連作 「気違ひ病院」
メンクリと片仮名で誤魔化してもなほご近所いはくきちがひの院
障害者手帳を取得し国によるお墨つきを得て三度目の冬
心因の動悸では死なぬと言ふ医者をおまへは毎夜疑つてゐる
アイマスク、瞑想、アロマ、ホットミルク、万策を圧倒するデパス
満員電車で壊れた心を治しませう通院がんばれ満員電車で
八時間週五労働がデフォルトの国に生まれたそして壊れた
当院のカウンセリングルームには時々しやべる壁がをります
昨年の医療費控除総計は15万7,200円也
働けてゐたら障害年金は無理ですと言ふ主治医のペン胼胝
パティスリーも病院も床は白であり自殺念慮を糖衣で包む
売店のLEDはしらじらと人と駄菓子を均てん化する
シーリングファンの影が繰り返し繰り返し落つ躁うつに似て
主治医には症状と呼ばれ社会にはお気持ちと呼ばれ 昼飯を食ふ
気分安定薬の常よ うつ寄りで安定させられ一生過ごす
あの人もあの偉人も躁うつでした いかがでしたかブログが告げる
ヴァージニア・ウルフおまへのコートには丈夫なポケットついてて便利ね
神の声は精神病の症状であつたとしても聖しジャンヌは
メンタルと同じくらいにデンタルも大事にせよと健診の知らせ
簡単に老後の話などしてくれる歯科医の勧めでインプラントす
死にたいとカレー食べたいが同じ口からまろびでる現実(リアル)を生きる