、一般入場開始。早々に売れていく。
藤井さんが来て、委託販売物『沈んだ名 故郷喪失アンソロジー』と、ポスタースタンドを貸してくれる。本当にありがとうございました。
これでブースが整った。
記録として、実際の写真を置いておく。終始バタバタしていたので、完売後に数枚しか撮影できなかったのが残念。次回以降のためにもっと撮りたかった。
一番高い位置には、ブース番号とサークル名とメインビジュアル(表紙画像)を掲げた。番号はA4、メインビジュアルはA3。
それより一段低い位置に商品一覧を掲げた。A4横が2枚でA3サイズとした。
高島さんがフリーペーパーの宣伝をくっつけている。
ブース前にはA3でブース番号を吊り下げた。とにかくブース番号が一番大事。B5で障害者割のポップも下げた。
障害者割のポップは、対象商品であるわたしの本の横にもB5サイズで平置きした。
ブース番号と違って障害者割のポップは、あまりに大きくても威圧感を与えたり利用者の心理的安全を損ねたりする恐れがあった。迷った末B5サイズを2個としたが、ブース前に吊り下げるほうは普通にA4サイズでよかった気もする。
④販売
体感としては、ほぼひっきりなしに買いに来ていただき、トイレに行くタイミングもお菓子を食べるタイミングもなかった。本当にありがたいことです。
自然に役割分担ができ、ブース主であるわたしが本のお渡し、高島さんが金銭の管理という分担になった。
売れた数は正の字で管理したが、通常料金と障害者割で金額が違うので、高島さんには不便をかけた。お客が「これください」と言った時点ですぐに線を引くことができないのである。
話しかけてくれる方もいて嬉しかった。その喜びをスムーズに表現するために、わたしは会話デッキを2個用意してあった。まずは「ありがとうございます! 予報より暑すぎなくてよかったすね。雨降ってましたか?」。5月19日は予報より涼しくて比較的過ごしやすい天気だったのだ。もちろん暑ければ「暑い中ありがとうございます! めっちゃ暑いすよね。もう夏ですね」と言うつもりだった。次に、「これから買い物すか?」。先方からいろいろ話してくれるなら先方にお任せして、リズムが途切れそうならこの2つのデッキを適宜差し込んで、スムーズな会話を楽しむことができた。わたしはいわゆるコミュニケーション能力が高いほうではないので、内心とても喜んでいても喋りにうまく反映できないことがあり、スムーズに喜びを表明してお客様に気持ちよく買っていただくためには必要な準備であった。とはいえこうやって公言してしまうと角が立つので、皆さんはブログに書いたりなんかせずにこっそりとデッキ構築したほうがいいです。わたしは知見はなんでも書きたい人間なので書いたが。
そうこうしているうちに13:30を過ぎ、気づけば半分以上が売れていた。取り置き分をあわてて除外したらなんと残りが10冊になった。しかも、残りが少ないことをX(Twitter)で告知するのすらタイミングがなくて遅れた。
【本当にごめんなさい】
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2024年5月19日
あと9冊
【ありがたいことです】
14:15ごろ、『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』は取り置き分を除いてすべて完売した。イベント開始からわずか2時間ちょっとであった。
わざわざ買いに来たけれど買えなかった人がいることが推察され、本は買えないしブースに呉樹もいないのでは申し訳ないので、この時点で自分の買い物は断念。予定では、適当なタイミングで高島さんにブースを任せて少し買い物に行くつもりだった。
その後はずっとブースで残りの販売物を売りつつ、話しかけてくれる人と会話して過ごした。
委託販売物も好調で、15:20ごろには『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』(全20冊)は残り1冊、『沈んだ名 故郷喪失アンソロジー』(全11冊)は残り2冊となる。
ブースに来てくれたけど買えなかった人に「詫びカメスタンプカード」を渡すようになる。値札カードを多めに持ってきておいてよかった。
希望者に詫びスタンプ&イラストカードをお渡しします。 pic.twitter.com/7AuCnLr8eI
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2024年5月19日
15:40ごろ、全有料配布物が完売。16:30ごろ、高島さんのフリーペーパーもなくなり、全配布物が終了。
その後も最後までブースに座り、イベント終了した。
『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』の最終的な販売数は、通常料金44冊、障害者割6冊。うち取り置き希望が6冊(参考:文フリ時点で呉樹直己のXフォロワーは約3100人。その他のSNS(インスタ・マストドン・ブルースカイ)の総フォロワーは約600人。同じ人と複数のSNSで繋がっていることも多いので厳密な人数はもっと少ない)。
売上は、1500×44+1000×6=72000円となった。
⑤イベント終了
藤井さんと合流し、『沈んだ名 故郷喪失アンソロジー』の売上を渡す。ポスタースタンドを返却。本当に助かりました。
高島さんに『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』の売上を渡す。高島さんを通じて現代書館の編集さんに渡してもらう。
高島さんは商品完売後、わたしが来客対応をしている間に黙々と金銭計算を済ませてくれた。本当に助かりました。
2.打ち上げ
高島さんと浜松町のデニーズでささやかな打ち上げをする。浜松町のデニーズはキャリーケースを預かってくれるが、帰るとき忘れないように気をつけましょう。これが今回の記事で一番伝えたいことです。わたしは危うく忘れるところでした。
周囲は文フリ帰りと思しきオタクばかりなので会話には多少気を遣った。皆さんもイベント帰りの会話には気をつけましょう。
3.まとめ・反省点
●とにもかくにも用意した冊数が少なすぎた。イベント前半で会場ぶん50冊が完売したことから、余裕を持って売るためには会場ぶんだけでも100冊は必要だったかもしれない。残りが少ないことに気づいて告知するのすら遅かった。会場で買うつもりで来て買えなかった人もいると思う。通販も1時間足らずで完売したので、通販ですら買い逃した人もいるだろう。本当に申し訳ありません。増刷検討中なので、気長にお待ちください。
●完売後にBOOTHに誘導するQRコードのポップを作っておくべきだった。実は藤井さんからはあれば便利なものとしてアドバイスいただいていたのだが、前回の記事に書いたように精神状態がよくなかったのと、まさか完売はしないだろうと思って作っていなかった。
●試し読みする人の視線をさりげなく見ていると、目次を見て興味を深めてくれた人が多いように感じた。『クィアネスとメンタルヘルスのアイデンティティ・ゲーム』は序章のあとに目次が挟まる構成なので、ぱっと開いただけでは目次がなく、内容がわかりにくい。この短所には気づいていたので裏表紙に目次を配置したのだが、来場者の視線を裏表紙に誘導することもスペースの都合でできなかった。次回があれば工夫したい。
●心配していた障害者割も、スムーズに運用できたのではないかと思う。ご協力ありがとうございました。
●イベント終了後に運営から「次回の文学フリマは6月岩手です」とアナウンスされたとき、一瞬「え、次回といえば12月東京じゃね?」という雰囲気が漂ったので東京モンがよ! と思った。
●目立ったトラブルはなく、初出店としては大成功の部類ではないかと思う。売り子の高島鈴さん、最初から最後まで助けてくださった藤井佯さん、お隣・後方のブースの方々、執筆中に励ましてくださった方々、購入してくさった方々、本当にありがとうございました。
4.登場した金額
●昼食代 293円
●自作の売上 72000円
←通常料金1500円44冊、障害者割1000円6冊
以上、文学フリマ東京38当日の様子でした。
最終的な収支などは次回の記事で開示します。
初めての同人誌制作の記録(4)に続く