会うといつもハグとキスを交わす友達がいる。直近では2020年3月に会う約束をしていたけれど、中止にした。次いつ会えるのかわからない。いつになったらわたしたちは心置きなく会える?
元より、精神的弱者同士の縁は儚い。お互いの体調がいいときでないと会えないし、LINEなどでやり取りをしていても、体調の悪化や、長期の入院や、ときには死没によって、簡単に途絶える。過去の人間関係を通じて骨身に染みて実感してきたこの真理が、COVID-19の流行拡大によって、いまや万人に通じるものになってしまった。明日大切な人が死ぬかもしれないという、シンプルな可能性。こんなことなら危険を冒してでも会って、抱きしめあって、口づけておけばよかったと、いつか後悔するのだろうか?
べつに初対面からそんなに距離が近かったわけではない。初めて触れあったのは2年前だったと思う。夏、もう一人の友達も交えて、三人で、一晩中手を繋いだり頬をくっつけたりしていた。全員まあまあ頭が沸いていた。泊まらせてもらったアパートにはエアコンがなかったが、頭を沸かせていたのは暑さではなく、祭りの熱狂だった。シャンパンを飲んで、打ち上げ花火を上げて、祝おうじゃないか。生存を。邂逅を。線路が近い部屋で、開け放した窓の外からは西武新宿線の轟音が聞こえてきて、でも25時を回るとようやく静かになって、架空の打ち上げ花火の残響だけがいつまでも残っていた。以上、ただの昔話。
以下、不特定多数への私信。ぜんぶが終わったら、ハグとキスを交わそう。照れくさくても、疫病明けという大義名分があるじゃないか。会おう。何度も夜を越えてきたことを讃えあおう。みんな夜明けを生きている。