敏感肌ADHDが生活を試みる

For A Better Tomorrow

日記

アナーカフェミニストと暮らす

// 7月末から、友人と暮らしている。 友人がルームシェアを解消したので、空いた部屋に一カ月限定で転がり込むことになったのだ。 友人は高島鈴(たかしまりん)という。 twitter.com 高島鈴とわたしは、インターネット上で編集者とライターとして出会った。…

『生活の批評誌』様に寄稿させていただきました【5/29文フリ東京】

// お知らせです。 「生活」と「批評」を隣り合わせにすることを目指すライフスタイルマガジン『生活の批評誌』さまにお声がけいただき、第5号にエッセイを寄稿させていただきました。 来たる第三十四回文学フリマ東京にて初頒布されますので、お近くの方は…

親愛なる友人たちへのお知らせ。あるいは、性同一性障害じゃないけどホルモン治療を開始した話 #ジェンダークィア #FtX #ノンバイナリー

// 言いたいことは、上記の画像に収まっています。 この画像は、2022年3月にわたしが友人の一人に送ったLINEのスクリーンショットです。3月から4月にかけて、同様のメッセージをテキストで、通話で、あるいは対面して、数人に伝えました。賢明なるわたしの友…

nai_inhexのブログ更新のお知らせ

// 過去記事にて、友人nai_inhexの逝去についてお伝えしました。 www.infernalbunny.com このたび、nai_inhex自身のブログが、百箇日である3月11日に更新されたことをお知らせいたします。書き手はnai_inhexの婚約者の方です。 nai-inhex.hatenablog.com nai…

nai_inhexについて

// まず、今すぐに以下の記事を読んでください。 nai-inhex.hatenablog.com これはわたしが実家から逃げ出し学位取得を目指した7年間の記録です。あらかじめ断っておきますが、格差の是正や高等教育の漸進的無償化といった崇高な目的のために書かれた文章で…

近況:わたしを捕えた福祉と黒い塊について

// 2月ごろから精神状態がよくない、と、ただそれだけのことを書くのにずいぶんと時間がかかった。自分の苦痛がまざまざと生々しく伝わるような、文学的な、修辞的な表現をあらわしたいと、高望みをしているうちに5カ月が過ぎたのである。いまのわたしの脳み…

たかが春の終わり

// ライダースジャケットの季節でしたね(過去形)。 ここ数日で急に暑くなったので、もう過ぎ去ったかもしれませんが。 去年の秋に、ライダースを着られる季節は短いという話をした。季節の変わり目の、ちょこっと肌寒いくらいの寒気にしか対応できないアウ…

猫とおしゃべりする。小さいのと、大きいのと。

// 机に向かっていると、猫が隣で「なにをしているのですか? なぜねこをお腹に乗せてくれないのですか? ねこと一緒にお布団に戻りましょうよ」と話しかけてくる。かまわないでいるとじきに部屋を出てしまうのだが、すぐ出ていくのではなく、ちらちらとこち…

春獅子の爪痕

// 7か月間、同居人との共同生活についてたくさん書いてきた。読んでくれた人はどんな感想を抱くだろうか。楽しそう? 落ち着いている? 丁寧な暮らしっぽい? いずれも文章の感想としては是でも、生活実態の推測としては間違っている。まったくお笑い種だ、…

鬱とソファと、時々ベッド

// 精神状態が悪いときの先生は、眠ることができなくなる。 それは必ずしも、不眠になるということではない。眠気はあったとしても、意思でもって寝る体制に入ることができなくなるようだ―― すなわち、ベッドに横たわるまでのさまざまなプロセス(風呂、着替…

猫の居ぬ間に洗濯(言葉の誤用)

// 先生のお宅には全自動洗濯乾燥機が鎮座しており、普段の洗い物はこれに放り込むだけで乾燥まで完了する。しかし、先生が仕事用にしているトップスだけは、自動乾燥するとシワシワになってしまうので手動で干している。週末に、その週に着用したトップスを…

獣たちの冬時間

// 冬が来ている。家の外にも、内にも。 鬱のときの先生は他人を寄せ付けない。手負いの獣が傷を癒やすように、独りでソファーに丸くなって、押し黙っているか呻吟しているのが常である。そんなとき、もう一匹の獣である猫は、先生がかまってくれないので、…

夢の棲む街で、薔薇色の肉を喰らう

// 前代未聞の量の鶏モモ肉を買ったんですよ。 冷凍したもの 高級肉ではないけれど、日常料理には十分でしょう。色艶よろしく、みずみずしく、脂が乗っている。色はきれいなピンク。山尾悠子『夢の棲む街』に出てくる 〈薔薇色の脚〉の踊り子みたいだと思っ…

今日という日の花を摘め、障害者二人で

// 去る10月31日、ハロウィンでした。 仮装して密集することこそしないものの、まったくの普段通りで過ごすつもりはなかった。なにかしらはしようということで、先生もわたしも暗黙のうちに意見が一致していたように思う。結果、先生はわたしに内緒でマカロ…

近況:孤独について。書けなくなった記事について。

// 幼いころは、人間関係が楽しいものであるという発想がなかったから、友だちが少ないことやいじめや両親の不仲は、わたしの内的世界を乱すストレス要因ではあったがそれ自体を嘆くことはあまりなかったし、一人で本を貪って音楽を聴いて映画を観ているのが…

覚え書き:セルフケアとしての自傷行為について

// 免責事項:この文章は自傷行為を推奨するものではありません。 わたしの生は、他人のためのものとして始まった。平たく言うと「介護要員」ということになるし、もっと広い意味でも、わたしの命はわたしのものではなかった。わたしの命は父母のものであり…

若者じゃないものたちのすべて

// 先生と、花火をしようという話になったのが、7月末のこと。真夏は暑すぎて嫌なので、花火だけシーズン中に買っておいて、涼しくなってからやる作戦を立てた。 10月の初め。日は早々に落ちて、風が少し。夏の余韻はもう去っているが、興を削ぐほど涼しすぎ…

金木犀のハンドクリームに課金して秋を乗り切るのこと

// とある日曜日の午前10時ごろ、とくにきっかけもなくふっつりと糸が切れて、秋晴れの陽光が差し込む部屋で、声もなく横たわっていた。ひとが糸の残機をうしなうのは、冬の明け方だの、雨天の深夜だのといった、いかにもそれらしい時間帯に限るわけではない…

深夜、花蜜を吸いにやってくる、わたしのヴァンパイア

// 秋の夜長、十五夜の前日、満月の前々日に、創作実話をしたためる。 そう、これはあくまでフィクションというテイで読んでいただきたいんですけど、わたしが10代のころ、よくわたしの家に遊びに来ていた人がいたんですね。恋人になりたいというわたしの申…

言葉を葬(おく)る

// 郵便受けの中に、はさみを入れていた。 www.infernalbunny.com 今は、入れていない。 共同生活を始めて、一日一回ポストを確認しに行くのもわたしの役目になった(先生の出勤日は、先生が帰りがけにチェックすることもある)。先生宛とわたし宛に仕分ける…

今・そこにある・抑鬱

// 抑鬱とはなにか。どんな感覚か。人によると思うが、わたしのそれは、骨がばらばらになりそうな激しい疲労感として顕現する。 身体が動かなくなる。手が、足が、わたしの意志の制御下から外れたがる。わたしの身体以外の、もっと適切な場所に収まりたがっ…

23時間45分は忘れている恐怖を思い出したけど、べつにドルチェ&ガッバーナの香水のせいではないです

// 外出先から帰ってきて髪をほどくと、もう揮発したと思っていた香水のラストノートがふわっと香る。この時間が好きだ。ロングヘアになってからは特に、香りが長く滞留するようになった。 香水は、同じ香りでも感じ方が気分や体調によって違う。そのような…

花を捨てる、猫と暮らす

// 書生として、衣食住と小遣いと勉学に集中できる環境を提供していただく代わりに、わたしが先生から委託されているのは、主に片づけ・掃除・洗濯・炊事・ゴミ出し。そして、朝6時半に先生を起こして出勤を手助けすること。および、これらに付随するこまご…

2020年9月の眩暈

// 昔、小さなお客様を接客するバイトをしていたことがある。 保護者に手を引かれてわたしのもとを訪れる幼児たち・児童たちは、あの年ごろ特有の烈しい熱気を放っていて、ちょっと会話するだけでそのエネルギーにあてられて眩暈がした。 幼い子どもは、顔つ…

大きな生き物と小さな生き物はよく似ている

// ペットは飼い主に似るというが、たしかに先生の猫は先生に似ている。どこか超俗した雰囲気をまとっていたり、挙措が静かで不意に出現したりするところがそっくりだ。なお、先生は猫至上の物言いをするので、猫が自分に近づいているのではなく下僕がお猫さ…

それはまるで幻聴のような、わたしにとってだけ意味を成すことばを置いておく

// 元ヤングケアラーだった、らしい。 ヤングケアラー、というアイデンティティを自らに見い出したのは、つい数カ月前のことである。歳上のお友達とお茶をしていて、流れでわたしの過去の話になって、その方の口からこの単語がまろびでたのだ。「そうか、呉…

先生の冷蔵庫いわく「精神状態が良くないようです」

// 初めて先生のお宅にお邪魔したとき、家電の使い方を一つひとつ教えていただいた。先生の家にある家電は、わたしが住んでいたワンルームアパートにあるような簡素なものとは違って、多機能なものばかりだったので、慣れるまでに若干の時間を要した。もちろ…

有っても無くても猫の尻尾、あるいは抜け毛

// 掃除機やクイックルワイパーで床を掃除すると、抜け毛の多さにびっくりする。当然、一人暮らしのときよりも格段に多い。普段は意識していないけれど、わたしたちはこんなにも毛を撒き散らして生きているものなのか。わたしの髪は軟毛で、色は黄色味を帯び…

あの緑には名前があるはずだ。わたしが忘れてしまった美しい名前が

// わたしが以前に一人暮らしをしていた家は、都道府県としては田舎である土地の、都市部寄りの場所にあった。一方で、今棲みついている先生の家は、都道府県としては都会である土地の、郊外寄りの場所にある。つまり、今住んでいる街のほうが、緑が豊かなの…

大きな生き物はソファの上で丸くなり、小さな生き物は大きな生き物の上で丸くなる

// 数カ月前、先生とわたしがお試し同居をしていたころに書いた短い文章を引っ張り出してきました。まだわたしが引っ越していなかったころの話。 同居人の「先生」については、先日の記事をお読みください。 www.infernalbunny.com *** 明け方、地震で起…