書生として、衣食住と小遣いと勉学に集中できる環境を提供していただく代わりに、わたしが先生から委託されているのは、主に片づけ・掃除・洗濯・炊事・ゴミ出し。そして、朝6時半に先生を起こして出勤を手助けすること。および、これらに付随するこまごまとした「名前のない家事」だ。わたしは家で家事労働をして先生の勤労・執筆をサポートし、先生は外で賃労働をして諸々の費用を捻出する。われわれは、このような役割分担で共同生活契約を締結している。
任されたタスクをこなすにあたって、まずは、先生よりも猫に気を配ることから始めた。猫は人間より偉いからとかそういうネタではなく、猫は人間の不注意で死に得るからである。先生は、精神障害者(双極性障害)とはいえ、自律した人間であるので、わたしのミスで即死する可能性は低い。行き違いがあっても、言葉でコミュニケーションすることもできる。しかし、猫は違う。有害なものを誤食させたり、うっかり窓を開け放して脱走させたりすると、取り返しのつかない事態が起こり得る。先生の心身を健やかに保ちたいなら、まずは猫を大切にすることからだと判断した。わたしは、自分では猫を飼いたいと思ったことがないので、「猫を気遣う」という回路がデフォルトでは脳内にない。ないのなら、意識して拓いていくしかない。玄関の脱走防止柵を必ず閉めるとか、網戸にはストッパーをつけるとか、お試し同居期間中に先生からいろいろ教わって、自分でもリサーチして、身体レベルで癖づけることをまず優先した。最愛の猫がいなくなったら先生も虚無になるし、先生が虚無になったら居候のわたしも後に続くしかないので、猫がわたしの生命線といえる。
以上を踏まえて、引っ越しの際に処分したものが二つある。
一つは、花瓶。
過去記事に書いたように、わたしは部屋に花を飾る習慣を持っていた。
しかし、多くの花は猫にとって有毒とのことなので、花瓶はすべて処分した。べつに惜しくはない。生活上の変化によって趣味との向き合い方が変わるのも人生の妙味であろう。
なお、今いる地域は前に住んでいた地域よりも緑が豊かなので、植物に接する機会はさほど減ってはいない。今後は、路傍の草花に目を留めていこうと思う。
そしてもう一つ捨てたのは、コレール食器だ。
コレールとは、陶器ではなく強化ガラスでできた食器で、非常に軽くて丈夫で扱いやすい。表面がツルツルで汚れがすぐに落ちるし、電子レンジ・オーブン・食洗機OK。外見もシンプルイズベストで非常に美しく、目にうるさくない。これはADHD向けの食器だと思って、愛用していました。うちにある食器は、一部を除いてすべてコレールで統一していた。
公式サイト Winter frost white(ウインターフロストホワイト)|Corelle Brands - コレール ブランズ ジャパン
詳しくは、過去の記事でも何度かレビューしています。
しかし、過去記事でも注釈しているように、コレール食器には、割れるときに破片が激しく飛散するというデメリットがあるのだ。強化ガラスの性質として、経年劣化で徐々にヒビが入っていって、ある日突然触ってもいないのに破損することもあるらしい。コレールのメリットとして割れにくいことがあるので、矛盾しているようですが、割れるときは割れるし、強化ガラス特有の飛び散り方をするらしいです。これは、ペットや赤ちゃんがいる家には向かないのではないか。
公式サイトに説明があります(リンク先PDF)。
コレールはガラス製品です。一般のガラス製品や陶磁器より丈夫にできていますが、決して「割れない」「欠けない」ということではありません。
●硬いものにぶつけたり落としたりするなどの急激な衝撃を与えないで下さい。割れることがあります。
●また、そのとき割れなくても、ついた傷が原因で後になって、思わぬ時に割れることがあります。
●場合によっては破損した時、音をたてて、細かく、鋭利な破片となって激しく飛散することがありますので注意して下さい。また、底が抜けるように割れることがあります。洗浄やご使用時はていねいにお取扱い下さい。
猫は賢いし、人間よりも反射神経がいいだろうけど、触れてもいない皿から唐突に破片が飛び散るのはさすがに避けられないんじゃないでしょうか。ゼロ距離で皿が爆発して、目にガラス片が刺さって怪我でもしたら大変なので、コレール食器はすべて処分した。 先生の家には十分な数のお皿があったので、いずれにせよわたしが食器類を持っていく必要はなかった。
ただし。からあげクンのお皿は持っていきました。
からあげクンのお皿とは、ローソンの期間限定ポイントを貯めると無料でもらえる可愛いお皿のことです。
からあげクンのお皿の愛好家だから、ローソンのスタンプをちまちま貯めて収集してるんですけど、そろそろ十分かなの気持ちになってきた。 pic.twitter.com/A6qt7Tvz6I
— 呉樹直己 (@GJOshpink) 2019年11月5日
過去の記事でも紹介しています。
わたしの持ち物を先生の家に搬入するにあたって、先生のほうからお願いされたことはたったひとつ、「私もあのからあげクンのお皿が欲しいです」だったのだ。
よって、食器類のうちこれだけは梱包しました。全部は要らないだろうから、4枚だけ。もちろんこのお皿は強化ガラス製ではなく陶器なので、猫にも危なくない。 コレールと同じく電子レンジ・食洗機対応なので十分実用的です(電子レンジ対応でないお皿だったら、いくらからあげクンファンでも集めません。日常生活に割けるリソースが少ない抑鬱ADHDなので、 大前提として、実用的でないお皿は使わない)。
こうして、からあげクンのお皿は、新しい家でも使われることになった。
あと、ニトリのヌン茶スタンドも自主的に持ってきました。
ヌン茶スタンドとは、アフタヌーンティーで使う、ちっちゃいお菓子とかを並べるタワー型のお皿スタンドのことです。わたしが勝手にこう呼んでいるだけで、正式名称はよくわからない。 ティースタンドとかプレートスタンドとか呼ばれているらしい。Twitterのフォロワーさんがヌン脚立と呼称されていて笑ったことがあります。ヌン脚立、なんて伝わりやすいんだ。
ADHD流の在宅アフタヌーンティーの楽しみ方についてはこちら。からあげクンのお皿も活躍しています。
いずれ、先生ともヌン茶をできるかもしれない。
こうやって、ささやかな未来の予定を積み重ねながら、今日も三匹で暮らしている。