敏感肌ADHDが生活を試みる

For A Better Tomorrow

香水の銘柄と向精神薬の名前は大事な秘密だからインターネットには書かない。秘密じゃないとしても、語彙力がないから書けない。

 

 

 

文庫本の失われた時を求めての上に香水瓶が乗っている。

 

冬用のコートを洗濯しようとして手に取ると、わたしがこの冬によくつけていた香水のラストノートがわずかに漂ってきて、懐かしい旧友に再会したような気持ちになった。つい10日前までは着ていた&つけていたものなのに。

香りは記憶に残りやすいという。五感の中で、人の記憶に最も強く結びついている感覚は嗅覚だそうだ。有名な小説にも、紅茶とマドレーヌの香りをきっかけに追憶の旅に出るというくだりがあった。であれば、いつもの香りからほんの少しの間遠ざかったのちにまた嗅いでみると、疑似的な懐かしさを生成できるのかもしれないですね。失われてはじめて気づく優しさがあるように、一旦あえて手放すことで逆に大切なものだったかのような気にさせる、脳のバグ。その香水は今も手元にあるから、つけようと思えばいつでもつけられるのだが、あえて封印することにしました。また2020年の秋とかに開封して、疑似的な懐かしさに浸ろうと思います。まあ、そもそも香調がオリエンタル~ウッディ系で、春夏には向かないというのもあるんですけど。ちなみに銘柄はインターネットなんかには書きまてーん。わたしの感覚だと、使ってる香水の銘柄と飲んでる向精神薬の名前は、大事な大事なヒ・ミ・ツなのであまり書きたくないんですよ。だってこんなん、自分の内面を相当さらけ出すようなセンシティブな個人情報じゃん。親しい友達にしか教えてやらん。まあどっちも、カジュアルにネットに書いてる人も沢山いらっしゃるから、感覚は人それぞれですね。なおわたしに関しても、処方薬のほうは、ブログのヘッダー画像を見てもらえれば一つはバレている。

 

 

 

銘柄は書かないが、とってもすてきな香りなんですよ。わたしは香水の知識も、香りを表現する言葉も持たないから、なんにも伝わらないけれど。公式サイトを見ると、トップノート・ミドルノート・ラストノートそれぞれに4つくらい成分が書いてあるのだが、わたしの鼻では嗅ぎ分けることができない。トップノートにミントが香るのはわかる。ミドルノート、このビロードのような重だるさがアンバーだろうか。ラストノートはバニラが強く主張するけれど、その奥にある、木造建築のような手触りはなんだろう。―― 驚きの解像度の低さ。未知の世界のとばぐちにいる時期特有のもどかしさ。感覚は肚の中で暴れまわっているのにそれを伝える術を持たないときの、とろ火で焼かれるような焦燥感。

 

今年こそは、語る言葉をもう少し増やしたい。想いを形に表せないでいるのは、シンプルに健康に悪い。肩と腰と奥歯に響く。留保している感情は年々増えていくばかりで、わたしの足取りを重くする。勉強して言葉を増やしても追いつかない。まだかろうじて若者の範疇に入る年齢ではあるけれど、未処理のタスクを無尽蔵に背負っていられるほど若くはないのだと実感する。

好きになる香水が、なぜか秋冬向けのものが多いので、夏向けで心底愛せるものを見つけたい(ここ数年夏に使っている香水は、画像に写り込んでるやつです。これ自体はいい香りだと思ったから買ったんだけど、わたしの服装にはあんまり合ってないので、心底気に入ってはいない)。これも今年の目標です。見つけてもどうせ語れないんですけど。

昔、語れないままでいる苦しさに耐えかねて、外部情報を遮断していた時期があった。いまは、語れないなりに貪欲であり続けられるくらいには図太くなっている。そういう年齢になったのだ。

 

 

 

 

www.infernalbunny.com